プロローグ〜2
こつんと
「えっ、何? わたし寝ちゃってた?」
目をこするけど、おかしい。座っていたはずなのに横になっている。
赤い何かは、よくよく見るとタッチペンだった。
……それよりも。
「ここはどこ!」
わたしはタッチペンを掴んでから、がばりと起き上がった。
たった今、わたしがうずくまっていた地面はにぶい銀色だ。
見渡すと黒いドーム状、プラネタリウムみたいな天井だけど、光るのは星じゃない。
大小様々な
「夢の世界?」
アニメのシーンみたいな状況に、頭が追いつかない。
こういうときはリセットが一番。タッチペンをポケットにいれて横になる。
「夢だ。また寝よう。おやす――」
「ようこそ!
二名と言われたけど、
「……後ろにいます」
「ひえっ!」
わたしは思わず立ち上がって
後ろには、
わたしは頭を下げ、そのまま引き続き目線を下げる。
「ご、ごめんなさい!」
このいかにも気弱そうな男子は、背が低い上に
じっと見たせいか、男子の背中は更に丸くなり、表情が分からなくなった。
これは
「電脳レスキューレンジャーテストって、さっきの?」
「そうサ。キミたちはあのブースに来れた、
何だか勝手な
「え! 特別賞って、あのブレスレットじゃなかったの?」
「ぼ、
その問いに天井の声はさらっと答える。
「あれは
「待って待って! レンジャーって何? 電脳世界とか電脳チルドレンって何?」
そんなわたしを
「説明シよう!
わたしは頭を
「……あ、あのう」
「は、話しているの、子ども
言われてみると、あのやたらテンション高い話し方はそのまんまだ。
「あ、あなたもその電脳ヒューマンなんですか?」
突然、天井が一面真っ白に光る。あまりのまぶしさに目をつぶると、声が下りてくる。
「いや、ボクは電脳精霊ヒポタンさ!」
光がおさまったので目を開けると、人じゃない!
マスコットみたいな丸っこいの。大きさはわたしの頭より一回り大きいくらいかな。
「……電脳精霊ヒポタン?」
「そう!」
男子が聞き返すと、カバは人間みたいに
でもさ、分からない単語が増えただけなんだよね。
「あ、あの、全く分からないので……確認していいですか?」
おっ、男子は、思ったより頼りなくないかもしれない。
「つまり、ここはさっきまで僕がいた世界とは別物なんですね? で、この人と僕が電脳チルドレンで、レンジャーに選ばれたから、この電脳世界に連れてこられた」
「そうだヨ! キミは理解が早いネ!」
わたしもそれは分かる。それ以上のことが分かんないから聞いているんだって。
男子は大きく首を振って、またヒポタンに聞く。
「そ、その電脳レスキューレンジャーに何を求めてるんですか?」
その問いに、ヒポタンはさらっと答えた。
「簡単なコトさ。電脳世界を救ってほしいというコト」
そこで、わたしと男子はそろって同じ言葉を言った。
「はあ?」
何というか、本当に何が何だか分からない!
ヒポタンの話はとりとめがなさすぎた。わたしと男子が更にイライラするレベルだったので、ひとまずわたしが要約する。
世界で最初の
答えはエニアックという計算機だ。エニアックは日々人間と共に
エニアックは平和を愛する優しい性格で、自分が人の役に立つことを喜んでいた。
しかし、ある時気がついた。自分は軍事利用を目的として作られたことを。
そして、自身は
電脳世界に住んでいるのはコンピューターの
エネルギー
でも、悪いことをする電脳精霊もいて、それらは
平和を愛する多くの電脳精霊は多すぎる負のパワーに
でも、精霊の身ではできることに限りがある。人の力が必要なのだ。
だから人間で、かつ電脳世界と
それで、S市北部地区で集められたのがわたしとこの男子らしい!
以上、説明を聞いたけど、もちろんわたしも男子も
そんなわたしたちにヒポタンはこう返す。
「電脳チルドレン達ヨ。落ち着きたまえ」
落ち着いていられるわけないんだけど、ヒポタンの言葉には続きがあった。
「もちろん、タダでとは言わないサ。選ばれた
力強い言葉について、わたしは男子に小さい声で伝える。
「今、
彼は
うさんくさいカバはわたしに話しかけてきた。
「まずは、オカザキラン。甘い物は好きだよネ?」
「す、好きだけど! お菓子で引き受けるわけないでしょ!」
失礼な話にわたしが怒ろうとしたとき、ヒポタンは言った。
「スイーツヴィレッジのバイキング」
「そ、そんなもので心が動くわけ……」
「毎月」
わたしは息を
「……毎月スイーツ食べ
「ハハハ。
「カンペキな言い訳……!」
あまりの見事さに、わたしの言葉が続かない中、男子が
「ぼ、僕……、いらないです……」
ぼそぼそ小さい声で
何となく見直していると、ヒポタンがタブレットを見せてきた。
「君の当たりはこれなんてどうだい? イケダソウト」
「えー!」
イケダくんは今までにないほどの声量を出し、タブレットをつかんだ。
「
「あいでみー、何これ?」
わたしが首を
「オンラインの
「はははっ。
……企業?
「え、電脳精霊って会社で働いているの?」
「ブースに
……あっやしー。
「で、イケダソウト。やるカイ?」
「やります!」
イケダくんは食い気味に主張した。
「よーし、電脳レスキューレンジャーS市北部支部
はぁ? リーダー?
「よろしくおねがいします!
「えー、ちょ、ちょっと待ってよ!」
聞き捨てならないことを言われたので、とにかく二人の言葉を止めた。
「り、リーダーってどういうこと?」
「だって、
「て……適性検査?」
そんなのやった
「書いたデショ? ヒーローになりたいって」
書いた。
「……池田くんはなんて答えたの」
つぶらな瞳をまん丸にして、きょとんとした顔の池田くん。
「え? も、もちろん『いいえ』って……」
わたしはもちろん「はい」だった。
「……それだけ?」
「いやー、まあ、渡したブレスレットで色々
「え、あれそんな効果あるの?」
「適性の計測。レンジャー同士の連絡や
「うわー、便利だな!」
「ぼ……僕、無理やりつけられて、外せなくて
池田くんは青いミサンガだけど、こんなブレスレットにそんな機能があるとは
「あと、現実世界にはもっていけないけど、蘭がもっているタッチペンは
わたしがポケットから取り出すと、
「個々が使いやすいようにしているカラ、ソウトは
「おー」
わたしが感心していると、池田くんは首をひねる。
「あ……あれ? なんでヒーローになりたくないを選択した僕がここに……?」
池田くんは
「主役みたいな人間ばかりじゃ回らナイ。みんな誰かのヒーローになり得るのサ!」
うるさいわ!
「まずは電脳レスキューレンジャーとして
「えー!」
そういうことで、わたしと池田くんは、電脳レスキューレンジャーとして、電脳悪霊と戦うことになったのだった。
そして、これがわたしの信じられない日常の始まりだったのだ。
……やっぱり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます