第2話 出会い
「朝子さーん! 帰ったよ」
寮に帰り玄関の扉を思いっきり開けた。
「智君!! もうバカ!!」
朝子さんは黒軍服姿の僕に飛びついてきた。
「どうしてあんなにそっけなかったのよ! 今回もまた智君以外帰ってきた子はいないんでしょう⁈」
彼女の心配はもちろんだ。しかし、僕は気にしない。
「どうせ、僕は死なないよ」
「それに、勝たなくてはならないのです。この国際戦争に」
そう言うと、しばらくの間沈黙が流れた。
自分で作った沈黙に耐えられず、急いで靴を脱ぎ自室へと向かった。
自室といっても二つほど年下の別部隊の仲間、陽大(ようた)とルームシェアしている。
実際、僕らなんかは良い方で、十二、三歳の子らは大広間に十人近い人数で過ごしている。
これは朝子さんが管理しているこの寮が小さいからではない。
確かにここは少しボロい。しかし、ここを一人で管理している朝子さんの掃除の手間などを考えて使う部屋を絞っているのだ。
「智也さん。また生きて帰ってきたのかよ」
十七の陽大は僕の生存を残念がる。どうやら今朝の寝起きドッキリにまだ拗ねているらしい。
彼とはまだ出会ってから二週間ほどしか経っていない。なのにこんなセンシティブな冗談を言い合える仲になっている。これは僕らのコミュ力が高いからではない。いつ死ぬかわからない戦争によって人見知りなんてしている暇がないだけだ。
ベッドの上が少し荒れている。普段であれば朝子さんが整えてくれているはずなのだが…
「おい、陽大? なんで俺のベッドの上こんなに荒れているんだ?」
知らない。そう彼は答えた。こいつも今さっき自分の任務から帰ってきたばかりらしく、自分のだけがきれいに整頓されている状況を奇妙に感じていたそうだ。
僕が部屋に入ると入れ替わるように、陽大はパジャマを持って風呂場に向かった。
勲章が無駄についている軍服を椅子に掛けてぐちゃぐちゃに荒れたベッドの上に飛び乗った。
「いたっっ!!!!!!!!!!!!!」
布団の下から声音の高い悲鳴が聞こえてきた。無防備だったのは僕も同じだったためびっくりして床に落ちて悶絶した。
「なんだよ一体っ!!!!」
床に転がったが、びっくりして向かいの陽大のベッドまで逃げた。
自分のベッドの上を見ると、下の大広間にいる子らよりも背の低い少女が黒い長髪をたらし腕を組み立っていた。
「なっ何なんだっ!!! お前は!」
個人的には、知らないおじさんが空き巣にはいり隠れておりバッタリ会うほうがよっぽどリアクションに困らなかっただろう。
だってそうだろう? 普通、自分の部屋に僕の腰あたりの背丈の知らない少女がいることなんてないだろう。なんならこちら側の犯罪を疑われる可能性すらある。
「お前、よくも可愛いこの俺に乗っかってくれたな!!」
お前? 可愛い俺? えっ?? 俺!? なんだなんだ? 陽大の仕返しドッキリなのか? 僕は少女のことは放置したままスピーカーを探した。
「何をしている! 目の前にいるこの俺様だ。」
認めたくない。こんなにも可愛い顔をした少女の一人称が「俺」だなんて、、、、
「で? 誰なんだ君は? 僕も早くお風呂に入りに行きたいから早いところ説明してくれない?」
これまでの人生女の子と関わる機会が少なかったためどうしても少しスカした態度をとってしまった。戦時中だしね。
「なんて奴だ。まあいい。これからお前にはこの国を転覆してもらう。」
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