第26話 その距離感、すれ違うほど近過ぎて危険


学校の授業は午前の座学と午後の実技に分かれる。座学では戦術、組織論などを学び、実技では剣術、体術、乗馬を学ぶ。マナーは座学でも実技でも学ぶ事になっているが上流貴族に必要なマナーが元になっているのだろう。社交ダンスも学ぶ事になっている。


3ヶ月後に騎士訓練校、癒術専門校、向かいに魔法科学専門校の合同交流会があり、そこに向けて週5回のマナー座学と週1回の癒術専門校との合同ダンスレッスンがある。


「ライズ伯爵家が長女ロゼッタですわ。3ヶ月よろしくお願いいたしますわ。」


ダンスレッスンのパートナーになったのは勝ち気な雰囲気の可愛らしい少女だった。ライズ伯爵家と言えば担任教師の妹だろうか?


聞いたら案の定肯定された。ダンスレッスンの途中で噂と違ってダンスは案外普通なのですねと言われる。男性パートのダンスまでそんなに優れていたらただの超人である。そこまで無理だ、怪しまれない程度でいい。令嬢には曖昧に笑って誤魔化した。


ロゼッタ嬢は戦闘部隊科の専攻だった。戦闘部隊と言えばお母さまのとある書物が記憶に浮かび上がる。あれか…。癒術専門校において唯一男女比で男の方が多い体力的に厳しい学科だと聞いていたが。


「戦闘部隊科専攻の女子と言えば玉の輿を狙っているか、お支えしたい殿方が騎士か騎士候補生であるかのどちらかと相場が決まっていますわ。お気をつけくださいませ。」


「もしかして先程から令嬢が周りを気にしているのと関係している?」


そう私が聞くとロゼッタ嬢はポッと頬を薔薇色に染めた。


「その、幼馴染が候補生ですの」


それからロゼッタ嬢が隣の領の小爵令息に幼い頃から恋心を募らせている事、領地の側に魔物の生息する山脈がある為必要な事と解ってはいるが心配な事、その令息の隣に居たいが為に戦闘部隊科を専攻している事を聞いた。


「なんだか女友達と話しているみたいですわ」と言われた時は大分ヒヤリとした。私も初めて出来た同性の友達と呼べる存在に浮かれてしまっていたが。ロゼッタ嬢は微妙な反応をした私にすぐに謝ってくれた。


「あ、あのっ、ルイーズ様またお話聴いてくださる…?」授業の終わりにロゼッタ嬢は引き留めるように聞いてきた。相当聴いてくれる人に飢えているのだろう。


「私でよければ勿論。」



「早速ルイーズが女口説いてる」2人と合流すると、アイザックが呆れた様に言う。

「不可抗力のような気もするから余り責めるのはやめてあげないか…?楽しそうに話してはいたが」ベンは苦笑いしている。


「何を話していたんだ?あのご令嬢とても可愛らしく頬を染めていたじゃないか」アイザックが茶化すように聞いてきた。そんなのじゃ無いんだけどなあ。


「普通に恋愛相談を受けていたよ。そんな大層な話はしていない。」


夕食の時お姉さまにライズ伯爵令嬢について話すとお姉さまは苦笑いした。


「我が家の領地とスカル家の領地の間の山脈に近い海岸沿いの領地ね。ライズ伯爵令嬢も小爵令息も2人とも幼い時から会うたびに喧嘩ばかりだから婚約は見合わせていると親が話していたわ。」


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