2話目
「よいしょっ、と」
(木のローテーブルの上に、コップや麦茶ポットが乗ったお盆が置かれる音)
(コップに麦茶がつがれる、トクトクトク音。)
テーブルの向かい側から話しかけているイメージ
「はい、おまちどうさま」
(コップの中の氷がカランと鳴る音)
「どう? この家で久しぶりに飲むお手製麦茶のご感想は。うんうん、なんだか懐かしい味がするわよね」
「私も飲む度に『あ、懐かしい~』って感じるの。小さい頃にたくさん飲んだからかしら? どうしてかわからないけど市販の麦茶だとこの味にならないのよ。不思議よね~」
「おかわりが欲しかったら言ってね。いっぱいあるし、足りなくなったら作ればいいんだから」
「え、そんなにいっぱい飲めない? ふふっ、昔は熱中症対策だの外でたくさん遊んで喉が渇いただの理由をつけて、あーんなにお腹がたぽたぽになるぐらいに飲んでたのにね」
「くすくす、冗談よじょ・う・だ・ん♪ 今は満足できる分だけ飲んでね」
「私も喉が渇いちゃったからいただくわ」
(コップに麦茶をつぐトクトク音)
「こくこく……こく、こく……。はぁ~~、麦茶が美味しい~生き返る~」
(コップの中の氷がカランと鳴る音)
「そういえば、ここに来るまで大変だったんじゃない? あなたは遠くの都会から来てるから、住んでる場所と違ってバスも電車も少なかったでしょうし」
「この辺りも少しずつ交通の便を良くしようとしてるみたいだけど……でも、あんまり代わり映えしないわねぇ。(ちょっと嬉しそうに)どこもかしこも昔と変わらない田舎のまま」
「でも、私としては大好きな場所だからあまり変わらないでいて欲しいとも思っちゃうのよね~」
「遠くの山も、広がる畑も、畦道や小川もそのままで。ああでも、不便すぎるのは困っちゃうから大きなスーパーやコンビニがもっと近くに欲しいわ」
「これってわがままかしら?」
「でも、あまり開発が進み過ぎてせっかくの景観や涼しげが無くなるのも……うーん、困っちゃうわね」
おねーさんが立ち上がり、横に移動。より近い真横(右隣)から話しかけているイメージ。
「ね、ね。都会じゃどこも大変な暑さなんでしょう? お友達から聞いたけど、エアコンがないと生きていけないって。ふふっ、大げさだよねぇ」
「え? 大げさじゃなくて本当にそんな感じなの? ……えっと、そんな過酷な環境で都会の人達はどうやって生きているのかしら……」
「ふむふむ、なるほど。とにかくみんな頑張ってどうにかしてるのね」
「えらいわぁ。私だったらすぐにゆでだこになっちゃいそう」
「そういうあなたは大丈夫? まさか頑張りすぎてたりしてないわよね?」
「大丈夫だから心配しないで? それならいいんだけど……」
「あ、暑かったら扇風機やエアコンも自由に使っていいからね。どっちも旧型のオンボロかもだけどまだまだ現役だから!」
「そもそもこのおうちは風通しが良いのもあって、あちこち開放するだけで涼しいから必要ないかもしれないけどね」
(気持ちの良い風が吹く音)
(風鈴の音が涼しげに鳴る)
「ん~、いい風」
「都会だとこういった風が吹く時も少ないのかしら。え? 窓なんて開けていられないし、熱風が吹く? た、大変なのね」
「うん。それじゃあ今日はたーーーっぷり田舎の気持ちいい風を浴びていきなさい」
「麦茶のおかわり、いる?」
(コップの中の氷がカランと鳴る音)
「あ、そうだ。お昼ごはんはまだ食べていないでしょう? おそうめんならすぐに用意できるけど、食べる?」
「ええ、それじゃあ準備するから。少しだけ待っててね」
「何かつまみたければ、テーブルの上にあるお菓子は好きに食べちゃっていいから」
「変に気兼ねせず、好きなだけゆっくりしてね~」
(パタパタと遠ざかっていく足音)
少し離れた位置、襖の向こうにある廊下から顔を出して声をかけているイメージ。
「あ、そうそう」
(ポン、と手を打つ音)
「もしかしたら庭に猫ちゃんが来るかもしれないんだけど、可愛く鳴いたらおねだりの合図だから。そこにある猫用おやつをあげてもらってもいい?」
「すっごく可愛くて人懐っこい子だから、きっとあなたも気にいるわ」
「今はね、あの子ともっと仲良くなるのが目標なの」
「その、ねこすい?? っていうのがやってみたくて……。猫を飼ってる友達が教えてくれたんだけど、すっごいイイらしいの」
「まだ、そこまで心を開いてもらってないけどね」
「……でも、これであなたの方が先にねこすい出来ちゃったらどうしましょう。私、いっぱい嫉妬しちゃうかも」
「なんてね。それじゃあお昼ごはん用意してくるわね♪」
(今度こそ台所に行くおねーさんの足音)
(明るい鼻歌)「ふんふんふ~ん♪」
(続けてトントントントと、台所から聞こえてくる包丁を使う音)
(入れ替わるように、件の猫が来訪したのを表現するため猫の鳴き声「にゃ~~~ん」)
『ゴロゴロゴロゴロゴロ』(エサを上げる必要もなく、主人公にすり寄りながら喉をゴロゴロ鳴らす猫の音)
(風鈴の涼しげな音が鳴る)
(一旦部屋に戻ってきたおねーさん)「よしっ。あとはお湯が沸くのを待つだけ――)
大きな声で嬉しそうにのイメージ。
「あ、猫ちゃん♪♪」
すぐ傍で声を出しているイメージで。
「ええ!? なんで初対面なのにそんなに懐いてるの???」
「う、うらやましい……私だってまだそこまで甘えてもらえないのに……」
上記のセリフより、もっと近くで声を出しているイメージ。
「お姉ちゃんは不満です! なので……」
(深々とお辞儀をしながら)「どうやったらそんなに好かれるのか、その秘密を教えてください!」
(猫の鳴き声。さらに甘えるようなイメージで)
『ごろごろごろごろ、にゃ~~~~ん』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます