第6話 九条院 修②



彼女から聞かされたこと。それは九条院家の闇であった。九条院家は代々、政権を握っている人物の相談役としての立ち位置で存在している。つまりは財務大臣の裏の顔である。


 彼らが政治的な権力を握り続けられた理由。それはイズの持つ予知能力のおかげであった。そう、イズは先祖から続く予知能力者なのだ。だから彼女は初めて会う僕をはじめから認識していたのだ。


 九条院家にとっても、イズの力は家宝と言ってもいいぐらいのものである。それでも彼女が逃げ出してこれたのは激化していた当主争いがあったからだ。彼女もあれがなかったら逃げ出す機会はなかったと語っていた。


 九条院家はもとより知能の優れた一族であったため、イズの先祖は国益のためにならと身をゆだねたらしい。しかし、今ではただ自分たちの権力のため、経済的利益のためにしか予知の力を使わなくなってしまっているのだ。


 つい最近では不利益が被るとわかっていながら国民に今以上の重課税をして自分たちのホームである財務局の金庫に金を流したらしい。


 限界まで搾り取るために予知能力を使わせたそうだ。


 ファミレスでの彼女の話だけでは戦闘機一つで何万人という人を殺している科学の発展したこの時代に超能力なんて信じられなかったのだ。けれども九条院があのような態度をとったことで自分の中で確信が持てた。


 そして、彼女からこの事実を知らされた後、とりあえず彼の家の破滅させてほしいと、頼まれていたのだ。


 今日は早々とこの場から立ち去ろうと考えていたが、あいつの様子を見るにかなり切羽詰まっているらしい。


 会議の場にはまだほとんどの幹部が残っていたが、彼は僕に話しかけた後すぐに部屋から出て行ってしまった為、何かあるかもしれないと思い後をつけた。


 部屋を出てすぐ右に曲がったところで彼はぼそぼそと独り言を言っていた。


 「やばいぞ。頼るなら彼しかいないと考えたんだが、どこに行ったんだあの小娘。」


 「あいつがいないとこれからわが家は立ち行かなくなる。ただでさえまだ俺に従う気のない連中がいるっていうのに」


 イラつきを見せながら頭を抱えていた。先ほどの余裕があった彼とは大違いだ。


 それに頼るなら僕しかいないってどういうことなんだ? イズの話では予知をした結果の最良の相手として僕を選んだだけで、特に個人的に前から僕のことを知っていたわけではないらしいが。


しばらくの間廊下でうろうろしていたが何かを思い出したかのように軍部本部の玄関口の方へ急いで向かっていった。


 どうやら会議に来るときに家の者に運転を頼んでいたらしく、玄関口に止めってあった車に乗り込んでしまった。


 本音を言えば、彼の家までついていきたいところだが、僕程度の尾行ではすぐに気づかれてしまうだろう。


 イズにもあまり無理をするなと言われていたこともあり、それを言い訳にするようにビビッて会議の場に戻った。


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