第一章〜3
その空間は、わたし達が
プラネタリウムみたいな黒くて
すぐさま池田くんの声が耳に届く。
『ついた? 大丈夫?
「役割だからね。しょうがないよ」
池田くんは今はここには来ない。
いつもの
わたしじゃないと
電脳レスキューレンジャーとして、それぞれ自分の役目を果たさないといけないのだ。
「二人とも、くっちゃべるナ。
赤黒いもやが立ちこめて、強風が吹き、わたしは思わず目をつぶってしまう。
「ラン、
言われるがまま、
目を開けると、身長くらいの赤い六角形の光が私の前に輝いていた。
……シールドすごい。練習したことはあるけど、効果を実感した。
「じゃあ、池田くん、相手をひるませるための」
「あ、
初めて知った。
「えーと、じゃあ、池」
「それカラこっちの黒は直接攻撃が」
それも初めて知った……わたしはキレた。
「……
「えー、だって技の習得が終わらないしー」
「全体で考えて、予定組みなよ! こういうのは技の前! 計画性なさ過ぎ!」
ハラはたつけど、さすがにここでヒポタンに衝撃波をぶつけるヒマはない。
「池田くん!
『分かった!』
「ヒポタンは
「ハイハーイ。アルファ
なら、ザコ
「うわっ! 空飛ぶゼリー!」
「
今までの強風は
わたしは高く飛び上がる。
さっきまでいた場所に、ベタベタとする何かがまとわりつく。
ヒポタンは言う。
「で、攻撃手段は押しつぶしと、口から出る
「今言わないでよ!」
わたしがとりあえず赤いボタンを押そうとすると、池田くんにさえぎられる。
『待って岡崎さん! スライムの下の部分!』
池田くんは、攻撃が当たらない分、冷静だ。
素直にそちらを見ると。
「え……?」
スライムの中に、見覚えのある黄緑色の
「晴ちゃん!」
体育座りでコントローラーを
その顔は現実世界のものだったけど、見たことのない
「何で!」
「悪霊精霊の
後から追ってきたヒポタンが言う。
「
「わたしが晴ちゃんの家できいたのも?」
「うん」
「どうやったら助けられるの?」
「スライムのコアをクラッシュさせて
示したのは左の真ん中のあたり。そこは何だか
「分かった!」
そのままコアに向かって
「ダメだ! コアが薄ピンクの時に攻撃するとキケンなんだ!」
確かに今は薄ピンクだなと思ったほんの一瞬だけ、水色がちらつく。
「あんなの無理だよ!」
「なーに、相手は電脳悪霊。つまり機械。やりかたによっては大丈夫サ」
ヒポタンが示す。
「てっぺんに解除キーがのってる。その色の順番にコアに衝撃弾を打てばいいのサっ」
「……どうやって?」
「その
そんな機能初めて聞いた。
「あ、
「……スタック? 後が先? どういうこと?」
わたしの困った声に、池田くんがためいきをつく。
『それじゃ分からないよヒポタン……』
「じゃあ、ソウトが説明したまえ」
『……じゃあ、スタックから。岡崎さん。
「一番上?」
『そう。で、それって、何番目においたお皿?』
1、2、3の順番で上に重ねていって、一番上のお皿は何番目かというと。
「三番……あ、なるほど!」
理解できた!
「ありがとう池田くん! つまり、見える色の順番と
『うん。僕が設定するから、岡崎さんは読み上げて』
スライムの出す
「えっと、赤、緑、緑、赤、赤、白、緑、白!」
池田くんも繰り返す。
『白、緑、白、赤、赤、緑、緑、赤! 大丈夫、岡崎さん!」
わたしは赤いボタンを押して、杖を振る。
「えーい!」
三色の
よし、コアが水色だ!
わたしはもう
「いっけー! フリーズフラッシュ!」
光がコアに一直線だ。
「グオオォオオオオ!!」
スライムの
「晴ちゃん!」
わたしは、晴ちゃんを助けるべく、むにゅっとするスライムに飛び込んだ。
動かなくなった彼女の
よし、動かせる!
