第2話 天元

次の日。

「よしっ。準備万端っと。」

宿題や教科書、お気に入りのぬいぐるみ等をトランクに詰め込み準備を終える珠。

10時頃。

ピンポン、とインターホンが鳴る。

「珠、海さんいらっしゃったぞー。」

「はーい」

階段を下り、玄関に向かう珠。

「では、珠をよろしくお願いします」

来未と十六夜が見送りに来てくれた。

「娘さんの命、必ず守ります。」

「よろしくお願いします」

「珠、頑張れよ!」

来未が珠を優しく抱きしめる。

「うん」

少し泣きそうになりながらも頷く。

海は珠を車に乗せる。

「では、失礼します」

「じゃ、お父さん、お母さん、行ってくるね」

「あぁ、気を付けてな!」

「しっかりやれよ」

「うん!」

「じゃ、珠ちゃん行くよ〜」

そう言うと車を走らせる。

あちこち曲がりながら徐々に人気がない場所になっていく。

しばらく車を走らせると、やがて大きな屋敷に着いた。

「着いたよ。ここが祓い屋の本元、【天元てんげん】。珠ちゃんがこれから暮らすところだよ」

「これからリーダーの元に行くけど準備出来てる?」

「はい。」

こくり、と頷く珠。

「長、失礼します」

そう言うと海は襖を開ける。

中には少女が1人。

「いらっしゃっーい!珠ちゃん、歓迎するよ!よろしくね!」

明るい笑みで出迎えてくれた長。

「私は天元てんげんあや!早速ここについて説明するね。珠ちゃんには妖を退治してもらいます。海から聞いたけど、物凄いスピードで石投げたんだって?その力があれば充分ここでやっていけるよ。海は水を操って妖退治してるよ。水圧とかも変えられるの!」

明るい笑みでそう告げる彩。

「要するに妖退治って事ですよね?」

「そういうこと!私は書類仕事に追われてるけどね!」

苦笑いする彩。

「海、珠ちゃんを部屋まで案内してあげて」

「了解です。失礼します。行くよ、珠ちゃん」

部屋を後にすると、6畳程度の広さの部屋に案内される。

「ここが珠ちゃんの部屋だよ。家具とかは一通りあるから自由に使っていいよ。」

「ありがとうございます」

荷物を置くと整理を始める珠。

「あっ、そのぬいぐるみ可愛い〜!くまさん?」

「はい。子供の頃からお気に入りで。…ちょっと幼稚でしたかね」

「そんなことないよ!珠ちゃんの歳なら全然おかしくないよ!それよりお風呂入って来なよ。汗かいてるでしょ?」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。」

「お風呂場はこの部屋から出て左に曲がったところの突き当たりにあるよ。」

「ありがとうございます。ではお風呂お借りします。」

そう言って風呂場に向かう珠。


風呂場に着くと服を脱いでシャワーを浴びる。

頭と身体をよく洗い、湯船に浸かる。

「いいお湯…」

ぽつりと呟く。

大きくため息をついてリラックスする珠。

しばらくすると風呂から出てパジャマに着替える。

明日から仕事が待っている。

期待と不安に胸を膨らませ部屋に戻り、布団を敷いて眠りにつく珠であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る