第一章~初出動! ゲーム仲間を救え!
第一章〜1
ここは
事務所といっても、プラネタリウムみたいな広くて黒い
わたしの三メートルくらい離れた場所にあるのは、
左手を
「フリーズスマッシュ!」
「はい。ランが
「フリーズスマッ……」
右手から青い光があふれた。
「うわっ!」
わたしが慌てて手を引っ込めると、ヒポタンが静かに言う。
「ソウト、電脳パワーの
「ご、ごめんなさい……」
私の後ろの
その後もヒポタンの
これは、電脳レスキューレンジャーの
動きに併せて電脳パワーの
ヒポタンの言う通り、必殺技を出す練習をしているけど、やっていられない!
わたしはヒポタンに向かって
「もー、
「あ……」
池田くんのつぶやきと同時に、ヒポタンに向かって青い光が飛んでいく。
「うわー!」
青い光の球の中心で、
わたしは後ろを振り返って、右親指をぐっと上げた。
「やったよ池田くん! 初めての
「……う、うん」
つぶらな
「あのさ、岡崎さんの気持ちはものすごく分かる。
「でもさ……、ヒポタンいなくて、僕たちって元の世界に戻れるのかな……?」
そのごもっともな意見に対して、わたしの口はあいたまんまになった。
わ・す・れ・て・た!
電脳世界に
現実世界では、ヒポタンいわく、電脳精霊たちの力で何かいい感じに
親は「読書してた」「ゲームしていた」とは言っていて、その記憶も
でも、ずっと差し支えない行動をとっているわけにはいかないのだ!
「ヒポタン! ヒポタン! 大丈夫?」
丸まっているピンクのカバにわたしは
池田くんはノートパソコンをおいてこちらに寄ってきた。
「お、
「電脳精霊って息するの?」
「……分かんないけど起こそう。ヒポタン!」
「ヒポターンー!」
わたしと池田くんは、とにかくヒポタンを起こすことに専念するのだった。
ヒポタンは一分後には無事起きた。
「まったく最近の若い者ときたら」
わたしは頭を下げた。
「ごめん。ヒポタン。ついイラッとして。どうせ失敗するからいいかなぁって」
まさか、当たるとは思っていなかったよね!
「ランもだけどさ、ソウトもキャンセルしなかったよね?」
「う……、ごめんなさい。何だかいける気がしてつい……」
池田くんって、まともそうでいて、
ヒポタンはパタパタと背中の
「
「じゃあ、早く集めてよ!」
「集めたいんだケドさ。この前、ブースに来たのはキミたちだけだったしナ」
「……ぼ、僕たち、テストで優秀な成績を上げた二人じゃなかったの?」
池田くんがじろりとヒポタンをにらむ。
「もちろん、二人とも合格点さ。初期メンバーに不合格者は起用できないからネ!」
「……つまり、初期じゃなきゃいいと?」
「いやー、こんなに出会えないとなると、
じっとりとした池田くんにヒポタンが慌ててきた。
いい気味とはいえ、何の解決にもならないことをグダグダやっていてもしょうがない。
「まあ、とりあえず
提案したら、その意見は採用され、わたしと池田くんは休憩することにした。
思念体の電脳世界じゃ座ってしゃべることしか出来ないんだけど、心を休ませるの大切。
「疲れたー」
「お、お疲れ様……」
労ってくれる池田くんに、さっきの仕返しでちょっと八つ当たりしたい。
「何だか、池田くんは座っているから楽そうに見える」
「えぇっ、そんなことないよ……」
池田くんはうつむいて首をふる。
「僕、動かないけど、覚えることが多すぎて、家でノートみて打ち込んでるんだ……」
ため息をつく池田くん。
「せっかく
「そっかぁ。変なこといって、ごめん」
自分のことしか考えていないのが
「でも、何を勉強してるの? Idemyって大人用じゃないの?」
Idemy。この前CMで見かけたので、お母さんに教えてもらった。
色々な技術、特に
「子供用もあるんだ。
「え、池田くんBobloxやっているの? わたしもやってる!」
Boblox。ボブロックス。
最近小学生に
一番の
簡単といっても、わたしは作ったことはない。だから、池田くんはすごいと思う。
「どんなゲームつくってるの?」
「え……、あ、アクションゲーム……」
「やらせてよー」
「……い、いやだ。見せたくない」
ちょっと残念だけど、嫌がっていることを無理矢理はダメか。
「じゃあ、ゲーム一緒にやろうよ。今やってる友達いなくて、知り合いとやりたい!」
「い……、いやだ。
「大丈夫だよ! 変な人は
「うぅ、分かったよ……」
そういうことで、二人ともプレイ
そのゲームの名はファーストランド。
ファンタジーなゲームの世界で散歩したり、チャットしたり、友達と組んで敵と戦いにいったりできるアクション
最近はリアルのゲーム友達がいなくて、池田くんが付き合ってくれるのはうれしい。
「これだけで、レンジャーになって良かったかもー」
わたしは待ちきれなくて、約束の一時間前にお古のパソコンの電源を入れた。
戦うのは二人組の方がいいけど、散歩なら一人でもできるしね!
