第10話 その誓い、憧れるのには充分すぎて危険
食事に毒が混ざっている事には意外にもすぐに慣れた。毒ソムリエになれるかもしれない。いや、まだ呑んでない毒があるからまだまだだが。それになる気も無いが。
とはいえ、先ずはどういったかたちで王子の側に行くかだ。
王女だったら簡単だった、それはもう本当に。
友達になれば良かっただけだから。
王子である場合、一般的に1番問題の無い側に行く方法は婚約者である。しかしリズリー公爵家としてとなると話は変わってくる。王家より財力と権力があるのだ。そう、王家より。
そして既に元第2王子がこちらに来てるのだ。第3王子まで来てしまった時には国家転覆を疑われかねない。今ですら囁かれているのに。
1番まともなのが魔法省から政治管理省への有識者貸し出しが筋道的にまともだがそれではそばで守ると言うより、力になれる時だけ力になると言った中途半端な立ち位置になる。それでは少し物足りない。
どうしたものか。
あの騒動のあった狩猟の会から1ヶ月経った5の月のある日、お父さまが言った。
「1週間後に各省の叙任式があるんだ。ルイーズ、デビューはまだだが参考になるから今年は一緒に行こうか。」
聞けば役職が昇進した場合と新しく任命された場合に壇上で儀式めいた事をするらしい。相談役は要職と言うほどでは無いから大した役割も無いらしい。本当に見学だけで済みそうだ。
「行きますわ。」
叙任式は平民の立ち見観覧席のある大掛かりなものだった。領地を持っている貴族にはそれぞれ家ごとに分かれた席が用意されていた。平民が集まるのは魔法省新任の魔法のお披露目を見る為らしい。
壇上に設置された玉座にそれぞれ王族が座る。
ライア王女、いや、ライアン第3王子。長いままのふわふわの髪は後ろでキチンと三つ編みにされ、着ている服もドレスではなくなった。
立ち位置の並び順も変わったようだ。今まで王様、王妃様、王太子、第3王子の順番だったのに対して今回は中央に王様と王妃様、両端に王太子と第3王子という風に第3王子が王様の隣に来ている。
きっとあの狩猟の会の後、王子はすぐに行動したのだろう。
(貴方の勇気と行動に敬意を)
ふと、視線が合わさった。
ライアン王子が器用に表情は変えずその眼の奥にだけ喜びを宿したかの様に感じた。でも、私も多分同じような表情を浮かべているのだろう。
しかし、視線が合わさったのは一瞬だけで今の距離はあまりにも遠い。
ほとんどの省の叙任式は代表が省に所属している事の証である紋章を受け取るのみだが、少し違ったものがある。
魔法省は会場となっている広場の上空に魔法を打ち上げ披露する。いろとりどりな華やかな魔法が展開され、見ている者は感嘆のため息をはいた。
軍事省は代表が王様に剣を捧げ受け取った王様が国民にそれを掲げて見せ、それをまた代表に託し、受け取った代表が剣に誓って見せるというシンプルなものだ。
そして最後、軍事省騎士部と色違いの制服を着た人達が壇上に登り、第3王子以外の王族それぞれの前に並ぶ。これは…?
「近衞騎士だよ」
お父さまが小声で教えてくれる。
「騎士の中で優秀な成績と誠実な態度を認められた者が陛下の推薦でなれるんだ。各省とは連携は取るが独立していて、剣を捧げる王族を選べる。当分のあいだ第3王子殿下は陛下の近衞騎士を貸し出されるのだろう。」
ひとりひとりが行う先程の軍事省の代表と同じ行動。しかし、剣を捧げる時託す時のそれぞれの表情が違う。何だろう信頼感みたいなものが。
私、これをしたい。
「そ、それよりルイーズ、魔法省の叙任式はどうだった?華やかだっただろう?」
「お父さま、騎士って男性しかなれませんの?」
家族全員の視線がお父さまに突き刺さり、お父さまは冷や汗をかいた。
「やっぱり男性になる魔法を開発するしかありませんわね」
「それだけはやめてくれ…」
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