そうして、光の
光がおさまった頃、わたしは
「大丈夫かな……」
「そんなときのためのソウトさ」
ブワンと音が聞こえ、池田くんが大きなリュックを
「お疲れ様。岡崎さん。後は僕ががんばる」
リュックをおろし、いつものノートパソコンと、小さい四角い箱(ぱっと見、
ヒポタンは池田くんの近くにやってくる。
「じゃあ、やるよ。ソウト」
ヒポタンはぐにゃりと潰れ、床にはいつくばると、背中に穴が開いた。
インターネットをつなぐための
「わたしも手伝う?」
「大丈夫だよ。疲れたでしょ。お友達ももうすぐ戻るし側にいてあげて……」
あっちもずっと働いているような気がするけど、その言葉を受け取ろう。
池田くんの言うとおり、晴ちゃんはすぐに金色の光に
これで元気になるといいな……。
池田くんは箱とノートパソコン、ヒポタンの背中にもケーブルをさす。ちょっとグロい。
「えーと、
池田くんは薄水色のサングラス越しに、画面を見つめている。
「……ヒポタン。アルファ種向けは、三種類あるんだけど」
ヒポタンが首だけキリンみたいに伸ばして画面を見る。
「ああ、今回のケースだと、これだねぇ」
右腕も伸ばす。何だかチューインガムみたいで
「あの……、ディレクトリの中に、さらに五種類あるんだけど……」
「これこれ、これが実行ファイル」
「……へえ」
「そもそもさ、このハードディスク全部は要らないんだよネ。ジャマすぎる」
「ど、どれか聞いてないから全部もってきたんだけど……」
そんな感じでやがて画面が切り替わった。
「おつかれ。ソウト。待ちだ」
池田くんは大きなため息をつき、腕をだらりと下げた。
「ねー、ヒポタン」
わたしはヒポタンに話しかける。
「何だい? ラン」
「あのさ、晴ちゃんのアカウントを乗っ取って、
「ああ、そうさ」
「で、家とかクラスとかで変だったのは電脳悪霊が取り憑いたせいでしょ?」
「そうさ」
「だったら、晴ちゃんは被害者でしょ? 他の人を傷つけたのは悪いけど、このままじゃ学校も
へしゃげたまんまのヒポタンは言う。
「残念ながら、完全には無理だヨ」
「そんな!」
「だってさ、
「……そう、なんだ」
ヒポタンはさらに言う。
「だってランは、パスワードは
わたしはうなずいた。この前のテストでも、わかりやすいものはダメだと答えた。
「インターネットは
公平だから、子供だなんて分からないから、自分で守らないといけない。
……でも。
すると、池田くんが立ち上がった。
「だ、だいじょうぶだよ岡崎さん!」
珍しく大きい声の池田くん。
「で、電脳世界に関係がある部分で、電脳精霊が手を加えたところだけは
あわあわと両手を振る池田くん。
「だ、だからさ! また友達と一緒に遊べばいいよ。リアルでもゲームでも」
……彼はきっとわたしをはげましてくれている。だから、わたしは
「うん、ありがとう、池田くん」
そしてわたしはにやりとする。
「だったらさ、池田くんも遊ぼうよ!」
「え、いやだ。知らない人こわい……」
なんとなく想像ついた答えと表情だった。
「池田くんってさ、ネット向いていないんじゃないの?」
「そ、そんなことないと思うけど……」
「いや、ソウトの
その、
うん。気持ちは一つ。
「ヒポタン」
二人の言葉は見事に合わさった。
「ん? 何だい?」
ヒポタンの
池田くんは言う。
「と……当事者意識を大切に、きちんと準備ってさ……」
このための残り
安全を確認した後、わたしは叫んだ。
「ヒポタンがしっかりやれー! 時間がない時に突然言うな-!」
「ちょ……、ら、ラン!」
池田くんはすごい。
この前ヒポタンが一分後に復活できたちょうど同じ
やっぱり準備って大切だよね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます