第34話 その噂、思い出と違っていて危険


ロゼッタ嬢の件が下火になった頃、癒術校の女の子のグループが頬を染めながらアイザックに話しかけてくる。

「あの、アイザック様!」


「どうしたの?ご令嬢方。もしかしてこの前お願いしていた事、もう調べてくれたの?」

え、ナニその爽やか。


「ええ、ただここではちょっと」

アイザックはそう言われると私たちに断りを入れて離れた場所に行った。


「アイザックがいつの間にかハーレム作ってる」


ダンスレッスンで癒術専門校へ行った時、アイザックが癒術校女子に囲まれるようになっている事に気がつく。


「何があったんだ?」

私がベンに聞くとベンは苦笑しながら答えた。

「アイザックと仲良くなっておけばルイーズと仲良くなれる可能性があると思った女子をアイザックが墜としていった」


「ナルホド」

何やってんだよあいつ、て言うかその利用の仕方はいつか背後を狙われるやつだろ。


「ベンのところにもそう言う奴来るの?」


「少し前までは来ていたが少し彼女達の圧が強くてな…、避けるようにしていたらアイザックの方に行った」


「そっか」


戻って来て状況を把握したアイザックは微妙な顔をした私を見てニヤリと笑った。

「ありがとう客寄せドラゴン」


「おい待てふざけんな、助かってはいるけど」


ーーー


「それで、アイザックは何を調べてたんだ?」

私が気になって聞くとアイザックはベンの方を見た。ベンは頷くと言う。


「僕の出身地で問題が起きそうで少しアイザックに調べてもらってたんだ。もし大変なことになったら力を借りたい」


「何があったんだ?」


ベンは近くに人がいない事を確認すると少し声を落として言った。


「実はウォード山岳地区が第三王子の直轄領になる可能性が有るんだ。第三王子と言えば王女だと思われていた時から変わらず立場が弱く引っ込み思案な性格だと聞いているからウォード山岳地区なんて治められないだろうと思ったんだ。」


何せ税収はほとんど無くて防衛費ばっかりかかる土地だし。そう自嘲する様に言うと肩を竦める。それを聞いたアイザックも賛同する様に続ける。


「やっぱり孤児院への支援も最低限しかやっていないみたいだ。防衛費の必要性にまで気を回してくれるお方かどうか…」


どうやら第三王子は世間の印象が悪いらしい。

そんな人に見えなかったんだけどな…

どちらかと言えば周りをよく見るしっかりした人の印象で引っ込み思案なのは王妃のいじめや印象操作の所為のように感じた。


でもまだ王妃のいやがらせを跳ね除ける力は無いみたいだ。大丈夫だろうか。


「姉上に頼んでウォード地区を買い取って貰うか」


「「流石にそれはやり過ぎだ」」

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