ログインボタンを押したら、次はサーバー(この場合は一緒の空間でゲームするグループみたいな意味かな)の選択画面だ。
眺めていると、見覚えのあるアカウントのアイコンがある。
「やった晴ちゃんだ!」
晴ちゃんこと
最初はとても勉強のできる優等生という印象だった。でも、同じ班で話している内に、ゲーム好きと知り、数少ない(というかただ一人の)ゲーム仲間として仲良くなった。
ファーストランドも一緒に遊んでいたけど、晴ちゃんは今年になってから
だからスキマ時間で遊んでいるときに、ちょっとだけチャットする感じだ。
「まさか、ファーストランド
ゲームしているのは親に
今日時間があるなら、池田くんが来るまで、晴ちゃんとチャットしたい!
そう思って、わたしは晴ちゃんがいるサーバーをクリックした。
ファーストランドにわたしのアバターが降り立つ。
水色の
お
しばらく町を歩いていると、黄緑の鎧が見えてきた。
「いた!」
わたしは晴ちゃんに向けて、チャットを送ることにした。
『sunnyyzちゃん! 今日は時間あるんだね! ここで会えて良かった!』
ゲームの世界は危ないから本名を使っちゃいけない。わたしがチャットで送ったsunnyyzはハルちゃんの名前だ。
ちなみにわたしはcream707。クリームが好きなのと、誕生日が由来だ。
ウキウキしながら話しかけたその返信は予想外のものだった。
『話しかけんな。死ねバカ』
……へ?
『死ね。近づくな。死ねよバカ。まじ死ねよ!』
わたしはそのアバターの名前を確認した。sunnyyzで
その間にも私あてのチャット
ネットで変なこと言う人がいるとは聞いてたけど、会ったことがなかった。
そのまま動けなくなって、パソコンの画面をしばらく見つめる。
すると、画面の右下にメールの受信通知が来た。池田くんだ。
お互い
『あいつ、
言われるがまま、池田くんが教えるリンク先をクリックしたら、青い空間だった。
『ん? ここは何のゲーム?』
『非公開の作り
ブレスレットはくるっと石を回すと、画面が浮かんでスマホみたいにチャットできる。でも、ヒポタンが中身を読む
『
『作り途中だし嫌だ』
『えー、遊ばせてはくれないんだ』
『うん。もちろん』
『もちろんって、ゲーム作る人はやってもらいたくて作るものかと思ってたんだけど』
『いや、僕が作ったゲームより、面白いものはたくさんあるよ。そっちの方がいい』
池田くんは多分親切にしてくれているし、多分優しくしてくれてもいるけど。
『池田くんって、思ったよりもフクザツな性格だよね……』
『え? そう? 僕は自分のことを分かりやすい性格だと思ってたけど』
池田くんの表情を思い浮かべると、何だか気持ちが落ちついた。
だから、親指を立てたスタンプを送り、画面のこっち側でくすりと笑うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます