第三章~覆面シンガーソングライター マーキュリー
第三章〜1
「
花も
「男性視点の
早口でぶつぶつつぶやく
わたしと
「詩絵留、家でもずっと語ってるの?」
「朝から晩までね」
創斗くんはため息をつく。
わたしも好きだけど、ここまでの熱量をぶっ続けはちょっと困る……。
「でも、創斗くん、この前知らなかったよね。詩絵留いつからハマってるの?」
レンジャーが二人きりだった時、変なの扱いされたような。
「先週だよ。仲良くなったクラスの子に教えてもらったんだって」
「……最近すぎ」
「下手に器用で頭がいいから、ハマったら一直線なんだよね」
創斗くんは苦笑いした後、ぽつりと言う。
「まあ……、あいつは
創斗くんが普通かというと違う気もするけど、彼にもいろいろ思うことはあるようだ。
「
詩絵留がくっついてきた。
「ねぇねぇ、蘭、明日の土曜ひま? Z駅に行かない?」
「Z駅なら問題ないけど、何かあるの?」
「マーキュリーがストリートライブやるって
「え、いいけど――」
わたしは丞を見る。
「おれはサッカーの試合だから行けないんだよ!」
せっかくのデートのお
……ん? デート。
「そ、創斗くんは行くの?」
「
ちょっと残念……いやいやいや! わたしは首を振る。
「じゃ、詩絵留、女子二人で行こっか!」
「うん! 蘭とデート! マーキュリーのライブ! うれしい!」
詩絵留はわたしに抱きついたまま飛び跳ねた。
そんな中、ヒポタンが話しかけてくる。
「あ、ソウト。週末ヒマならちょっと手伝ってほしいことがあるんだケド」
「えー、何なの」
「最近の電脳悪霊の動きについて、ずっと上と調査してるんだけど、手が足りなくて」
そういえば最近キナ臭いって言ってたっけ。
「いいけど、それ絶対、詩絵留のが向いてそうだ……」
創斗くんは、休みが休みじゃなくなりそうだね。かわいそうに。
Z駅。駅から出てすぐのペデストリアンデッキは、あちこちから音楽が聞こえてくる。
市の音楽の発展を
詩絵留との待ち合わせは十二時。フードコートでご
小学五年生としてはかなり気合いの入ったお出かけなのだ。
デッキの時計を見ると、ただいま十一時。散歩しようと思って早めに来た。
「マーキュリーはどのあたりでライブするのかなぁ」
マーキュリーは
遠出だから、お母さんが一日だけ外に
『Z駅に
ついさっきの
辺りを見回した。当たり前だけど、そう簡単に見つかるわけがない。
でも、昔
待ち合わせの時間もまだまだだ! わたしはミーハー心で、デッキを
しかし楽器屋にはもういない。わたしはもう一度ブログを見てみると、更新されている!
『スーパーで食事を買いました』
菓子パンが二つと紙パックのコーヒー牛乳が写っている。大きい半球のパンと、細長い
『これから近くの神社で練習しようと思います』
神社。昔、おじいちゃんおばあちゃんにお祭りに連れて行ってもらったし、行ける。
でも……、
「こんなに細かくリアルな情報を出しちゃいけない。
わたしはブレスレットから詩絵留にメッセージを送った。
『マーキュリー個人情報出しまくって危ないから、会って、注意してくる!』
そう! これは電脳レスキューレンジャーの
そうして、神社の
絶対そうだ!
「ま、マーキュリーさんですよね?」
「あ、はい」
歌で
「と、
「あ、そうなんだ。わざわざありがとうな!」
マーキュリーさんはにっこりと笑った。コワモテの顔がすっかり柔らかくなる。
「マーキュリーさんって、若いんですね。中学生? 高校生?」
すると、首を振る。
「違う。小学五年。十一歳だ」
「同い年? えー!」
おっきい! 中学生の男の人とか、大人の女の人くらいの身長あるんじゃないかな。
マーキュリーさんはにこにこ笑う。
「何か俺、いつも間違えられるんだよな。電車料金も注意されるし」
「ああ、それはしょうがないかもしれないです……」
「あとさ、同い年ならさ、タメ口でいいって」
そこから話を始めたら、結構
電車で三つ目の駅に住んでいるらしい。祖父母と同じだ。T区だって。
SNS《エスエヌエス》やらないのは子供だから。Yomtube《ヨムチューブ》もブログも親が
いつと親が仕事でいない間にライブして、夕方ぐらいにZ駅で落ち合うんだって。
今日はふと思い立って、初めて告知してみたらしい。
「
マーキュリーはキーボードを取り出した。
「せっかく来てくれたし、聴いていってよ。練習だけどさ」
「いいの?」
それから わたしはマーキュリーの歌を何曲かきいた。もちろん全然
わたしもピアノは習っているけど、あんなに
「あー、会いに来て良かった!」
「それは良かったな!」
「でも、わたしが言うのもなんだけど、リアルタイムで細かく
マーキュリーはきょとんとする。
「え? 何で? みんないいねのボタンおしてくれるよ」
「だって、みんなここにたどり着いちゃうよ!」
「えー、でも、来るの俺のファンでしょ?」
「いやいや、悪い人も見るよ! ひと気もないし、変な人に
言っている間に頭にゴンという音が
……個人情報出すのは本当にキケン。
☆☆☆
詩絵留は誰もいない神社の鳥居の前で
ブログはここで最後なのに……いない。
黒い石のブレスレットに声をかける。いとこはヒポタンと電脳世界にいるはずだ。
「創斗どうしよう!」
『……えー、何。蘭さんと遊んでるんでしょ?』
ものすごくやる気のない返事が返ってきた。
「待ち合わせに蘭がいないの! マーキュリー探すって言ってたのに」
『えー、トイレじゃないの?』
「バカ! 蘭にレンジャーの通信も送れないの! このヘンタイ!」
ブレスレットにむけて叫ぶ。
そう言うと、やっと創斗は声を正した。
『え……、通信が届かない場所にいる? ヒポタン! もしかして!』
ごそごそと聞こえてからしばらくすると、
『シエル、蘭のブレスレットを調べてみたケド、確かに通信が
詩絵留は以前ヒポタンから聞いた。電脳レスキューレンジャーが連絡に使っているのは
「蘭に……蘭に何かあったの?」
『その可能性が高いナ。まずは集まるか。駅のロータリーで待ち合わせよう』
電脳世界へはどこからでもいける。しかし、問題は本体である
「分かった! ……でも、私と創斗じゃ何もできなくない?」
創斗も詩絵留も
『あー、
その言葉に、詩絵留は
☆☆☆
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