第24話 その配慮、過剰とは言い切れず危険


休憩の後は校舎の案内だった。

騎士候補生訓練校は食堂・全体の為の講堂・図書館が中央にあり、そこから派閥ごとの学舎が放射状に伸びる。室内訓練場・屋外訓練場・学舎・医務室・寮はクラスごとに分かれていて中央にある食堂は中央が貴族席、中庭を挟んだ円形の外側に平民用の配膳口(これも派閥で区画が分かれている)と席があると教わった。建前上明確な区分はされていないと言いつつあまり無茶なことはしない方がいいと担任のエリオット先生はこっそりつけ足した。


配膳口で提供される食事は3食無償提供で主食と主菜はおかわり自由、との声に平民の候補生が思いの外喜んでいた。因みに派閥貴族の寄付で成り立っている。違うものを食べたい場合は各自調達、外出は正門で外出記録をしてから。

貴族の寮に簡易的な厨房がついていたのはその為だろう。貴族が配膳口を使うのはいけないだろうか?私1人の食事のために家の従事者を連れてくるのはためらわれた。お姉さまに相談して必要なら寄付を増やしてもらおう。


教室に戻り授業のカリキュラムと行事の説明が終わると今日は解散になった。帰り際にアイザックとベンが自主練に誘ってくる。とっても嬉しいがこの3年、日々の行動記録と帰宅時間・屋敷到着時間のこまめな提出は私の名誉の為に大切だと国王に念押しされた。夕方から夜にかけてのこの時間は名誉的に少し危ない。


「誘いは嬉しいけど、すまないが家の事情で通っているんだ。朝は早く来て自主練習するつもり。」


「それは残念。じゃルイーズまた明日な。」

「!、また明日。ベンも」

「ああ。また明日。」


2人にやっぱり大変そうだなと思われた。とっても大変そうな事をしてる自覚はあるけど必要な事なんだよ?でも自主練いいなあ。仕方ないから2人と別れてトボトボと厩舎へ向かった。



「あれだけ嬉しそうな顔されると対抗意識とか無くなっちゃうよなあ」


アイザックはルイーズが去っていく所を見ながら切なそうな、少し困ったような表情を浮かべた。それに気づいたベンは怪訝な表情をする。


「対抗意識?」


ベンの疑問は確かにもっともだ。知恵を映し導く紫の瞳。森に引き篭もる優しき隣人。紫混じりは知恵の祝福。この王都になった土地とリズリー領の土地に元々住まう者にとっては信仰と敬愛の対象であるはずだ。外から来た階級と比べても。

それでもアイザックは苦笑して答える。


「ああ実は噂の次女ちゃんの婚約者候補だったんだよね、俺。だから男に珍しい混じり気の無い紫の瞳のアイツを見ちゃうとさ、ちょっとね」


しかも甘え上手ときた、敵わないよなとアイザックは肩をすくめる。ベンはそれに対して何も言わなかった。

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