第12話 その応援、得難いものにつき危険


お母さまとお姉さまは第3王子の近衞騎士を目指す事を二つ返事で賛成してくれた。お父さまの許可を貰いに行こうとするとお母さまからストップがかかる。曰くお父さまは未だに王様の親友をやっているから候補生に受かるまで言わない方がいいとの事。分からないけどいいんですか、お母さま…


「あ、お嬢!珍しいっすね、こんな時間に。」

訓練棟に向かうとよく訓練棟の中を案内してくれるビリーが駆け寄って来た。

「あら、ビリーご機嫌よう。証人は多くいた方がいいと思って」


「……証人?」

また私が突飛な事を思いついたのを感じ取ったのだろう。怪訝な顔をしつつも皆んながいる訓練棟の食堂へ案内してくれた。


これから共犯者になってもらう皆んなに心の中で謝りつつ声を張り上げる。気分は横暴わがまま公爵令嬢だ、あれそのまま過ぎるな?


「皆様ご機嫌よう。今日は皆様にお願い事があって参りましたの。ああ、お願いを聞いてくださればいいので食事をしながらで構いませんわ。休憩中にごめんなさい。」持ってきた誓約書を確認する。今日の為に無くても誰も咎める気のないこんな誓約書を探して持ってきたのだ。でも結構良心が痛む。


「この度、わたくし騎士を目指す事にしましたの。お母さまとお姉さまは応援してくださるけど、お父さまの耳に入れたく無いのです。なので剣術の練習をこちらでさせていただくのとお父さまへの口裏合わせをお願いしたいのですわ」


そばにいた統括隊長のエイベルが渋い顔をした。

皆んなも困惑した表情を浮かべている。今回の我儘は長期的で尚且つ問題しか無い。しかし、お父さまは横暴では無いしお母さまは私のわがままに振り回された皆んなの事を護るだろう。


「そうですわね、今回のわがままは一筋縄では行かない事分かっておりますわ。なので皆様、わたくしに脅されてくださいまし。」


そして私は一枚の誓約書を取り出す。

誓約書は訓練棟に通いだした頃に書いたものだ。


わたくしが訓練棟にいる間、

配慮の感じられる粗暴な言葉遣い

聞いている本人に関わらないゲスい会話

以上2点をわたくしの前でする事を不問とする。


書いた当時を思い出しながらそれを皆んなに見えるよう掲げると新人以外は一斉に騒ついた。

私は皆んなの視線を受けながらそれを一気にビリビリに破り捨てた。


「さあ、これで皆さまはわたくしのお願い事を聞かなければならなくなりましたわよ。3年間よろしくお願いしますわ。」


そしてエイベルを呼び止めて言う。

「この紙屑の保管をお願いしてよろしいかしら。わたくしが皆んなを脅した証拠になりますの。あと模造剣を1本お借りしたいのです。」


エイベルは苦笑すると私を安心させるように言った。

「もちろんですよ、お嬢。いつものようにメイドの嬢ちゃんはポーションを持ってきているんだろう?今日のこの後が空いていれば一緒に選びに行こう。」


「いいんですの?」

思ってもなかった申し出に驚く。


「危ない事はしてほしく無いが、お嬢が目標を決めたのなら私たちは応援するよ。皆んなにもよく言って聴かせておく。」


「感謝致しますわ、ありがとう!」


そして、選んだ模造剣を貸してもらい基礎訓練をさせて貰える事になった。余りにも至れり尽くせりである。

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