第3話 転生先にて その2

改めてそんなことを考えていた時、街道の遠くに馬車らしき影が見えた。

やった!とにかく人と会って状況を確認しないと、そう考えて影に向かって行くことにした。

体内時計の感覚で5分ほど影に向かって歩いていると馬車が近づいてきたが、影は馬ではなく・・・小さい恐竜?

映画ジュ○シッ○ワールドで見たような・・・


いや?考えるのは後でいいから止まってもらおう。


「すみませーん!止まってくださーい!お願いしまーす!」


少し小太りの人柄の良さそうな40歳くらいの人だった。


「おう!盗賊じゃねぇな。子供?いったいどうした?」


周囲を確認して緊張気味の視線を向けられたが類は人に会えた嬉しさに笑顔で声をかける。


「あの、ルイという者ですが、町まで乗せて頂けませんでしょうか?乗車賃ならお支払いしますので。」


男は少しほっとしたような表情で答える。


「俺はビスタ村のトマスだ。町から村へ帰るところでな。村までならいいぞ、すぐそこだから金はいい、荷台の空いてるところに乗ればいい。」


類は笑顔で言う。


「トマスさん、ありがとうございます!あの、厚かましいですが荷台じゃなくお隣で話を聞かせてもらいながらでも良いでしょうか?」


「あぁ、いいぞ。早く乗りな。」


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


類が乗り込むとすぐに馬車は走り出した。


「街道はいつ盗賊が出るかわからんから移動は早くすることが基本なんだ。ところでどうしてあそこに居たんだ?」


「はい、えっと、ウチでは成人したら家から出なきゃいけないんですが、その・・・家を出たのは良いですが何をしたら良いかも、土地の右も左もわからなくて困ってました。」


「ワハハハ、丁寧な物言いだから貴族の子供か?って一瞬考えたぞ。成人になったばかりだと15歳か?その割りに随分小っさいな。成人するまで外を知らないっておぼっちゃんだなぁ。村に着くまで知ってることは教えてやるから何でも聞いてくれ。」


身長が低いのは俺のせいじゃないんだけどなと考えつつ、類は深く突っ込まれないことに安心し、説明的セリフをありがとうと思った。


「お恥ずかしい限りです。ご親切にありがとうございます。さっそくですが村まではどれくらいの時間がかかりますか?あと、村に宿屋はありますか?」


「村までは2時間か3時間くらいだ。宿屋もあるぞ。」


え?2時間~3時間って近いのか?時間の感覚も違うんだな。

数分間隔で電車が動いていたことと比較して違いに新鮮な気持ちになりながら、これをきっかけに俺はいくつかを聞き出すことができた。


最初にトマスさんのこと、そして馬車を引いている恐竜のことを聞き、宿屋の料金や食品などの物価について、成人になったらどんな職業についているのが一般的かなど、誰でも知っていそうなことや、貴族のことなどなどを聞いてみた。


トマスさん夫婦は村で雑貨店を営んでいる。

ファンタジー要素満載の恐竜、ラプトルのことも教えてもらった。

ラプトルは恐竜じゃなく魔物だそうだ。

馬より安く買えて餌が少なくて力強い、そして馬よりも早くて持久力がある。

ただし馬に比べて騎乗しても馬車をひかせても揺れが激しくなってしまうので、貴族などは馬より安くて揺れるとわかっているラプトルはほとんど使わないってことだ。

ちなみに成獣になってから躾けるのは効率が悪いということで、幼獣から飼い慣らされ、躾けられて販売されてることが多いそうだ。


他に知り得た情報をざっと整理すると大陸は3つ、小さい島は無数にあるそうだ。

3つの大陸にはそれなりの数の国があり、この国の名前はサンスベルク王国、ビスタ村はトワイス辺境伯の領地とのこと。

トマスさんが言うには他の領地に比べると税金が安く住みやすい土地だそうだ。


職種には近衛騎士や衛兵など、国により近い職業から農業、漁業、商業があり、鍛冶職などの生産職や、希少なところでは治癒師や薬師などがあって他にもたくさんの職業があるそうだ。


一般的に長男が家業を継ぎ、次男以降は食い扶持を求めて衛兵になったりすることが多く、生産職は成人前に弟子入りして職人を目指すことが多いとか。


貴族には、特に威張り散らしている貴族には必要以上に注意を払わないと、いきなり殺されてしまうこともあり得るから相手が貴族とわかったら基本的に逆らわないようにと注意を受けた。

武士の無礼討ちなんかと同じか?いきなり殺されてしまうなんて恐ろしい。

貴族なんて余程の事が無ければ知り合うこともあるまい。

というかそんな危険な人たちには積極的に関わり合いたくない。


時間や週、月、年のカウントは1日が24時間、1週が7日間、1ヵ月は30日、1年は12ヶ月で360日になっている。

地球と似たようなカウントなので覚えやすい。

季節は年中初夏の陽気という感じで雪は降らないそうだ。


識字率は低い。

トマスさんのように村外へ出る人は文字の読み書きや計算、自分を守れる程度の武力を身に付けている。

武力と言っても武器を振り回す程度らしく、人を殺すことより自分を守る武力だ。

村の仕事をしていたり宿屋、お店などを営んでいる人が読み書きや計算をできるそうだ。


ユピテル様から文明は遅れていると聞いていたが・・・

義務教育から高校、大学を卒業した自分としてはこれってどうなんだろう?と感じる。


気になっていたドラゴンについて聞いたところ、本物のドラゴンを見かけることはほとんど無いらしい。

ユピテル様から聞いていた説明だとドラゴンはたくさんいそうに思えたが違っているのかも知れない。


トマスさんから聞いたところでは亜竜なら時々見ることがあるとのこと。

飛竜や三つ首竜などがドラゴンの亜種、いわゆる亜竜と呼ばれる。

亜竜は2年~3年に1回程度で町などに被害を与えることがあって、被害が出ると軍によって討伐がされるそうだ。

訓練された軍であっても討伐にはかなりの被害を出すことになるので亜竜でもなんでもドラゴンが出たと聞こえると町に緊張が走る。


そして三つ首竜は100%討伐対象だが飛竜(ワイバーン)は少し違うそうだ。

飛竜はどこの国でも兵器として飼い慣らして数が多い国ほど武力が高く、国力も高いそうだ。

飛竜乗りはドラゴンライダーと呼ばれていてちょっぴりだけカッコいい呼び方だと思った。


ちなみに亜竜は肉が美味しいと言われてるそうだ。

ただし、三つ首竜は毒を吐いて攻撃してくるので討伐には死を覚悟しないといけなくて、肉を口にすることは一生の内でも滅多にないらしい。

機会があるなら1度は食べてみたいものだ。


ユピテル様は全ての貨幣ではないが貨幣を100枚ずつ持たせてくれた。

村の宿屋だと1泊で銀貨2枚~3枚が普通らしく、手持ちの金でそこそこの期間を借りれることになる。

有って腐るものではないのでありがたく使わせてもらおうと思う。


そんなことを考えていたら村が見えてきた。

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