第11話 その筋書き、道無き道過ぎて危険
私は国で1番の権力を持つリズリー公爵家の次女。大体のことは何でも叶う。でもそれだけでは認められた事にならない。それに守ることも出来ない。
「騎士になれるなら頑張るのだけど…」
女性が騎士にならないのは力の問題だけで無い気がする。それに遠征の為だけにお父さまに結界のスクロール貰うだけで済む話でも無さそうだ。
色んなところへお願いして、自宅から王都内の騎士候補生の訓練校へ通えることになっても最初の任命で近衞騎士になれなければ配属によっては寮の生活。この時点でダメだ。
「法律的には当たり前のこと過ぎて書かれていないから何とかなりそうだけど」
「第3王子を守った功績あるし王様に直談判」
なんかそのまま婚約者にされちゃう流れになりそうだな。
「やっぱり魔法省勤めか癒術省から殿下の主治医目指すくらいしか出来ないかな」
チェルシーがホットミルクを差し出してくれる。
「ありがとう、チェルシー」
「ルイーズ様、ひとつ進言をよろしいでしょうか」
「いいよ。というかお願い。」
私の苦笑いを見てチェルシーはお姉さまの様な不敵な笑みを浮かべる。
「ルイーズ様、貴女の姉君のベアトリス様は何でしょうか」
「女公爵」
「全てを実力でねじ伏せて成り上がった史上初のが抜けておりますわ。」チェルシーは悪戯っぽく微笑み私の言葉を訂正する。
「チェルシーはわたくしが女騎士になれると思う?」
「全てを実力と家族の力でねじ伏せ成り上がる史上初のが抜けておりますわ。ルイーズ様のきれるカードは多いです。そして、それを思いつくだけの頭脳があります。どうか、1番やりたい事を選び抜いてください。」
「ありがとう。」
「そう言えばチェルシー今日はなんだか嬉しそう。」
「兄がエリクサーを作るのを成功させたと手紙が届きました。兄妹共々やりたい事させていただいておりますので、ぜひルイーズ様にも1番やりたい事を選んでいただきたいのです」
「それはおめでとう。そっか、そうだね。」
自室から窓の外の王城を眺める。
叙任式の後、一度屋敷に戻り私以外は祝賀パーティーに参加している。みんな大変だろうなと思いつつ私は寝る準備を進めた。
ーーーーー
僕だけ近衞騎士がいない。当たり前だ、1ヶ月前には確定していた。母上の妨害もあったし、理不尽な印象操作もあった。何より僕は萎縮していて何もしなかった。こんなのについて来たいと思う奴なんて、でもメイドのフィリアは良くしてくれていたな。母上のものだけど。
一度ハンカチを差し出しただけの補佐官、何故あんなに良くしてくれるんだろ。近くにいる人でもまだ人の好意を信じる事は怖いな。
祝賀パーティーでは父上に付いて挨拶に来た方々の対応をした。色々な事を聞かれ、慎重に言葉を選んで返答した。リズリー公爵家、堂々とした一団は確かな存在感を放つ。新しい事業の話でもしているのだろう、派閥内でゆったりと談笑する姿が目立つ。反対にキャンベル公爵家と母上の出身であるスカル公爵家は僕のことを話しているのだろう。険しい顔で囁き合うように話している姿が目立つ。今の勢力図を如実に表しているようだった。
「これはこれは、リズリー前当主殿」
ぱっと父上の表情と声が明るくなる。反対に声をかけられた方は少し嫌な顔をした。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません、陛下」
前当主殿はさっと一緒にいた夫人を少し後ろにさがらせる。ルイーズ様はパーティーには参加してないようだった。
「おや、2番目の御息女はパーティーには参加していないのですか?助けていただいた息子がいるのでぜひお礼をと思ったのですが。」
「2番目の娘はデビュタントがまだですので連れてきておりません。お礼はもう十二分にいただいております。」
何だか父上が嫌な事を口走ってしまいそうだったのでどうしようと思った。父上は何を焦っているのだろう。そして、リズリー前当主夫妻は何を嫌がっているのだろう。
リズリー前当主夫妻はそのまま会話を続ける意思が無いのを示すと軽く挨拶をして去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます