第23話 その縮図、そのまま過ぎにつき危険
入学式の新入生代表挨拶は各方面から視線が突き刺さった。私の正体を暴こうとする視線、首席の位置を妬むような視線、他派閥の敵対心、憧憬のような視線等とてもとても居心地が悪い。家族からのお墨付きはもらったが私がちゃんと男のように見えているか不安だ。
挨拶の文言を読み上げながらさり気なく候補生の行列を眺める。
パルム王国には4つの公爵家がありそれに付随するように派閥が分かれる。スカル家、キャンベル家、ノーム家、そしてリズリー家だ。大体の養成校のクラス分けは派閥間のトラブルを避ける為に派閥ごとに分けられる。
日和みしている貴族は大体がリズリー家派閥のクラスに入る。そして才能を見出されたい平民もリズリー家派閥のクラスに入る。寄附金はしっかり出すが派閥間の争いにはあまり口を出さないから居心地は良いらしい。これだけ見ると人数が偏りそうだが別の派閥はしっかりと忠誠心の強い家が人を送り込んできているのとそれぞれの地で代々兵士を纏める役を任されている騎士家系がいる為人数のバランスはとれているようだった。
それぞれの公爵家は分家から派閥のリーダー格となる人物を送り込んで来ている。そこに私が今年入学してしまった。代理戦争待った無しである。
(私の方は何ともないけど、あっちは色々言われるんだろうな)
リズリー家の養子と言う噂が流れている事もあり派閥内でもやっかみがありそうだ。気をつけなければ。
「ーーーーー以上をもちまして新入生代表の挨拶とさせていただきます。」
無事に新入生代表の挨拶を終えて壇上を降りる。
爽やかな春の空気とは裏腹にそれぞれの思惑は蠢きはじめていた。
入学式を終え、クラスの講義室に案内された後の休憩は誰もが遠慮しているのだろう視線は感じるが話しかけて来ないようだった。
あれが養子の…や、あれだけ綺麗な紫の瞳はリズリー家の才を継ぐのだろう…等お決まりの言葉しか聞こえてこなかった。元々家同士で交流がある所は各々のグループに分かれて談笑している。リズリーのクラスにベン・ウォードを見つけて驚く。先代が任されていたのはスカルの領地ではなかったか?
「よっルイーズちゃん見事に話しかけられないね」
「アイザック!助かった、少し諦めかけていた」
アイザックが私に話しかけると皆んな興味が逸れたのか視線が和らいだ。そっとベンが近づいてくる。
「ベン久しぶり!入学おめでとう!」
「ああ、ルイーズもおめでとう。代表挨拶さすがだった。」
「ありがとう。アイザック、ベンとは模擬戦の時に練習相手になってもらっていたんだ。」
2人は軽く自己紹介をすると握手をした。少し首を傾げてアイザックがきく。
「ウォード家ってスカル家に領地の駐屯所を任されてなかった?山岳地帯の」
「よく知っているな。確かに本来ならスカルのクラスに行くべきなのだろうがあの山岳地帯は魔物の巣窟でな、スカルのクラスよりもこちらのクラスに入った方が得られるものが多そうだったから。どうせ、平民の騎士の事などあちらはあまり気にしていないだろう。」
「そうだったのか。」
納得したアイザックは切り替えてこちらを向くととんでもない質問を投げつけてきた。
「そう言えばルイーズ、リズリー公爵家って箱入り娘の次女ちゃんがいるんだろ、実際どうなの?可愛い?全然社交界に出てこないらしいから姿絵すら出回ってなくて。俺の予想だと深窓のご令嬢ってイメージなんだけどなあ」
アイザックの質問にしばし考える。
可愛くは、…無いと思う。いや、隠しているけど気づかれないのが我ながらすごい。と言うか何故そこまでアイザックは知っている。
「いや、どうだろう。野ザルとかドラゴンとか化け物に喩えられていたが…」
「まさかのやんちゃっ娘!それはそれで萌える」
「……。」
気まずくなって視線をそらす。言葉の変換がエグい。アイザックの妄想とはかけ離れていると思うよ。
「こら、アイザック。誰だって近しい人をそんな風に言われたら困るだろう。」
ベンが助け舟を出してくれた。
「えぇ〜。だって気になるだろ、あんなに美男美女の血筋受け継いでいるんなら。ルイーズも妬ましいほどにイケメンだし。」
「は、あはは。そりゃどーも。」
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