第12話 愛佳

大型連休が終わり、任務につく珠と海。

愛実も参加して3人でチームを組んでいる。

近接の珠、射撃の海、サポートの愛実というバランスの良いチームだ。

海と愛実は喧嘩をしつつもなんだかんだでうまくやっている。

「この辺りの妖は退治しましたね」

珠が服に着いた汚れをはたく。

「うん、でも油断しないで。なにか来る……!」

コツン、と小石を蹴る音が聞こえた。

「誰!?」

海が指鉄砲を構える。

「……あなた、たち……たす、けて……私……記憶が……ないの……名前は……愛佳まなか……」

フラフラとした足取りでこちらに近付いてくる。

敵意は無い様だ。

足は裸足で真っ黒に汚れていた。

「とりあえずウチに来なよ」

「……うん……」

真っ白な髪に緑の瞳の少女はこくり、と頷く。


天元に戻ってくると彩に少女の説明をする。

「愛佳ちゃんって言うんだ!よろしくね!しばらくウチにいていいよ!その代わり働いてもらうけど!」

「働く……?わかった……」

こくり、と頷く愛佳。

「じゃあこれ、依頼。珠ちゃんと2人で行ってきて!海と愛実は別の任務に行ってもらうよ!」

「えーと、小型の妖退治みたいです。愛佳さん、自分の命を最優先にしてくださいね」

「うん……わかった……」

こくり、と頷く愛佳。


任務に向かうと小鬼形の妖が群れを成していた。

「はぁっ!」

珠は小石を拾うと第3宇宙速度で投げる。

小鬼形の妖はかなり消滅した。

唸り声をあげる妖。

その時、愛佳が前に出る。

「愛佳さん、危ない!」

「邪な存在よ、消え去れ」

そう告げると光に包まれる妖達。

みるみる姿が溶けていく。

「なに……それ……」

珠は唖然として見ていることしか出来なかった。

そんなこんなで任務は完了した。


珠は彩に愛佳の事を伝えると、彩はこう告げた。

「それ、巫女の力かも」

「巫女の力……?」

「うん。詳しくはまだわかってないけど、かなり貴重な存在だよ。これからあの子は狙われると思う。ウチで匿うのも限界があるし、ちょっと考えてみるね。大丈夫、追い出したりはしないから!」

そう言うと彩は部屋に戻って行った。

疲れが溜まった珠は大浴場へと向かう。

「ふぅ〜……やっぱりお風呂は落ち着くなぁ……。」

ポツリと呟く珠。

海はまだ帰ってきていないようだ。

「海さん、大丈夫かなぁ……」

先輩に思いを馳せながらも湯船でくつろぐ珠。

風呂から上がると髪を乾かして身体を拭きパジャマに着替える。

シンプルなピンクのパジャマだ。

廊下を歩いているとふと目に付いたのは庭で黄昏れる愛佳の姿だった。

「愛佳さん?」

「……あ……珠さん……すみません、ボーッとしてました……」

「黄昏れていたけどどうかしたんですか?」

「……私を……追っている組織があるんです……。何とかして欲しくて……」

「相手の攻撃手段とかはわかっているんですか?」

「妖……を……呼び出す……」

なるほど、昨日の小鬼はその組織が呼び出した妖ということか。

そう納得する珠。

「とりあえずご飯食べましょうか。今日の当番は私なので作りますね」

そう言うと珠は厨房に入って料理を始めた。

適当な椅子に座りボーッと様子を見る愛佳。

「……お母さん……みたい……」

「そうですか?普通だと思いますけど……」

そう言っているうちに料理が完成した。

酢豚と野菜炒め、それに白米だ。

「みなさーん!料理出来ましたよー!」

珠がそう声をかけるとクリスティアがこう告げた。

「うんうん、美味しそう!」

「クリスティア、食べ過ぎないでね」

「わかってるわよ、青葉」


皆で夕食を食べ終えると各自部屋に戻る。

愛佳は彩と同じ部屋で寝ているようだ。

「それじゃあ、愛佳さん、おやすみなさい」

「……ん……おやすみ……なさい……」

部屋に着くと珠はベッドにダイブし、そのまま眠りについた。

彼女の夏休みはまだまだ終わらない。

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