第一章〜4
翌日の土曜日。わたしがインターフォンを押すと、
「
「晴ちゃん! 久しぶり!」
髪を下ろして、シンプルな水色のワンピースを着た晴ちゃんは、少しやせていた。
晴ちゃんは
「片付いていなくてごめんね……」
「何を言ってるの?」
これで片付いていなかったら、わたしの部屋はただのゴミためだ。
晴ちゃんは
「あのね……、蘭ちゃん」
「うん、晴ちゃん」
「わたしね……、みんなにひどいこと言って……。でも、自分ではよく覚えていないこともあって……、でも、知らない間にわたし、みんなを傷つけてしまって……」
「大丈夫だよ。晴ちゃん」
立ち上がって、晴ちゃんを抱きしめた。
「わたしは晴ちゃんの味方だから」
こちらにすがりついて、少し彼女は
しばらくすると、晴ちゃんはつぶやいた。
「……あのね、夢の中で蘭ちゃんが助けてくれたの」
「え?」
聞き返すと、慌てたように早口になった。
「ゆ、夢の話なのにごめんね! わたし、蘭ちゃんが、悪いやつをやっつける夢を見て」
ヒポタンからは例に同じく全く聞いていない。
「だから、私、蘭ちゃんに会えば、ちゃんと学校に行ける気がして……ごめんね!」
あわあわとする晴ちゃんに、わたしは笑いかけた。
「うん。
月曜日の朝、わたしは家から反対側の学区を走っていた。
本当はもっと早く家を出るべきだったんだろうだけど、
「おはよ! 晴ちゃん!」
学校から走って五分ぐらいのところで、何とか会うことができた。
水色のランドセルと晴ちゃんの目はゆれている。
「蘭ちゃん……」
「約束したでしょ! いっしょに学校行こう!」
差し出した手を、晴ちゃんは
晴ちゃんは、両親と話をして、自分のアカウントが乗っ取られたというのを理解した。
「よく分かんなくなった時、親に相談してれば良かった……」
勉強の
ネットで見つけた、子ども
お父さんとお母さんも、週七で勉強づけの晴ちゃんに、ほんのスキマ時間の遊びまでガマンさせるようなことをしてごめんと
ため息をつく晴ちゃんの手を、わたしは思いっきり
「
「ありがとう……」
「あと、乗っ取られるのを防ぐには『
昨日の
「ログインするとき、通知がくるんだ。それに
「そういうのがあるんだ……」
「
「うん、お母さんにお願いしてみる!」
そうやって話していたら、学校に着いた。
一人、こちらに手を振っている。
「二人とも、おはよう」
校門で待っていた
今、晴ちゃんが仲良い子を知らなかったので、松本さんに確認してみた。
そしたら、関わりなかった自分が連れて行くのは逆にアリかもと言ってくれたのだ。
「
うそではないので、そういう説明にしている。
「岡崎さんは別クラスだし、教室には私と行こう」
「うん……ありがとう」
「大丈夫。
おとなしくて真面目な
今まで必死でがんばってきたおかげで、晴ちゃんは何とかなりそうだ。
松本さんは声を小さくする。
「……でも、あんなに
知らないアルファベットに首をひねる。
「知らないの? コドモだね」
松本さんは両手を広げる。
「アレの前くらいの時期に、ものすごく体調が悪くなって、
「アレって……ま、毎月のっ?」
わたしはまだ授業で聞いただけだ。
「うん。うちのおねーちゃん
「あ……ありがとう」
思ってもないアドバイスにとまどう晴ちゃん。
「女はホルモンに
お姉さんのウケウリだろうけど、何だかオトナな松本さんを
「芳崎さん! 元気になったんだ!」
三組の何人かの子が話しかけてきた。
うん。大丈夫だ。
わたしは晴ちゃんを後ろからぴょんと押した。
「きゃっ」
「がんばってね。いってらっしゃい晴ちゃん」
わたしは右手の親指を立てて、晴ちゃんに向けた。
「うん……、ありがとう! 蘭ちゃん」
そう言って、晴ちゃんは松本さんやクラスの他の子に囲まれて三組へ向かう。わたしは一つ頷いて一組の教室に向かうのだった。
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