第5話 職業の適正

出てきた人は顔が整っていて耳が少し尖った金髪の美女だった。

ファンタジー代表格のエルフだ。

映画に出てくるような耳してる。


「はい、ポーションですか?」


ポーションって・・・あ、薬店への客だからそう聞くか。

ゲームで見たことがある薬の名前を聞いて少し嬉しくなったが、トマスさんから聞いて職業適性を見てもらいに来たことと、ポーションを1本買いたいことを伝える。


一般的に職業の適性はお布施を払うと教会で神父や司祭が見るそうだが、カミュさんには生まれつきそういう能力があるのと村に教会が無いためにカミュさんが見ているそうだ。

適性を見てもお金は取っていなくて、代わりに自分が了承した時にやる、結果に文句はつけないなどの条件がある。

個人的には適性が合っているならお金を払っても見てもらいたいと思う。

もしかしたら適性が変わって文句を付けるようなモンスターペアレントでもいたのだろうか?


職業適性がどのように見えるのか聞いてみたところ、色とイメージが見えるのだが10歳くらいまで何度か変わり、10歳から15歳位で徐々に安定するが、15歳過ぎても変化することが稀にあるとのことだ。

例えば鍛冶職なら鉛色のオーラとハンマーや金床のイメージ、漁師なら水色や青色と魚や船・網、農業なら緑と麦穂や葉っぱのイメージが見えるそうだ。


先にポーションの代価、銀貨3枚を支払ってから適性を見てもらった。


「どんな職業に適性がありますか?」


ワクワクしながら聞いてみた。


「色が・・・色が変化する、オーラが噴き出しているしイメージもハッキリしない。昔3つ以上の適性を持っている人に会った時が似たような感じだったけど・・・う~ん、あなたが知ってる仕事をイメージしてみて」


それじゃと思い、まずは鍛冶師で日本刀を打っているところを想像してみた。


「次、別な仕事!」


次は今までしてきた事務職がデスクワークしているところを想像する。


「次、別な仕事!」


えっと、目の前の薬店、いや仕事だから調剤薬局か。


「次!」


ラーメン屋をイメージ。


「もういいよ。強くイメージした時に変化したけど全部に適性があるよ。多分他にも適性がありそうだから好きなことをやってみて大丈夫だと思う。どうせ成人まで2、3年はあるでしょ?」


「背は小さいですが成人してます。ありがとうございました。」


会う人皆から言われるので苦笑しながら言ってしまった。


「あ、ごめんなさい。適性を聞きに来るくらいだし身長見て12、13歳位だと思ったの。」


「あ、はい。大丈夫です。」


ちなみに、どのように見えたのか聞いてみたところ、最初はグレーでハンマー、次は白と羽ペン、その次は紫で薬瓶、最後は薄い黄色で鍋のイメージだったとのこと。

色はさておき、イメージはなんとなく合ってるように思う。


もしかして俺がイメージするとそれが見えるだけなのでは?と聞いてみたら普通は強く思い込んでもカミュさんから見える色やイメージが変わることは無いそうだ。

カミュさんから疲れたような表情が見られたのでお礼を述べて店を後にしてトマス雑貨店へ戻った。


「どうだった?適性職業はなんだい?」


興味津々にトマスさんから聞かれた。


「えっと、なんか3つ以上の適性があるらしく好きな事してみたらいいって言われました。」


「ほぉ、そいつは面白いな。だったら好きな事をやってみればいい。」


御礼を述べて次は鍛冶屋さんへ向かってみる。

10分も歩かずに鍛冶屋さんへ着いてしまった。

軒下にダーツの的サイズの看板にハンマーと金床の絵がかかれた板が下げられていたのですぐに分かった。


中は狭い、人が3人も入ればすれ違うことさえできなそうなお店だった。

奥の工房は広いのかもしれない。


「こんにちは~」


奥から出てきたのは当番衛兵をしていたピートだった。


「こんにちはって、ルイ君か。何か用?ここでは農具位しか置いてないから武器や防具を買いたいなら町まで行かないと。」


そういわれて店内を見ると武器や防具じゃなく鎌や鍬などの農具が陳列されていることに気づく。


「そうなんですか?あの、少し鍛冶を体験させてもらえないかと思って来たんですが?」


「俺は適性があるから鍛冶屋をしているが、刀鍛冶じゃなく野鍛冶職人だから刀は打てないぞ。それに自分がやってきたことしか教えられないぞ?」


おぉ!ってことは教えてもらえるってことだな。よし!


「体験してみたいのでお願いします!」


了承を得て翌日、朝から教えてもらうことになった。


前世でも経験したことが無いことをこの年になって経験できるって貴重だ。

なんか楽しくなってきた。

授業料として銀貨5枚だったが全然安い。


意気揚々と宿へ戻ったら食堂が開いていた。


さっそく食堂へ行って夕食を注文する。

お酒を飲みたいところだが成人と言われても自分の中で15歳は成人じゃないのでお酒は注文しない。

何しろ見た目が伴っていないからな。

いつか我慢ができなくなったら中身は60歳じゃからのう!とか都合よく考えるんだろう。

うん、ま、いっか。


出てきたのはパン2枚、シチュー?ポタージュ?のような煮込み?セロリのピクルスか。

食べてみたがパンは固い、食感はゴリゴリ?顎が疲れるし、上顎の薄皮がめくれそう。

噛んでると味があって旨いが口の水分が持って行かれる。

シチューはカブかな?他にも何種類か野菜が煮込まれたシチュー状の料理は味は薄いが美味しい。

肉は入ってない。

ピクルスは、うん、普通のセロリの酢漬けだった。

テンションは上がらないが銀貨1枚分は十分に旨かった。

明日の朝は何が食べられるんだろう?少し楽しみだ。


食事を終え、部屋で今日のことを振り返る。

転生を認識してからはあっという間の1日だった。

生活の基盤ができるまで大変だろうけど生きてきた中で今が一番ワクワクしているかも知れないと感じる。

そんな風に考えて眠りについた。

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