第15話
「晴、服着ないで寝るの?」
「下はジャージ履いてる。シャツ持ってくるの忘れたからこのままでいい」
服を貸そうと探したのだが、晴は目をつぶってしまったので布団をかけた。寝室を去ろうとしたところで、ぐいっと腕を掴まれる。
「なにしてんのあんこ、続きは?」
「――はい?」
「いい子にお布団入れたら、続きをしてくれるんだろ?」
布団の中から伸びてきた晴の手によって、杏子はベッドへ引きずり込まれた。暴れようとしたところで、晴の意地悪な瞳と目が合う。
「言うこと聞かないと泣かすよ」
覆いかぶさるようにして晴がのぞき込んでくる。中学生の時でさえ、同じくらいの身長の晴のほうが力が強くて敵わなかったのに、大人になった彼に抵抗できるはずがない。
「あんなのキスにはいらないからな」
溜息とともに顔を寄せられ、とっさに目をつぶると耳に齧りつかれた。
「――っひゃあ!」
「色気どこに落っことしてきたんだよ?」
「なにするのよ!」
晴は今度耳を舐めて、首筋にキスをすると杏子の上に崩れ落ちて笑い始める。涙を目の端にためて「おかしい」と言いながらくっついてきた。
「あんこの匂い、やっぱ落ち着く……おやすみ」
言うや否や、杏子の鎖骨に顔を乗せたまますやすやと寝息を立て始めてしまった。
「ちょっと、晴!? ねぇってば!」
気付けば脚までがっちりホールドされている。動けないまま、自分の胸元で寝息を立てる幼馴染の顔を見つめた。
「……もう、どうしていつも振り回すのよ」
昔から、振り回されるたびに晴から目が逸らせなくなる。心の中を掻き乱される。そしてそれはきっと、晴の狙い通りに違いない。
独占欲の塊の晴は、杏子の心の中に常に自分がいないと気が済まないらしい。観念してそのまま目をつぶるしかなかった。
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