3話目

///食べ終わった後からスタート


「はい、おそまつさまでした」


(食べ終わったあとの食器を重ねていく音)


「夏に食べるそうめんって美味しいわよね~、どうしてかしら。冷やし中華も夏に食べると美味しいし……」

「暑い日に冷たい物が美味しいのは分かるけど、それだけじゃない気がするわぁ」


「え、あんなにいっぱい食べたのにまだ食べ物の話しをするのかって? ふーん、あなたは私に何か言いたいことでもあるのかなぁ~?」

「言っておきますけどね、別に太ったりはしてないですからね。……昔に比べたら増えてるかもしれませんけども……」


(ぴしゃりと言い放つように)「こーらっ、人の身体をじろじろ見ないの!」

「見たい時はちゃんと許可を取りなさい許可を。じゃないとお金取られても文句言えないし、嫌われちゃうかもしれないでしょ」

「相手が美人局だったら大変よー? ここぞとばかりに毟り取られるんだから」

「――まあ、友達から聞いた話なんだけどね。現実的にそんな怖い人達が田舎にいっぱいいたらビビっちゃうし……」

「とにかく、相手の了承は貰いなさいっていう話しよ。分かりましたか~?」


(お盆に乗せた食器を運ぶヒロインの遠ざかっていく足音)


(少し離れた位置から)「ああ、そういえば夏にピッタリの物を貰っていたわ。ちょっと待ってて」


「えーと、確か冷蔵庫の下に……あ、あったあった」


(近づいてきながら)「じゃーん。ほら見てみて、スイカ~~~」

「大きくて立派でしょう。色つやもいいし」

「ご近所さんからの暑中見舞いなんだって。そういえば子供の頃からよくお裾分けしてもらってたよね」


(どん、とスイカがテーブル上に置かれる音)


(主人公の真横に座るヒロイン。とても距離が近いイメージ)

「さーて、この丸ごとスイカをどうやって食べるかだけど……」

「どうする? 割っちゃう?割っちゃう? 今なら誰もいないから庭でスイカ割りをしても誰にも怒られないわよ?」


「え~~? ノリの悪い返事ねぇ。子供の頃だったら真っ先に飛びついてくるような提案じゃない」

「ん? とびついてたのは私の方ですって? (白々しく)……ドウダッタカシラ~オボエテナイワー」

「そういえば種の飛ばしあいっこをしたわね~。おねーさんの方がよく飛ばせたから、あなたにはいつも負けなしだったわ」

「懐かしいわー」


「……なーにーその顔は。ええ? やっぱり覚えてるじゃないかって??」


(主人公に更に近づくヒロイン)

「……存在しない記憶は忘れなさい。はい、忘れろー忘れろー、ワスレタマエー忘却シタマエー」

「はい、わーすれた♪」


(身体を離すヒロインの声が少し遠くなる)

「まあまあ冗談はこのぐらいにして。後で叔父さん達に恨まれないよう、綺麗に切り分けておきましょうか」


(ドラえもんみたいなイントネーションで)「じゃーん☆ スイカ切り包丁~~~~」

「この包丁を振るえばあーら不思議。どんなスイカも綺麗に見栄えよく、美味しく頂けるようになりまーす」

「さー、いくわよぉ~。ええい!」


(勢いよく振り下ろされる包丁の風切り音→スイカに包丁がぶつかる音がする)


「んっ! ……ん~~~~(力を徐々にこめている)、よーいしょっと!」


(パッカーンと竹を割ったような、スイカを真っ二つにした時のイメージ音)


「わぁ~、中も良い赤色! 甘くて食べ甲斐がありそうだわ」


(パッカーン音)

(パッカーン音)


「……立派なのはいいけど、やっぱり力が必要ねコレ。ちょっと腕がだるくなってきちゃった……」

「ねえねえ、すこーしお手伝いしてもらってもいい?」


(主人公がOKした体で進む)

「うん。それじゃあはい包丁♪ 指を切らないように気を付けてね」

「大丈夫大丈夫、どんな形であれば包丁で切りつけて、あとは力を入れればパッカーンっていくからね♪」


(包丁を振り下ろす音)

(パッカーンと割れる音。ヒロインがやった時より小気味いい)


「上手上手♪」

「さ、その調子でどんどんいきましょー」


(パッカーン音)

(パッカーン音)


「はい、ストップ。これだけ切り分けられれば十分よ」

「こっちのちっちゃいのは猫ちゃんの分ね。はい、よかったらどーぞ」


(猫の鳴き声)『にゃ~~~ん』


「ふふっ、食べてる食べてる」

「私達も頂きましょう。あ、そういえばアレを持ってきてなかったわね」


(台所に行って戻ってくるヒロインの足音)


「やっぱりスイカを食べるならコレがないとね。はい、お塩♪」

「無くても困るわけじゃないけど、スイカにお塩は必需品ね~」


「こうしてパッパッとかけて……」

(塩をふってる音)


「食べてみると~~~」

(スイカを食べるシャクシャク音)


「うん、甘くて美味しい~~~♪♪」

「ささっ、遠慮しないで食べて食べて」


(主人公が食べてから)「ね、美味しいわよね。いつも貰うこのスイカはそんじょそこらのスイカとは比べ物にならないわ」

「そういえばスイカにお塩って、より甘みを感じるための工夫なのよね。昔は甘い物にしょっぱいものを振りかけるのはどうかと思ったけれど、今じゃすっかり常用しちゃってる」


「え? スイカにかけるものはお塩だけじゃないって?」

「他にもかけるものってあるの……?」


「ええ!? ブラックペッパーやタバスコに柚子胡椒……それにお味噌まで?!」

「ちょっと、いくら私が田舎暮らしだからって騙そうとしたらダメよ」


「ネットにあったから、多分嘘じゃないって?」

「んんー、でもにわかには信じがたいわ。あなたが実際に食べたのなら別だけど」


「どうして? だって、あなたがお姉ちゃんに嘘をつくわけないもの。そうでしょう?」

「でも気になるのは確かね。どうしよう試してみようかしら……柚子胡椒はともかくブラックペッパーやお味噌ならあるだろうし」


「え、止めた方がいい? ちょっと、もーーー。このタイミングで止められたら、ますます気になっちゃうじゃない」

「よーし、後でみんなが集まった時に試してみましょう。よりたくさんの感想も聞けるからね」


「まあ? これでもし大ハズレだったりしたら、ぜーんぶあなたのせいになるけどね♪ その時は覚悟しなさいよ~?♪」

「うそうそ、冗談よ冗談。もしあなたが責められそうになったら助けてあげるわよ」


(小声で)「その代わり、私が責められたら助けて、ね♪」


「スイカ、冷えてて美味しいわね~」


(スイカを食べる、シャクシャク音)


「種をとるのがめんどくさいのはどうしようもないけど」


(シャクシャク音)


「ええ? さすがに子供の時みたいに種をどこまで飛ばせるかなんてしないわよ~」

「そういえば、スイカの種を呑み込んだらお臍から芽が出てくるなんて話もあったわね~」


「ちょっ、ちょっとちょっと! 昔いっぱい種を食べちゃってたくさん芽が出るかもって泣いちゃったよねって……それは私じゃないってば」

「そうよ、それは私じゃないわよ。……多分」


(シャクシャク音)


「はぁ~……夏のスイカはいいわねぇ」


(風鈴の心地よい音が響く)






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