第27話 その毒、あまりにも日常になり過ぎて危険
給食の肉は余り食べた事のない食感で新鮮味があったが、味付けなど想定していたより食べ慣れているものに近かったので安心した。
学校に通って1週間ほどした時に給食のグレードがあからさまに上がって騒ぎになったがお姉さまに言ってなんとか元に戻してもらった。影響力が怖すぎる。
「ルイーズ、ここの席いいか?」
「ベン!お疲れ。どうぞ座ってくれ。」
昼食の時食堂では平民の席に座るようにしている。中央にある貴族席の方に座ったら下手に気を使われそうだからだ。貴族席まで食事を持って行くのも気が引ける。こちらでは少し避けられるだけで済む。寂しかったが。そんな事を思っていたからベンが話しかけて来たときは嬉しかった。そのまま席に着くと食事を始めたが私の前の空の小瓶が気になるようだった。
「この瓶気になる?」
「ああ。いつも用意しているようだが何の小瓶なんだ?」
「耐毒訓練用の毒だよ。今、私が食べてるものに中身が入ってる」
「貴族って大変なんだな…」
私は昼食を食堂で食べる際も耐毒訓練が出来るように許可をもらっていた。毒を扱う分手続きは面倒だが家の信用があるのだろう、すぐに許可が降りた。持ち込む際と昼食後に数人の教師に確認を取ってもらうようにしている。ベンにこれから貴族を目指す奴が何を言ってるんだと言ったらそこまでヤバい奴になる予定は無いと苦笑ぎみに返されてしまった。
「おっ、ルイーズ鶏揚げ食べてないじゃん、いただきっ」
「あっ!アイザック」
「ゔっ」
ベンに気を取られていた所為でアイザックに唐揚げを取られてしまった。急いでポーションを飲ませ回復魔法をかける。
「アイザックー、復活したかー?」
「ルイーズ、お前、なんて物食ってんだよ。マジであの世が視えたわ」
「耐毒訓練中だ。ヘロヘロトキシン、耐毒訓練では初歩の神経毒だよ。今日の夕飯で新しい神経毒の練習するから復習しておこうと思ったんだ。そもそも人のもん奪うお行儀悪い奴がいると誰も思わないだろ」
「初歩が既に致死毒な件。いやいや成長期男子舐めんなよ、すきあらば奪うだろ。あと回復魔法がとんでもなくできないとそんな力技出来ないからな!?くっそ体力お化けめ毒喰らいの化け物め…!そんなに鍛えてどうすんだよ〜。」
そう言ってアイザックは大袈裟に頭を抱える。必要な事だからやっているに過ぎないんだけどな。でもアイザックは爽やかに面と向かって私を化け物と言ってくるから私は心地よいと思ってしまう。なんだかんだで一緒に居てくれるし。候補生生活が結構楽しいなんて思ってもみなかった。
(家族は守ってくれたけど余り関わらない人にはいつも遠巻きに散々な事を言われてたもんなぁ)
「やってみたら楽しくなっちゃうんだ。しかたないだろ?」
「まさかのドMだった」
「言い方やめてよ」
気を取り直して食事をしていると明確な敵意を持った視線を感じた。そちらを見ると1人の候補生がこちらを睨んでいた。
アイザックがうわあとか言い始める。
「ライズ伯爵令嬢の噂の幼馴染じゃん。もう敵対されてる。」
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