第4話 ビスタ村に到着
トマスさんが笑顔で言う
「ビスタ村へようこそ。無事着いて良かったよ」
「ハイ、お陰様で助かりました。色々教えて頂いてありがとうございました」
村の方を見ると街道からの出入り口や村周囲は木の柵で囲まれているのと、出入り口には木槍を持った男が1人立っている。
聞いてみると村の男が持ち回りでやっているとのこと。
当番制の衛兵とは・・・お疲れ様です。
トマスさんが出入り口でラプトル馬車を止めて男へ声をかける。
「ご苦労さんピート。こっちは街道で拾ったルイ君だ。背は小さいが成人だそうだ。果樹亭へ案内するところだ」
「トマスさん、無事帰れて良かったです。お疲れ様でした。冒険者ですか?」
「仕事はこれからのようだ。通らせてもらうぞ」
少しがっかりした表情で声をかけられた。
「ルイ君と言ったか?早く仕事が見つかるといいな。どうぞ通って」
冒険者?いったいどんな仕事なんだろう?
ラプトルといい、世界が違うって感じるなぁ。
それはさておき背が小さいことは強調しないで欲しい。
「まぁ、ルイは少し世間知らずのようだしな。俺は店に居るから知りたいことがあれば聞きに来ればいい。おっと、村の宿屋はそこだ。ここで降りてくれ。」
「ご親切にありがとうございました。まだ聞きたいことがあるのでお店によったら又教えてください。本当にありがとうございました。」
ルイはラプトル馬車から降りて丁寧に礼を述べて頭を下げた。
トマスさんを見送った後に村の宿「果樹亭」まで歩いて建物を見上げる。
2階建てで出入り口は正面中央、窓は1階に2か所、2階に2か所か。
そう言えば前世では顧客とのトラブルを解決する為に図面と建物をよく見たなぁ。
トラブル解決だから良い思い出は無いが、おかげで理論と図面の見方だけはしっかり頭に残ってる。
あ、窓にガラスが無い?もしかしてガラス無いのが標準?
周囲の家もみたらガラス窓ではなく、板を迫り出す窓と鎧戸タイプと両方あるみたいだ。
どちらにせよガラスじゃないと室内が暗いんじゃないかなぁ?
日本の建物といろいろ違っていて興味深い。
体感時間では午後3時頃だろう。
ホテルならチェックインできる時間だよな?と考えて扉を開ける。
入り口から入ると正面にカウンター、左側には食堂っぽいホール、右は壁に扉があるから住居かな?
宿泊は上の階だろう。
「こんにちは~。宿泊をお願いしまーす」
「はーい♪」
元気の良い返事と共に30歳位の女性が住居と思われる方の扉から現れた。
にっこりと笑顔で対応してくれる。
「こんにちは、果樹亭へようこそ、ルミィと申します。宿泊ですね?ウチはお一人様一泊銀貨三枚で食事は別、前払いとなります。連泊の場合は予定より早く引き払っても宿泊料の返金はありませんので注意して下さい。台帳に名前がいりますが代筆しますか?それから・・・お一人様ですか・・・?」
あれ?もしかして最後の一言は子供扱いされてるのか?
「え~っと、7日間でお願いします。一人です。」
女将さんからペンを渡されて、ふと「書けるか?大丈夫か?」と考えて、ユピテル様から全言語理解と言われたことを思い出して台帳に向かってみる。
あ、書けるし理解できる・・・
「大丈夫です。」
移動中にトマスさんから苗字を持っているのは貴族だけと聞いていたので「ルイ」の名前だけを書き込む。
「ルイさんね。よろしくお願いします。部屋は2階奥の右側202番よ。食堂は朝の鐘がなったら開いてるわ。夜の鐘がなってからはお酒も出しています。」
「はい、よろしくお願いします。」
そう伝えて7日分の宿賃、金貨2枚と銀貨1枚を支払ってから聞いてみる。
「あの、この時間でも食事はお願いできますか?」
「ごめんなさい。もうすぐ夜の準備に入る時間で、今は厨房の火を落としてしまっているので出せないわ。夜は少し早めに開けるようにするので食堂が開いてからにしてもらえるかしら。」
「はい、わかりました。あと村のお店がどのあたりか教えてもらえます?」
トマス雑貨店、カミュ薬店、ピートの鍛冶屋を教えてもらった。
村に洋品店が無いので自分で縫うか、既製品、いや、仕立て済みの服を買いたいときは街に足を伸ばすそうだ。
荷物は不思議な巾着に入っていて特にないし、先に部屋を確認して必要な雑貨の調達と情報集めをしようと思う。
この7日間の間に自分のことと、これからのことを考えることにしよう。
部屋に行ってみるとベッドが1つあるだけのシンプルな部屋だった。
窓はやはり木の鎧扉だけでガラスは無い、外から見えたまんまだ。
部屋を後にして教えられたとおりに宿を出て道を左へ折れて少し歩くと2つの店はすぐに見つかった。
トマス雑貨店へ行ってみる。
「トマスさん、こんにちは~」
「おう、ルイか。宿はとれたかい?」
「はい、無事取れました。ところでトマスさん、仕事について教えてもらえませんでしょうか?それから歯ブラシやコップ、手ぬぐいなどを買いたいのですが。」
「歯ブラシなんかはそっちの棚だ。それから仕事を探すならカミュさんに適性を見て貰ったらどうだ?」
改めてこの世界の仕事にどんな仕事があって雰囲気を知りたかったんだが適性を見てもらえると聞いて方針転換する。
「仕事の適性を見てもらえるんですか?」
「あぁ、普通は10歳くらいまでに適性を何度か見てもらって仕事を体験するもんだ。」
10歳位から20歳くらいにかけて職業の適性は変わることもあるそうで、あまり幼いころから適性を見てもらうのはダメらしい。可能性を狭めてしまうのだろう。
となりのカミュ薬店の店主がそういう職業の適性を見ることができるとのことで、購入した商品を受け取り、トマスさんへお礼を述べてカミュ薬店へ向かうことにした。
「こんにちは~、お隣のトマスさんから紹介されて伺いました。」
奥からすぐ人が出てきた。
あ~これは・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。