第18話 その少女、相変わらずの猪突猛進につき危険


「ルイーズ嬢、呼び出された理由はわかるね?」

「何のことでしょう?けれどわたくしも陛下にお願いしたい事がございましたので丁度よかったですわ。」


呼び出された王様の執務室にはお父さまも居た。2人して顔を顰めている。私がとぼけると王様はさらに難しい顔をしてこめかみを抑えた。


「名前をルイス・リズリーと偽り候補生試験に応募、筆記試験で満点を取り剣術での成績でも模擬戦で相手に的確なアドバイスをしつつ現在首位独走中。」


名前に関しては考えていた言い訳をした。

当然の事ながら王様は頭を抱えた。


「騎士を目指しているのかい?しかし、女性が騎士を目指すとなると色々と問題が浮上するのだが…。と言うかオズワルド、何も聞かされて無かったのかい?」


「それが、お恥ずかしながら…。最近は立て込んでおりましたので気付く事も出来ませんでした。」


お父さまがはっと何かに気づいたような顔をする。そして視線が私の体格を確認する様に動き顔が青ざめていく。


「お前まさか、妙な魔法発明していないだろうな!?」

「筋肉を鍛えただけですわ。男にはなっておりません。」


王様はお父さまに同情するような視線を向けた。

そして咳払いをして気持ちを切り替えたのだろう、私に問いかけた。


「ところで、なぜ騎士になりたいのかな?」

「3年前の狩猟の会の時、ライア王女殿下、今は第3王子殿下ですが…に守りに行きますと約束しました。近衞騎士になり彼に剣を捧げたいです。」


「やけに第3王子殿下に執着していると思っていたがそんな事していたのか…」


「試験の際の寮は……、癒術省か。って事はヴィーもグルだな。おまけでベアトリスとオスカーが着いてくると。知らなかったのは私だけか…」

お父さまは1人でどんどん落ち込んで行ってしまった。王様は程よくお父さまを無視して質問を続ける。


「息子の味方をしてくれるのは有難いが婚約してしまうのでは駄目なのかい?」

「陛下!!」


お父さまは咎めるように声を上げた。そして私もまだそれに納得が出来ないので折れる気は無い。そうですわよ。ずっと、ずっとその事しか考えていなかったんですの。こちらは諦める気は無いから2人ともさっさと折れてくださいまし?私は浮かんできた思考を肯定しニッコリと微笑んだ。


王様はそんな私を見て諭すように言う。

「ルイーズちゃん、前例の無い今までやらなかった事をやるにはルール改正やそれに付随する色々な物を変えなければいけないのは分かるよね?それに、男性しかいない場所に君1人女性を放り込んでしまうのは獣の中に子羊を……、子羊、子羊?…獣の中に毛色の違う猛獣を1匹放り込んでしまうようなものなんだよ。波乱が起きるのは目に見えているよね?」


「陛下、今や魔法省だけで無く癒術省も男女関係なく所属していると聞いております。そんななか騎士団だけ今までの慣例通り男性のみと言うのもいかがなものかと。確かに最初の法整備は大変かもしれませんわ。波乱が起きる事もございましょう。しかし今後決して無駄になるものでは無いとわたくしは愚考致しますわ。それに、


前例が無いなら作ってしまえば良いではないですか!!


今がその時だとわたくしは思いますわ。」


「……。」

「……。」

「……?」


「姉妹で同じ事を言わないでくれ…」


またもや2人してこめかみを抑える。伊達に親友をやっておりませんわねと思いつつとりあえず考えている事を畳み掛けた。

「第3王子殿下は王太子殿下や王妃様と対立したい訳では無いと思いましたの。どちらにせよ対立は免れ無いとは思いますが、近衞騎士として第3王子殿下のものとなってしまった方がかどが立たないかと思ったのです。あと、叙任式で殿下に剣を捧げるのをやりたいですわ!」


最後だけ声が少し弾んでしまった。しっかりとそれは伝わったようで2人は再度頭を抱えた。

精神的ダメージを受けるのはこの際分かっているからいっぺんに聞いてしまおうと王様は私の願い事を聞いてきた。


候補生の訓練を自宅から通う許可など騎士になる為の諸々のことをお願いし、約束させてもらった。それと、


「声は掛けてきたとはいえど試験の途中で抜け出して来てしまいましたの。一筆書いてくださいまし。」


あ、試験官との模擬戦も何とか勝つ事が出来ましたわ。義兄さま意外とすごかったのね。

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