第33話 その会、いかがわしさMAXにつき危険


「やっぱりアイザックの戦い方強いよな」

訓練中にルイーズがつぶやく。


「ルイーズの剣術は型通り真っ直ぐなだけだろ。馬鹿力だし、ルイーズはそのまんまで良いと思うけど」アイザックが言う。僕もそう思うがルイーズはそれでは満足できないのだろう。


「いや、自分より強い奴が現れた時のためにアイザックのやってる剣術も学んでおきたい」


「相変わらず真面目だよな。お前より力の強い奴なんてそうそういないよ」


ーーー


次の日の昼、食堂へ行くとルイーズは既に食事を終えていた。彼の手元にはもう見慣れてしまった空の毒瓶がある。

「なんだかルイーズを見ていると自分も努力を怠らない方だと思っていたが不安になってくるな」


「ベンも努力しているじゃないか。私は目標がはっきりしているから。」


「目標?」


「守ると約束した人が待ってるんだ、なんてね。じゃあ私はそろそろ図書館に行くとするよ」


そう言ってトレーと空の毒瓶を手馴れた様子で片付けルイーズは颯爽と去っていった。


「なんだかルイーズってベーコンとレタスの会の方々が好きそうなキャラしてるよな〜」彼の背中を見ながらアイザックが言う。


「ベーコンとレタスの会?あるのか分からない都市伝説になってるあの情報機関?」


「あっいや、密かだけどまあハッキリとした趣味の活動機関だからな。情報機関と言うよりは情報捏造機関だ。会員になるには奉納品が必要らしい。」


曰く、人脈と情報を得たいが為に言葉通りベーコンとレタスを携えて行くと「解釈違いですわ」と追い返されたり。

曰く、どこかの高位貴族がいるので王城内のネタが回って来たり。


「やけに詳しいが会員なのか?と言うか趣味?」


「やめてくれ、一緒にされたく無い。…姉貴が会員なんだよ。ある一定の恋物語を愛でる趣味らしい。」


「健全じゃないか。女性が好みそうな趣味だな」


「……。」


「もしかして、お前が時々僕の似顔絵描くのと関係しているか?」


「ああ、とっても。俺の趣味の物と物々交換している。という訳で照れ顔作ってくれ。欲しい物があるんだ。」


「はぁ!?」


「創作☆ライアたん夏限定ブロマイド、SSR火照り顔ライアたんで全コンプなんだ…!おまえの照れ顔ラフ画を姉貴に奉納すればもらえるんだ!!因みに俺は純真無垢さが強調されるからひんぬー派だ!!!」


「ひんぬー?」

「あからさまにしちゃいけないだろ!」

「いやもう充分あからさまだが…」


「いいじゃないか本物は男でこれは想像上の女性なんだから。あのニュースはどれだけの界隈に衝撃を与えたか……」


「おまえいつか不敬罪で捕まるぞ…」


不味いなと思いながら僕は辺りを見渡した。

食堂は暗黙の了解で貴族席と平民席に分かれているが明確な区分はない。こちらに来る貴族は珍しいが何より公爵家の奴が先ほどこちら側の席で食事していた。真面目な彼の事だから次の授業の準備に行っているだろうが…


「…い"た"っ」

思い浮かべていた奴がアイザックの頭を持っていたノートの角で強めに殴る。そしてそのままそれを僕に手渡す。


「るっルイーズ!?」


「頼まれてたノート渡し忘れたから。あとアイザックのその話題、ここでは辞めておけよー」


「あ、ああ。すまなかった。」


ルイーズはやけに爽やかにヒラヒラと手を振ると去っていった。去り際に「ちなみに私はきょぬー派だ、アイザックとは相容れないな」と言い残して。


「は!?!?!?」

「ルイーズもちゃんと男の子だったんだな……」

訳知り顔でうなづくアイザック。反応に困るからやめてくれよ……


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