第39話 その教え、代々続くものにつき危険


「でもルイーズってやっぱりリズリー家の血を引いてるんだな、魔法陣を見ると気持ち悪いくらい目がキラキラする」アイザックが呆れたように言った。


「仕方ないだろう?文献でも見た事がない綺麗な魔法陣だったんだから」


「でもそこまで魔法が好きなのに騎士を目指そうとするなんて珍しいよな。普通は魔法科学専門校に行きそうだけど…」


「まあ、そう思うよな。私も3年前くらいまでそう思ってたんだけど守りに行くって約束した人を守る為にはこっちの方が都合が良かったから。」夏の気配が近づく少し眩しくなった青空を少し眺める。


「それに、私は魔法を考える事は出来るけどそれを良い事に生かす発想は家族に比べて全然無いからこの道に進めて良かったと思ってる」


「そうだったのか…。まあ、あったよな小さい頃に口酸っぱくなるほど言われたやつ。才能を悪い事に使うな、さもなくば…」


「良き魔女達に粛清されてしまうぞ」

「悪き魔女の実験台にされてしまうぞ…って俺のとルイーズの少し違うな。でもなんだかルイーズにはそっちの方が効きそうだ」


「…そうだな、その頃は割と過激に魔法の実験をしていたから母と姉が圧の強い笑顔でこれを言って来た時に震え上がったのを覚えている」私がそう言うと2人は容易に想像がついたのだろう、苦笑した。




その日食堂に行くとスカル派の貴族がリズリー派の平民の食堂に来ていた。いつもの手続きを済ませ2人と合流する前に騒ぎが起こる。


「スカル派の領地に属する癖にリズリー派にもしっぽを振るとはとんだ駄犬だなあ?」


「しかし、入学前に対魔法戦闘に詳しいリズリー派で学ぶ事を許してくださっていたでは無いですか」スカル派の令息が騒ぎ立てている相手はベンだった。持っていた学食をひっくり返されたのであろうベンは酷いありさまだった。


「うるさい。たかが領地に住まわせて貰っている分際で口ごたえするな」更に激昂した令息はベンに殴りかかろうとする。相手は多分辺境伯の御令息、周りにいる候補生達や食堂の従業員では分が悪い。慌てて声を上げて制止する。


「スカル派の貴族が実質リズリー派の場所で何の騒ぎを起こして居るんだろうね?」


「ああ、リズリー公爵家の養子か。何の用だ、己の主を忘れてしまった者に罰を与えているだけだが?」


「養子なんて噂を信じただけで私にそんな態度を取るのか。それにたかが辺境伯家の子供がこの国の筆頭公爵家の子供の友人を害したと。私は彼の実力もスカル派に属している事も認めたうえで一緒にいる」

私がそう言うとスカーレット辺境伯の子息であろう少年は怯えて少し後退り、喘ぐように言い訳をした。


「でも、こいつは平民だろう!?」


「おや、可笑しいな。私はリズリー公爵家の者だ。その発言は王国で有名な私の家の教えを知らないと無学を証明するようなものだが。それにスカル派とリズリー派は軍事省と魔法省の協力体制の関係上、表立った対立はしていなかった筈だが」そこまで言うと私は背後に庇った2人を意識し前を見据えなおした。多分、こう言う時にこそこの権力は存在するのだろう。


「“才能を何に生かすかを重んじよ。それ以外は些細な事だ”王国内では有名な筈だが。それに、この教えが浸透しているリズリー派の平民の多い場所でこの発言をするとは、将来に組織の中枢を担うという立場なのに先が思いやられるな」


私にそこまで言われるとその少年は周りからの批難の雰囲気を感じ取り居心地が悪くなったのだろう。唇を噛み締め去って行った。少し偉いだけのやつに咎められて味方が少ないだけで退散するなんて最初から喧嘩なんて売らなければいいのに。


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