第2話

「オッ♡ オッ♡ オッ♡ オッ♡ ……フグゥッ♡!?」


 一方その頃。

 急いで帰った結愛もまた、小鳩の余韻が消えない内にせっせと自分を慰めていた。

 赤ちゃんみたいな甘い香り、ちんまりとした小さな体、怯える瞳と震える声、なにもかもがドチャシコだ。


「やっばぁ……。めっちゃシコれた……。じゃなくて!? あたしってばなにやってんの!?」


 散々シコっておいてそれはないと思うのだが。

 それはさておき結愛は戸惑っていた。

 エロい自覚はあるけれど、クラスメイトでシコったのは初めてだ。


「てか別に、あたし小鳩の事好きでもなんでもないんですけど!?」


 理不尽な状況に怒りすら込み上げる。

 事の発端はギャル友とのバカ話だった。

 なんでそんな流れになってしまったのか忘れたが、中間テストで一番成績の悪かった奴が男子に告白する事になってしまった。


 負けたら嫌だなぁと思いつつ、まぁ最下位はないっしょ! とタカをくくっていたらまさかのビリ。

 負けてしまったものはしょうがないのだが、問題は誰に告白するかだ。

 全く誰も思いつかない。

 どいつもこいつも学校の男子ときたらこれっぽっちもタイプではないのだ。


 読者諸君は罰ゲームの告白なんだから誰でもいいだろうと思うかもしれないが、結愛はそんな風には考えなかった。

 罰ゲームでも告白は告白だ。

 告白したからにはちゃんと付き合わなければいけない。

 それで上手くいかなければ別れて終わりだ。

 結愛も他のギャル友もそういうつもりでやっていた。

 そうでなければ嘘告になってしまうし罰ゲームとしての面白みにも欠ける。


 勿論断られたらその時点で不成立だから楽である。

 それならば絶対にNOと言いそうな堅物を選べばよさそうなものだが、ギャル的に断られるのは不名誉だ。普通に恥ずかしい。だからダメ。

 そもそも振られる前提で告白するなんて女らしくない。

 付き合うつもりで告白するのだから、それなりにタイプの相手を選びたい所だ。

 それがいないから結愛は困ってしまった。

 そしたらみんなが言うのである。


「結愛ちゃんショタコンだし、小鳩君とかいいんじゃない?」

「はぁ!? しょしょしょしょしょ、ショタコンじゃないし!?」


 嘘である。

 結愛は重度のショタコンだった。

 登下校では道行く小学生で目を保養し、いまだにクリスマスになるとサンタさんにショタ可愛い弟をお願いする程である。


 男の子が沢山出て来る男児向けのアニメなんか大好物で、みんなに内緒で橋の下に捨てられていたショタを拾って溺愛するエロ小説を書いて暗い欲望を発散している。ちなみにカクヨムに投稿したら一瞬で警告を食らった。小学生のおにんにんを剥き剥きしたのがダメだったのだろう。当然だバカ!


 結愛もちょっとアレかなと思っているので周りには隠した気になっているが、ギャル友にはバレバレだった。ちなみに内心ではショタは一般性癖だから!? と憤っている。


「いやショタコンだろ。いい加減認めろって」

「違うってば! てか! 仮にあたしがショタコンだとしてさ! 小鳩は高校生じゃん! ショタとは認められないから!」

「高一はショタじゃない? 去年まで中学生だったんだし」

「違うでしょ! 40歳のオッサンが高校生に手だしたらロリコンだけど、高校生同士でロリコンとは言わないじゃん! それと一緒!」

「めっちゃ語るじゃん」

「こ、これくらい常識だから!」

「まぁ、ぶっちゃけ結愛ちゃん小学生以下じゃないと萌えないもんね」

「え、マジ? そこまでかよ……」

「ちょ! だから違うってば! あたしは別に手出したりしないし! 遠くから愛でて心の中で犯すだけ!」

「こっわ!」

「お巡りさんここで~す!」

「うぅぅぅぅ! 人の性癖茶化すなし!」

「悪かったって。泣くなよ」

「てゆうかさ~。それなら猶更小鳩君しかいないんじゃない? 見た目完全小学生だし」

「だよな。よかったじゃん結愛。合法ショタだぞ」

「よくない! 合法ショタとか見た目だけの紛い 物だから! あたしはそんなのショタとは認めないし!」

「本当にぃ? 小鳩君ならイタズラしちゃっても警察沙汰にはならないんだよぉ?」

「………………」

「こっわ!」

「いや、だから、違うくて!」

「なんでもいいけどさ。他に候補もいないんでしょ? だったら小鳩で手をうっとけば? それで試してダメだったら別れればいい話だし」

「そうそう! 結愛ちゃんが小学生じゃないと萌えられない真性ホンモノかどうか鑑定するいい機会じゃん!」

「人の事犯罪者みたいに言うなし!?」

「まぁ、限りなくスレスレではあるよな。だははは!」


 という感じで、不本意ながら小鳩に告る事になってしまった。

 まぁ、確かに見た目は割と好みのショタだけど。

 あくまでそれは見た目の話で、中身は薄汚れた高校生男子だ。

 やっぱりショタは精通前の穢れなき無垢なる小学生に限る!

 それをお姉さんが手取り足取り無知シチュで剥き剥きするのが良いんじゃないか!

 そうとも! ショタコンの名に懸けて、あんな紛い物で萌えたりなんかするものか!

 告白前はそんな風に意気込んでいたのに……。


「実際告ってみたらメッチャショタかったなぁ……」


 思い出しても女が疼く。

 オドオドとした態度、全身から匂い立つ童貞臭、無力な身体、ガチ泣き寸前の情けない童顔……サイコー!


「うぅ……最低。こんなんじゃショタコン失格じゃん……」


 と思いつつ、内心ホッとしている自分もいる。

 だって流石にガチで小学生しか萌えないのはヤバすぎる。

 将来的にもお先真っ暗だ。

 そういう意味では、合法ショタで満足できる程度の性癖で良かった。


「でもなぁ~。別に性癖ってだけで彼氏ってなると違うと言うか……」


 ショタ欲を満たすだけなら文句はないが、付き合うとなると話は別だ。

 勿論結愛はショタコンだから、見た目に関しては文句はない。

 だが内面は?

 話にならない。


 ショタ属性を差し引いても、小鳩には男としての魅力をこれっぽっちも感じない。

 あんなのが彼氏だと周りに知られたらシンプルに恥ずかしい。

 まぁ、まだ付き合ったばかりで彼のなにを知っているわけでもないから、判断するのは早計だろうが。


「とりあえず暫く様子を見るとして……」


 結愛は今一度誰もいるはずのない自室を確認すると、おもむろに制服の胸元を引き寄せた。


「スハ、スハスハスハ、クゥ~ッ! ショタのガキ臭い頭皮の匂い、ヤバすぎだって!」


 目をハートにして震えると、小鳩の匂いが消えない内に第二ラウンドへと突入した。

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