第2話 転生先にて その1

類の意識がハッキリしてくる。

街道脇の少し開けた草原のようで、周囲を見回しても草原と街道しか見えない。

空は雲もない快晴、手を翳して空を見上げると太陽がまぶしい。


周囲を確認して類は自分の手や腕を見た。

次に両手で頭から顔、肩、腹、足と触れてみる。


「うでっ、ほそっ、肌がすごく若返っているけど自分の顔を確認できないな。あ?声が高くなってる?」


成人って言ってたから20歳?のはずだよな?声が子供の声なんだけど・・・


洋服の縫製は丁寧だけどデザインは簡素な洋服だ。

襟は無く、胸元を紐で調節するタイプの服、ズボンは上着より少し丈夫な生地でできていてポケットは無い。

靴は紐で調節するショートブーツ、そして革のベルトに厚手の布の鞘に入れられたナイフと革の巾着袋が下げられていた。

うん、舞台とか映画で見る村人Aや旅人Aってこんな感じだった気がする。

これ以上は確認のしようが無いからよくわからんな。


先に能力などを確認する事に思考を切り替えた。


そう言えば「魔法を学べ」って言ってたけど想像がつかない。。。

そもそも自分ができる魔法って?

今まで見てきた映画を思い出してマネしてみようか。


思い出せる映画で魔法を使っていたと言えば・・・

世界的に有名なイギリス人作家が書いたファンタジー小説の映画だね。


うろ覚えなんだが「なんとかかんとか、レヴィオーサ」だった気がする。

こんなんで良いのか?誰も見てないし唱えてみるとしよう。


「ほにゃらら ほにゃらら レヴィオーサ!」


しーん・・・・

うん、そうなるよね?なんか恥ずかしい。


誰にも見られちゃいないけど罰ゲーム感しかないな。

予備知識なしで魔法は使えないようだし誰かに教えてもらうしかないか。


ふぅ~っ

深呼吸をしながら次の行動を考える。


そういえばユピテル様が生活に必要なお金を渡してくれると言ってたけど巾着袋に入っているのか?と思って巾着袋を手にして口を広げてみる。


「うおっ!?」


巾着袋の口を広げて驚いた。

巾着袋の口には靄がかかっていて中が見えない。

魔法が使える世界だし不思議道具もあるんだろうと考えて恐る恐る靄に手を入れてみた瞬間、頭の中に

・金貨100

・銀貨100

・銅貨100

・銭貨100

と浮かんできた。


おー!これはすごい!


驚くと同時に、青い猫型ロボットが[てってれ~]という音を鳴らしながら秘密道具を取り出す姿を思いだした。


ユピテル様が「後でわかる」と言っていたのはこれか?すごい物をもらってしまった。

思わず「ユピテル様ありがとう」と自然と口に出た。


金貨1を想像しながらもう1度袋に手を入れたらきちんと1枚の金貨を取り出すことができた。

取出した金貨を反対の手に持ち換えてもう1度手を入れると金貨の枚数が99になっていた。

すげぇな、これ。


取り出した金貨を小袋に戻して次はナイフを取り出す。

巾着袋に手をかけた時にナイフへ顔を映してみることを思い付いたのだ。


ナイフの刃に自分の顔を映して見た。

映っているのは知らない子供の顔だった。

なにこの外国人の子?子供?いったい何歳?20歳じゃなかったのか?これが俺?

髪は金髪ストレート、碧眼、顔の造作は普通というか、洋服屋のチラシのキッズモデルみたいな?一言で言うなら「悪くない」んだけど違和感しかない。


日本人の俺から見ると外国人の年齢はすぐに判別できない。

ユピテル様は成人と言っていたが俺の目で見ても小学生か中学生くらいの気がする。

あ!もしかしてこの世界は成人年齢が違うとか?


こりゃ他人と会って聞き出さないと自分のことさえも判らんな。

とにかく人と会って情報を集めよう。


それにしても・・・

前世の記憶を持っていることが幸せなのかどうかあやしく思える。

何も知らずにこの世界に来た方が最初から「こういうもの」としてすんなり受け入れられそうな気もする。

比較する対象が文明が進んだ世界だからかも知れないが。


まぁ、幸せなんて人によって感じ方が違うし深く考えたら負けだな。


とにかく移動して人と会うことを目標にしよう。

ビジネスじゃないけどアーリースモールサクセスだっけか?一つずつ、本当に一つずつ早いうちに小さい成功を重ねていきたいところだ。

金はあるけど食料や水が無いことが心配だし、ヘタしたら街道をどちらに進むかさえも命がけになるんじゃないか?

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