第12話 すべての始まり

 





地獄。


まさに地獄だった。


まがまがしい悪魔たちが来たのではなく私たちが迷い込んだ。そう思った。地上はそういった惨状になっていた。


「おい、イズ。こいつらお前のお友達か?」


 配管から先に出た僕は上り途中の彼女を引っ張り上げながら尋ねた。


 どうやら僕は嫌味なことを言ったらしく彼女はつかんでいた僕の手を振り払った。


「ここにいるのはただのごみカスども。ただの魔物。こんな奴らと一緒にしないでもらいたい。」


 別に冗談で言った訳ではないんだが、どうやらデリケートなことだったらしい。


「仕方ないだろう? お前の真の姿? というかその少女姿以外知らないんだから。」


 それでもイズは完全には許してくれなかった。


「お前さんも犬や猫と同じだと言われたら腹が立つだろう? 悪魔にとってはそれと一緒なんだよ。」


 あんなグロテスクで二メートルほどある人食いオオカミのみたいのがペットと一緒だって? やっぱり悪魔はすごいな。


数秒の沈黙の後イズから口を開いた。


「でも、二体は悪魔と呼べるだけの存在がいる」


 どこにいるか。そう尋ねる前にイズが九条院家の方を指さした。


「あーあ。死んだ。死んだよあいつら。九条院家、一族皆殺しだ。」


 イズにしてはどうも投げやりでテキトーな感じだった。


 こいつはいいように九条院家の連中に使われていたのになんでそんなに自信があるのか。


 とりあえず、九条院家に向かった。道中、魔物に襲われた住民たちが血まみれで横たわっていた。


一度は助けようとしたが、この近辺だけでも数十体魔物がいた。そっちのほうへ行くのはイズに止められた。


「死にたいのか⁉ お前さんはただの人間なんだぞ? 本来なら魔物なんて俺一人で全て制御出来るけど、闇魔法が制限された今の俺じゃどうなるか分からない。それにどうせあいつらはもう死んでいるさ。」


 イズの簡単に人を見限ることには腹が立ったが、僕を守る一心だったのは分かったのでここは我慢した。


そうして僕らはそれを横目に僕らは目的地に向かった。


 こんなに急いでいるが、間に合うだろうか。民家はほとんどが倒壊して、火の手が回っており。九条院家に近づくと生きた人間の気配を感じない。この地区はもう終わっている。


 そう思っていた。イズも同じ気持ちだったのだろう。だから、九条院家に着いたとき僕らは啞然としてしまった。


「な、なんだよこれ!」


 さっきまで九条院家の壊滅を予測していたイズは僕の前に出て呆然としていた。


「おい、どうゆうことだ⁉」


 僕らは顔を見合わせた。


 目の前には九条院家の連中に拘束されている悪魔がいた。


 その連中の中にいた一際派手な服を着ている男が僕らに声をかけてきた。


「おや? 下山少佐? どうしてここに?」


 にたにた笑いながら僕らのほうに近づいてきた。


「そう警戒しないでくれよ。君たちを追いかける必要はなくなった。悪魔の方からこちらに来てくれたよ」


「それにそこの竹内の娘の超能力を使わずとも悪魔たちを使役できるのだからもうこだわる必要もなくなったよ。全く今までの当主たちはたいして万能でもないその娘の血族の能力にこだわっていたのだか。」


 確かに、いえてる。魔法のランプがあるのに料理を直接要求せずにわざわざ食材を望むようなものだ。


 それにどうやら九条院はこの少女の中身がイズであるとはわかっていないようだ。


「君もここに来るまで見てきただろう? この国は終わった。市民も大勢死んださ。市民だけじゃない。軍人も、役人も政治家も死んだ。つまり、文字通り国が終わったんだ。」


「違うな。私が終わらせたんだ。」


 九条院は長々と自己陶酔しながら話していた。






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