第21話 その新生活、楽しそうげにつき危険


「これはこれは首席合格と噂のリズリー殿ではないですか」奴は私に気がつくとわざとらしい挨拶を返す。相変わらずの軽薄っぷりだ。


「そんな大仰な挨拶やめてくれよ。改めてルイーズ・リズリーだ。私の事はルイーズと呼んでくれればいい。敬語も止してくれ。仲良くしてくれると嬉しい。」


「ご丁寧にどーも。アイザック・バトラー、バトラー商会の三男だ。俺の事もアイザックでいいよ。よろしく。」


握手に応じて貰えてほっとする。仲良くなれるかな。それともう奴に何を疑問に思われているかは分かる。


「ところで試験の時ルイスって呼ばれて無かった?」


ほらね。


「試験官が間違えていたらしい」

「そんな事あるんだ…」


それからその場で雑談をしていると視線が突き刺さるのを感じる。リズリー家の養子と噂の私とリズリー家お抱えの商会の三男、コネでも使ったのかと言うような組み合わせに見えるらしく話の端々で酷い中傷を感じた。


「私と一緒にいるからか。すまない…」

私は周りが騒ぐのは慣れているけどアイザックには辛いかもしれないと思い様子を伺えば

「いいよ。他の奴とも仲良くするつもりだけど強い奴と仲良くしたいじゃん。学べる期間なんて3年しか無いんだから。」なんてアイザックはしれっと言う。


「そっか。ありがとう。」


「これから実力で分かってもらうさ。それに、コネがあったら便利だよなーって思っているのは事実だ。改めてよろしく。」アイザックはひそひそ声のする方に一瞬視線を送った後にやりと笑って言った。

「お、おう。」


立ち話はそこそこにアイザックと別れ配布物を受け取りに行く。噂は4種類出まわっていて、

リズリー家が剣術に秀でた養子を取った事、

リズリー家の養子は次女と結婚させる為に婿養子となる可能性がある事、

リズリー家の次女が娘では無く息子であった事、

リズリーお抱えの商会の息子が付き添いとしてコネ入学した事だ。因みにだが全部違う。バトラー商会からの人選はお姉さまがやりそうだけどあの実力は普通に受験すれば受かると思う。


噂の出回り方をみると我が家も関わっているんだろうな。


配布物をチェルシーとエイベルに運んでもらい自分の寮に置いたら今日やる事は終了だ。帰りに露店にでも寄り道しようかな。チェルシーが前に話していた乾燥フルーツのメレンゲ菓子が気になっていたんだ。




リズリー公爵家が剣術が得意な養子を取った。

その噂は僕の心を騒つかせるには十分の衝撃を与えた。


噂の真相を確かめようと癒術を教えに来ている夫人に訊いても上手くはぐらかされてしまう。


ルイーズ様の婿の可能性があると言う。どのような人物なのだろうか?僕より格好いいのだろうか?………仲は良いのだろうか?

うわさ話に翻弄されていると違ううわさが流れてくる。リズリー家が公表していない次女が実は男だったと言う物だった。


情報が混線している?


3年前に狩猟の会であった時は女の子のようだった。いやでもまだ幼かったし身体的な特徴で言う怪しい、とても怪しい。リズリー公爵家は何を隠しているのだろう…?


(僕、王女のままでいた方が良かったのかな…)

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