第5話 日常
次の日。
珠が目を覚ますと廊下が騒がしかった。
襖を少し開いて覗き見ると、海と藤色の髪をポニーテールでまとめたスーツを着た女性と口論をしていた。
「だからこの作戦で行けばいいでしょ!」
「その作戦だと犠牲者が増えます!絶対ダメです!」
ぎゃいぎゃいと朝から騒がしい。
「どうかしたんですか…?」
「あぁ、珠ちゃんごめん、起こしちゃった?」
「アナタが海の可愛がってる珠ね。私は
珠は手を差し出したが握手には応じて貰えなかった。
海の事が嫌い故だろう。
少し残念な気持ちを残しつつ部屋に戻る珠。
これ以上関わらない方がいいと判断したらしい。
「…騒がしいなぁ」
お気に入りのぬいぐるみを抱きしめながらぽつりと呟く。
寝直そうにも時間が中途半端だった。
仕方が無いので起きて朝食の支度をする。
味噌汁と焼き魚、サラダに白米といった健康的なメニューだ。
家事は当番制になっており、今日は珠の番だった。
本来なら怪我をしているので休むのも可能だが、与えられた仕事をこなしてこそ1人前、という考えらしい。
「皆さん、ご飯が出来ましたよ」
そう声をかけると数人の男女がそれぞれ席に着く。
一番前は長である彩の席だった。
そこから海、亜未、穂村、男性、男性、女性、女性、珠といった席順だ。
「えーっと改めて紹介するね!新しく入った九十九 珠ちゃん!皆仲良くしてあげてね!」
彩が珠を自分の横に立たせそう告げる。
「
黒髪の男性が軽く自己紹介をする。
「
中性的な顔立ちの男性だ。
「
そう微笑む真琴。
「私が最後ですね〜。クリスティア・ルイボスと申します〜。一応帰国子女です〜。」
ほわほわとした雰囲気の女性だ。
全員の自己紹介が終わった後、皆食事をとる。
「珠ちゃん、料理上手いね。将来いいお嫁さんになるよ」
「ですね〜。この焼き魚、いい具合に焼けてますよ〜。」
皆珠の料理に満足してくれたようだ。
「さて、今日の任務だがらクリスティアと青葉は妖退治、海は周囲の索敵、亜未は私と一緒に書類仕事、真琴と神室は屋敷周りの掃除かな。掃除が終わったらクリスティア達と合流して妖退治に向かって」
「了解!」
「了解です〜」
クリスティアと青葉が席を立ち、任務に出る準備を始める。
「クリスティアさんは強化能力の使い手でねら筋力を強化して戦うんだよ。青葉さんは自前の銃に特殊な弾を使うんだ。2人とも強くて頼りになるよ。」
2人が任務に向かうと、海は席を立つ。
「じゃ、アタシも見回り行ってくるね」
「はい、気を付けて。」
「ありがと!」
そう言って海は駆け出して行った。
真琴と神室は早速掃除を始めていた。
広い屋敷なので早めに掃除をしないと間に合わないのだ。
それぞれ6畳の部屋が割り当てられており、当番の人物が掃除を行うのだ。
珠のお気に入りのぬいぐるみはいつも布団に寝かせられている。
少々恥ずかしいがコレがないと眠れないのである。
珠は布団に寝転がり退屈そうにしていた。
怪我が完治してないので、しばらくは任務に出られないのだ。
「暇だなぁ…」
お気に入りのぬいぐるみを抱きしめながらぽつりと呟く。
珠はスマホを弄ると、琴とのプールに行く約束を思い出した。
「いけない、断らないと…」
SNSを開いて『ごめん、しばらく用事があるから遊べない』とダイレクトメッセージを送っておいた。
珠は動画を見たりしていて過ごしていたが、やがて昼食の時間になった。
今日の昼食担当は海だ。
「ただいまー!今からお昼作るね!暑いしそうめんにしよっか!」
そう言って海はそうめんを作り始める。
人数分作り、珠は少食故少し少なめに盛り付けをし、海と亜未、そして彩と共に昼食を摂る。
「そうめん、美味しい…」
「でしょ〜?アタシ料理得意なんだよねぇ」
「の割にはやたらと洋食がおおいけとね!」
「うるさいなぁ、嫌なら食べなきゃいいじゃん!」
「別に嫌とは言ってないわよ。ご馳走様」
そう言って亜未は妖退治に向かっていった。
一方その頃。
クリスティアと青葉は妖退治を始めていた。
「強化術式!腕!」
殴って妖の核を砕く。
「これでも喰っとけ!」
青葉が魔弾を発砲すると妖の核を貫く。
次々現れる妖に苦戦しながらも大方退治出来てきた様だ。
「!青葉さん!後ろ!」
「は?うわっ!」
「大丈夫?」
「あぁ、ありがとう、クリスティア」
「どうって事ないですよ〜。それよりさっさとオオモノやっちゃいましょ〜」
そう、2人は恋人同士なのである。
皆から知られており、知らないのは珠だけだ。
「下手な鉄砲かずうちゃ当たるってな!」
「強化術式!足!」
青葉は魔弾、クリスティアは蹴りで亀の形をした妖の核を砕く。
サラサラと消え去っていく妖に思いを馳せながら、クリスティアがため息をつく。
「疲れましたね〜」
「だな。帰りにクレープ買って行こうぜ」
「いいですね〜!楽しみです〜!」
ワクワクした様子でクレープ屋に寄る2人なのであった。
その日の夜。
珠はSNSをボーっとしながら眺めていた。
組織の事をぼかしつつ琴に伝え、申し訳ない気持ちに襲われる。
「珠ちゃん、ちょっといい?」
そう言って来たのは彩だった。
「彩さん?こんな時間に…」
「怪我の事なんだけど、多分明日辺りには治ってると思うよ。そのギブス、特殊なギブスで傷の回復を早めてくれるの。大丈夫そうなら明日からまた任務行ける?」
「はい!」
こくり、と頷く珠。
やる気に満ちた夜なのであった。
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