インターバル〜2
カレーになったことに、わたしと
「そっか。うちの
「もっと細かいだろうけどね」
「なんで『カレーの作り方』じゃなくて『料理:カレー』なの? 材料の数字付けも」
ずっと気になっていたことを聞くと、
「さすが
「あー、なるほど。材料と料理の名前が変数ってやつか」
「材料二が豚肉、材料七をだし汁。材料一を合わせ
創斗くんは頷いた。
「アルゴリズムって使い回せた方がいいんだよ。最初から作るより、コピーしてちょっと書き換える方が楽だもの。そういうのを作るのが――」
「モジュール化」
言いかけていた創斗くんは、詩絵留をにらむ。
「私のお兄ちゃんの言葉だもん。創斗になんかあげない」
「ブラコン」
「いいもん。別に。私、お兄ちゃん大好きだもん。愛してるもん」
「……あっくん、もうアメリカで国際的な彼女できてるかも」
「お兄ちゃん勉強に行ってるからそんなヒマないもん!」
「いやー、案外」
そこで、詩絵留はわたしに抱きついた。
「お兄ちゃんそんなじゃない! ゲスなヘンタイめ! 昨日も私の服勝手に
「
「ちょっと置いてただけでしょ!」
「それよりもさ! 詩絵留、昨日
「なのちゃんが、創斗のものは、なのちゃんに決定権があるから問題ないって言った!」
「あんなクソ姉の言うこと聞くな!」
詩絵留はアッカンベーをしてから、わたしにさらにしがみつく。
「ばーか! そーちゃんなんか蘭にきらわれろ!」
「何でそこで蘭さんなんだよ! あと、そーちゃんって呼ぶな!」
戸惑ってたら、ついに丞が聞いた。
「け、結局さ……、二人の関係って何?」
てっきり付き合っているとか、幼なじみだと思ってたけど、これは違う。
丞の言葉に二人は顔を上げてきょとんとした後、同時に首を
……ん? わたしは詩絵留と創斗くんを見比べる。
創斗くんが眼鏡だったし、気づかなかったけど、長いまつ毛とかぱっちりしたつぶらな目とか、小さめな口とか……そっくり。
「言ってなかった? 私、池田家に
「詩絵留はいとこ」
その二つの情報に、わたしと丞は一緒に叫んだ。
「えー!」
戻ってきたヒポタンは「知らなかったノ?」と言ってたけど、うん、聞いてない。
野外バーベキュー場。ヒポタンは「ちょっと今忙しいんだ! 本気でマズくなったらどうにかするカラ、四人で
「とりあえず、担当分けかな?」
丞は料理係で決定として、残りの三人は
たき火なんて分からないけど、とりあえず、書いてある紙の通りにやってみよう。
新聞紙を一番下に
どんどん減っていく薪を見ながら、わたしは気づいた。
「詩絵留さ、このたき火作りもさ、アルゴリズムにできるよね?」
「そうね。この薪を積むのも、繰り返しの条件は『薪がなくなるまで』で、繰り返す行動は『小さいものから薪を積んでいく』になるもの」
「そっか。アルゴリズムって身近なんだね」
「うん。
詩絵留が
「詩絵留やった!」
「うん。私たちすごい!」
二人でハイタッチしていると、創斗くんが
「
「創斗、料理できるんだ」
「さすがに米をとぐくらいは家でもしてるだろ!」
二人の会話は、きょうだいのような仲の良さかも。わたしはきょうだいはいないし、いとこも年に一、二回会うだけだから、ちょっとうらやましい。
「詩絵留が住む前もよく会ってたの?」
「うん。私たち、
「
ずいぶん似ていると思ったけど、そういうことか。
「じゃあ、似てない部分はそれぞれのお父さんの部分なんだね」
「蘭さんもヘンなこと言わないで……。顔は似ているけど、中身は全くの別人だよ」
「あ、そうだよね。ごめん」
詩絵留はくすりと笑う。
「通った道で全然違うのよね。おじさんもパパも全然違うタイプだし」
「そっかぁ。同じ手順でも、途中の
わたしも、あのとき子ども
何の気なしに思ったことを言っただけだけど、詩絵留はうれしそうに抱きついてきた。
そうしていたら、丞の声が飛んできた。
「おーい! 創斗! 女子二人といちゃついてるな!
「……いちゃついてるのは僕以外だけど」
不満そうに、創斗くんは丞のところへ行った。
そうやってみんなで作った夕ご飯は、ちょっとごはんは
翌朝、わたしたちはM駅に到着した。ちなみにヒポタンは「今ものすごく
「蘭、リアルでも会おうね。今度中間の駅で遊ぼうね」
「うん、そうだね。Z駅なら場所分かるよ」
そのままずっとわたしの手を放さない彼女のリュックを、創斗くんが引っ張った。
「いい
「あはは、実際に会って、創斗くんの見たことない部分が見れて良かったな」
「え、何それ……」
最初はオドオドビクビクしていたよね。……わたしにもおびえて。
「丞の特技も見れて良かったよ」
「おー、また何かやれるといいな」
「じゃあ、また後で」
改札口をくぐり、わたしは大切な仲間たちとまたリアルで会えることを願うのだった。
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