インターバル~強化合宿 カレーの作り方
インターバル〜1
四人に増えた翌日の練習日。ヒポタンはこういった。
「
見せてきたのは市のホームページだ。
「キミたちのあいている土日に、ちょうど市の
首をひねるわたしと
「あー、これM駅の反対側。夏休みたまにプール開放している」
じゃあ遠い。M駅は電車を二回乗り
「
そういうことで、わたしはお母さんにチラシを見せた。
『
「夏休みのイベントでアンケート送ったときに当たったみたい。いってみてもいい?」
うさん
「……一般社団法人エニアック?」
子どもITまつりのときもその名前でブースを出していた。もっともらしいサイトもある。
ヒポタン曰く、全国に
こっそり現実世界で色々社会活動とかをやっていたりもするらしい。
翌日、お母さんは連絡先に確認をした後、「行ってもいい」という
……大人が
その後、無事、他の三人も保護者の許可を取れ、今日はM駅に集合だ。
「
わたしが改札から外に出ると、
三本線のTシャツとハーフパンツ。黒いボストンバッグを持った丞は手を振っていた。
「蘭、迷わなかった? 大丈夫?」
「ありがとー。Z駅は
一つ目の乗り換えは祖父母の家がある路線だ。二つ目の乗り換え駅のZ駅も祖父母と何回も行ったことがある。
「でもさ、蘭って本当にこの世にいたんだな……」
「言いたいことは分かるけどさ、言い方失礼だなー」
学校で会える三人と違って、わたしだけは
「いやさ、あっちで会うよりも、かわいく見えるぞ!」
「……ほめてくれるのは、ありがとう」
「あまり色々な人に言わない方がいいよ。告白されまくっている人なんてめんどうだ」
「俺は女子みんながかわいいのに」
キケンなイケメンだ。
「でもさ、蘭、何で俺が告白されているの知ってるの?」
「
あの後、金子さんは丞に告白して、丞は振ったけど、いい友達ではあるらしい。
そこから『ヌケガケ禁止令』もなくなり、女子に人気な丞はよく告白されているとか。
……M小、大人な世界だ。
それにしても創斗くん。他のクラスの話なのによく知っているな。結構ミーハーなんだなと思いながら、ファーストランドで一緒にエリアボスを倒したのは先週だ。
「創斗と一緒にゲームするんだ」
かつて、ヒポタンへのグチとかグチとか、ゲームしながらチャットし合っていた。
実は今回も、メンバーが増えたことによるヒポタンへのグチを言い合う会だったり。
「蘭と創斗って結構仲良いよな」
「えっ、初期メンだからそう見えるだけ! それに、仲がいいのはあの二人でしょ」
わたしは指さす。
深くて近くて仲良くせざるを
ピンクのシャツの男の人が、わたしたちを引率する。
「みんなで
わたしと創斗くんにレンジャーになるためのテストをさせた男、つまりヒポタンだ。
「ヒポタンって本当に人間になれるのね」
「あ、詩絵留は初めてか」
詩絵留はこちらをみてにっこり頷く。
「蘭に会えて本当にうれしい。電脳世界でもかわいいけど、リアルの方が
実はこの
レンジャーになってから、詩絵留には会う度に「かわいい」と言われている。
創斗くんには「あいつ気にいるとベッタベタなんだよね」と言われたけどさ。
「M小って何! 何でわたしを
そして残りのM小生徒はぽつりと言った。
「……僕もかわいいって言った方がいい流れ?」
「べ……別にいい!」
創斗くんに言われるのは……ちょっと恥ずかしすぎるよね……!
