俺に加護をくれたのは邪神でした。〜イキリまくるの気持ち良すぎだろ〜

第38話 イヴェルのイタズラ

「さて、さっさとぶっ殺してしまうとするか」

　俺は俺様ソードを構える。この剣は紛うことなき創世級（ジェネシス）の最強武器だからな。全力を出したらどうなるか非常に楽しみだ。

　剣に魔力が集まり銀色の輝きを放つ。これはなかなか期待できそうじゃねぇか。

「ま、待てジェノス！」

「なんだ？　遺言でも聞いてほしいのか？」

　剣の魔力の高まりを感じ取ったのかタマランチュラが待ったをかける。一応殺し合いしてんだけどな。こいつにとってはゲーム感覚なんだろ。どうせチートに釣られて魔神になっただけの奴だろうからな。命のやり取りに実感があるとは思えん。

「お、俺はあと一つ変身を残している。どうだ？　戦ってみたくないか？」

「ほほう？」

　つまりもっと強くなると。

　いいだろう。ならば俺はその上を行き、イキり散らしてくれるわ！

「おもしろい、やってみろ」

「ふん、後悔させてやるぞ。だがその前に……」

「なんだ？」

「このケツの杭を抜いてくれ」

　どうやら自分では取れないらしい。めちゃくちゃ深く食い込んでるからな。人の力で抜くのは無理だろ。鉄巨人ならできるかもしれんが、操縦してる間はこちらが無防備になってしまう。

　ならその間は防御アイテムで保護すればいけるかもしれんな。

「よし、やってやろう。ヴァリアントを使えば抜けるだろ。でも操縦中はこちらが無防備になるからな。間違っても攻撃すんなよ？」

「わ、わかった。だから頼む」

　魔神の方は痛みが大分引いたのか少し言葉に余裕が出てきている。念の為俺は防御アイテムで結界を張り、ヴァリアントを取り出す。

　オルターナを上回る鉄巨人ヴァリアントはまさにスーパーロボットのようなデザインでマジでカッコよかった。俺はオーブを掲げ、ヴァリアントに憑依する。

　そして意識がヴァリアントに移ると視点が一気に高くなった。俺は魔神に近づきケツの穴に食い込んだ杭を抱え持つ。そしてゆっくりと引き抜き始めた。

「お、おごぉぉぉっ……」

　魔神の身体がビクンと震える。動かしたことで痛みがぶり返したのだろう。

　そして俺のイタズラ心に火が付いた。

　俺は半分くらい引き抜いた杭を再びケツの穴に押し込む。もちろん勢い良くだ。

「おごぉぉぉぉっっっ！？」

　魔神が絶叫をあげ身体をビクつかせる。俺は増々楽しくなり杭を乱暴に出し入れしてやった。

「ぎゃ、ぎゃぼおおおおぉぉっっ！？　や、やめれえええええっ！」

　魔神は大きく身体を仰け反らせ絶叫する。俺の加虐心は増々ヒートアップ！

「オラオラ！　新しい扉を開きやがれこのクソ魔神がぁっ！！」

「や、やべてくべぇえぇっっ！」

　魔神が手を前に突き出して懇願する。なんて滑稽なんだ！

　やべぇ、めっちゃ楽しいわ。

「ギャハハハハ！　抵抗しても興奮するだけだってなんでわかんねぇんだよ！」

「ぎゃーーーっ！　死ぬ、死んじまう。た、助けてくれぇぇぇっっ！」

「うわっはははは！　だったらサッサと死ねやクソ野郎が。そろそろトドメを刺してやんよ！」

　俺はヴァリアントの手のひらに魔力を溜め込む。そして奴のケツの穴に向かってジェノサイドバスターを放った。

　極太の光線がケツの穴の杭を更に深く押し込み、そして魔神の脳天を突き破る。いかん、興奮し過ぎてぶっ殺すしちまったかな？

　魔神は力尽きたのか突き出していた腕をパタリと地面に落とし、その身体も地に沈ませる。約束通り杭は取れたし、憑依は解除するべ。

　憑依を解除し元の肉体に戻る。魔神の身体は光の粒子となっていき、虚空に溶け始めていた。

「い、嫌だ！　し、死にたくねぇ、死にたくねぇぇぇぇっ！」

　そしてタマランチュラは光の粒子となって虚空へと消えていった。

　かと思ったら光の粒子が収束を始める。うおぃ、まさか……。

（これで終わったらつまんないでしょ？）

　俺の心に声が響く。この声は間違いない。邪神イヴェルの声だ。あんの野郎まだ何かしようってかぁっ！？

　光の粒子はやがて人型となり、一体の人物を創り上げる。この優男風のアバターは見覚えがあるぞ。そうだ、俺様最強伝説のタマランチュラのアバターだ。

「い、生きてる、俺は生きてるのか？」

　何が起こったのか理解できてないのだろう。タマランチュラは何が起こったのか理解できていないようだ。驚愕の表情で自分の両手を見つめている。

「おー、よかったなタマランチュラ。お前今俺様最強伝説のアバターそっくりになってるぞ。もしかしてそれが変身というやつか？」

　俺は親切にも奴の今の状態を教えてやった。多分ステータスは俺同様ゲームに準じているだろう。

「なんだって？　いや、変身すると単に赤くなってステータスが５割増になるだけなんだがこれは……！？」

　赤くなるだけだったのか。さて、問題はこいつのステータスがどうなっているかだ。俺が引退してから結構経ってるからな。ヘヴィユーザーのこいつなら俺よりステータスが高くなっていてもおかしくないだろう。

「あー、まぁあれだな。神様のイタズラってやつだな。んじゃ決着つけようぜ」

　それでも俺には勝算がある。それはこの世界に関して圧倒的に情報量に差があるからだ。あのゲームの殆どの魔法が使えないことを奴は知らないはず。

「やるってのか？　お前はあのゲームの能力引き継いでるんだってな。ということは俺のこの姿もあのゲームの能力を引き継いでいるはずだ」

　俺の事情くらい聞いてるわな。それならそう思うのも当然だろう。驚くほどのことじゃない。

「あの頃から時間が経ってるからな。俺に追いついたのか？」

「いや、大型アップデートがあってな。お前のステータスはとっくに追い越してるんだよ！」

　やはりあったか大型アップデート！

　タマランチュラの魔力の高まりを感じるぜ。

「へーっ、そいつは楽しみだな」

「見せてやるぜ！　これが新機能秘霊の力だ。出てこい、最強の秘霊殺戮大帝！」

　タマランチュラめ、早速新機能とやらを発動させるつもりか。右手を高く掲げているが、あれが合図なのか？

　クソッ、情報がないってのは辛いもんだな。だが俺は負けねぇぜ！