それから歩いて十分ちょっと。坂を上ったところに目的地はあった。
S市立青少年研修センター。研修室、屋外プール、バーベキューがある広い
「今日は昼は課題。夜はカレー作りと手持ち花火をするヨ」
「えっ、キャンプファイヤー場あるのにしないのかよ!」
「人数が少なすぎて
電脳精霊というファンタジーな存在は、とてもリアルなことを言った。
荷物を置いた後に研修室にいくと、ヒポタンが準備していた。
「じゃあ、まずはカレーの作り方を勉強しようカ」
「カレーなんて何も見なくても出来るだろ? インドカレーとかでもつくるの?」
「いや、
ヒポタンはノートパソコンのキーボードをたたいた。
プロジェクターに『アルゴリズムを作ろう』という文字が映し出された。
「カレーのアルゴリズムさ。創斗と詩絵留は蘭と丞に教えてネ。目的は交流だからネ」
ヒポタンはカレールーの箱を一つ置く。
そうして「忙しいから、困ったコトがあったら呼んで」と宿泊部屋に行ってしまった。
創斗くんはノートパソコンの前に座って、メモ帳を開いた。
「とりあえずやる? 最初は材料一覧だね」
カレールーの裏に載っている作り方を見て、カタカタとキーボードをたたく。
「材料はとりあえず箱に書いてある七種類かな」
材料一はカレールー、材料二は肉、材料三は玉ねぎ、材料四はじゃがいも、材料五はにんじん、材料六はサラダ油、材料七は水。
「箱に書かれている通りだと、作り方は
詩絵留は頷いて、箱を読み上げる。
「材料六を
言葉のとおりに入力した創斗くんは、わたしと丞を見る。
「じゃあ、材料六を
わたしは
「鍋を
「じゃあ、つまり、材料六がとろとろしている間は油を熱しているということだよね」
創斗君はこんな風に書いた。
(1)作業開始。
(2) 鍋に材料六を入れる
(3)
(4) 鍋に火をかける。
(5) 繰り返し終了
「これで油がとろとろしている間はあたためられる。終了をかかないと、ずっと繰り返しの
「次は、材料二、三、四、五を鍋に入れるなのね。……一度に?」
「色々できるけど、とりあえずそれでいいと思うぜ!」
創斗くんは丞に言われるがまま、箱に書いてある内容を入力した。
「丞、料理が上手なの?」
「あー、うち、三兄弟で量多いから、手伝わないと出来上がらないんだよ」
(6) 鍋に材料二、三、四、五を入れる。
「これで、火にかけた鍋に、温まった材料が入った状態になった。次は炒めるだね」
「でも、焼くと炒めるの違いって何なの?」
箱をにらむ詩絵留に、丞がすぐに答えを言う。
「かき混ぜるってとこかな?」
(7)鍋をかき混ぜる。
「丞と蘭さんは、ここに足りないモノがあるのは分かる?」
「えーと、いつまで混ぜるか分からないね!」
わたしの答えに創斗くんはにっこりする。
「正解。……ちなみにいつまで?」
「玉ねぎがしんなりするまで。つまり、玉ねぎがシャキシャキしている状態だ!」
(8) 繰り返し条件:材料三がシャキシャキの状態。
(9) 鍋を混ぜる。
(10) 繰り返し終了
「次は水。材料七をいれる」
(11) 鍋に材料七をいれる。
「次は十五分煮込む……」
そう書こうとした創斗くんを、丞は止める。
「煮込むだけじゃなくて、アクを取り
「なるほど。だったら、待ち状態じゃない方がいいか。詩絵留ならどうやる?」
「そうね。アクをとる
(12) 繰り返し条件:煮込んだ合計時間(最初は0)が15分間になるまで
(13) 煮込んだ合計時間に1分足す
(14) 分岐条件:鍋にアクがあるかどうか
(15) ある場合→とる
(16) ない場合→とらない
(17) 分岐終了
(18) 繰り返し終了
初めて出てきた言葉を、わたしは指さす。
「創斗くん、この分岐って何?」
「分かれ道。アクがないのにとると、カレーがなくなっちゃうからね」
そうか。そういうことも考えないといけないんだ。
「あとはカレールーいれて混ぜて、十分間煮込むだ!」
「煮込むときは混ぜなくてただ待つだけでいいよね?」
(19)鍋に材料1をいれる
(20)鍋を混ぜる
(21)10分間待つ
「これを全部組み合わせると」
料理:カレー
材料一:カレールー 材料二:肉 材料三:玉ねぎ 材料四:じゃがいも
材料五:にんじん 材料六:サラダ油 材料七:水
(1) 作業開始
(2) 鍋に材料六を入れる
(3) 繰り返し条件:材料六がとろとろの状態
(4) 鍋に火をかける
(5) 繰り返し終了
(6) 鍋に材料二、三、四、五を入れる
(7) 鍋を混ぜる
(8) 繰り返し条件:材料三がシャキシャキの状態
(9) 鍋を混ぜる
(10) 繰り返し終了
(11)鍋に材料七をいれる
(12) 繰り返し条件:煮込んだ合計時間(最初は0)が15分間になるまで
(13) 煮込んだ合計時間に1分足す
(14) 分岐条件:鍋にアクがあるかどうか
(15) ある場合→とる
(16) ない場合→とらない
(17) 分岐終了
(18) 繰り返し終了
(19)鍋に材料1をいれる
(20)鍋を混ぜる
(21)10分間待つ
(21)料理完成
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