第31話 起動、オルターナ!
「よくやってくれたジェノスよ。これでクレレンマーとの決着もつくだろう」
俺とキールは戻るなり国王に謁見を願い出た。そして謁見の間でクレレンマーの王城を半壊させ、宣戦布告を行ったことを報告する。
国王は愉快そうに笑い俺を褒めた。周りの貴族たちもざわめきつつ俺の挙げた成果を褒め称える。
「陛下、キールの話に依りますと辺境伯は手強いと聞いております。そこで私は兵器の提供を行いたいと思うのです。これを使えば如何に敵の辺境伯部隊が精強だろうと勝てるでしょう」
謁見の間だからな。いくら俺がマウント大好き人間でも時と場所くらいはわきまえるぞ。ちゃんと跪いてるし。
俺はアイテムボックスから筒状のアイテムを取り出す。そう、これは魔導砲という戦略兵器だ。一個で一発という消費アイテムだがその威力は特定範囲に10000ダメージというのがカタログスペックとなっている。実際に使うとどの程度の破壊力なのか全くわからんけどな。
で、これが実に999本あるんだわ。今後のことも考えれば提供は100本もあれば十分だろう。イヴェルが箱庭を再現してくれれば大量生産も可能なんだがな。
「ほほう、それは? 見たこともない道具だな」
「これは魔導砲という兵器です。試し撃ちはしてませんが、かなりの威力があるはずです。これを100本お譲りしましょう。射程も長いので使いやすいと思います」
サンプルとして見せたのは一本だ。これだけでもかなりの戦力増強になるだろう。だが俺は負けるのが嫌いでな。特別に素適なプレゼントも用意してやったぞ。
「ほほう、それはそれは素晴らしい。ジェノスよ、ありがたくいただこう」
「それともう一つ。戦略兵器として鉄巨人兵を3体用意しました。後ほどご覧に入れましょう」
俺が持ってても今のところ使い道がないからな。だったらせいぜい有効に使ってもらおうか。
「ジェノスよ、余はその鉄巨人兵というものもそうだが、魔導砲の威力をこの目で見たい。明日その2つを確かめさせてもらうぞ」
「わかりました。では明日お迎えにあがりましょう。楽しみにしていて下さい」
俺も魔導砲の威力は気になるな。一応イヴェルが再現してくれたが、性能がダウンしてる可能性もある。ショボかったら泣くぞ。
「うむ。ジェノスよ、今日はご苦労であったな。帰って休むがよい。下がってよいぞ」
「はっ」
俺は恭しく頭を下げる。さーて、明日が楽しみですなぁ。
* * *
そして次の日、俺は国王とその護衛騎士団を引き連れ街の外に出た。一応街からは欠航離れている。辺りは大きめの岩石が転がっている岩山だ。魔導砲の威力を試すにはちょうどいいだろう。
「ではジェノスよ。先ずはその魔導砲とやらの威力を見せてもらおう」
国王は俺が用意した椅子に座り高天の見物だ。腰抜かすといかんからな。椅子はあったほうがいい。
「はい、使い方は簡単です。筒の先を敵に向け、この引き金を引くだけです」
俺はでかい岩石に向かって魔導砲を向ける。見た目はバズーカ砲だがこの世界にはそんなもんないからな。さぞ珍しいかたちかもしれん。
そして俺は引き金を引く。すると魔導砲からぶっとい光線が放たれた。その光線は岩石を呑み込み、貫いて遥か先まで光が伸びていく。そして光の過ぎ去った後は岩石が蒸発したかのように消え去り、大地をえぐり取っていた。
この威力ヤバない?
「す、凄まじい威力だなジェノスよ」
「俺も驚いてますよ。問題はこれ使い捨てなんですよね。一発撃つと充填された魔力が失くなるみたいです」
「充填はできんのか?」
まぁ気になるよな。事前に調べておけば良かったわ。見た感じこの筒のとこにある緑の宝石ぽいのが魔力を貯めておくところだろう。そこに魔力を込めればいけるかもしれん。
「やってみます」
俺はその緑の宝石ぽいのに魔力を送ってみた。結構もってくな。MPを300消費したところで宝石の色が緑から赤に変わる。どうやら充填できたらしい。
「できますね。使う魔力は300というところでしょうか」
「少し優秀な魔導士1人分といったところだな。それであの威力なら釣り合いも取れよう。ジェノス、ありがたく使わせてもらうぞ」
ほうほう。少し優秀な魔導士でMP300くらいなのか。参考になるわ。俺から見たら全然低いな。
「はい。城に戻ったら100本出しましょう。続いては鉄巨人です」
俺はアイテムボックスから一体の鉄巨人を取り出した。カタログスペックでは全長8メートル、重さは装備込みで約3トンにもなる。で、問題のデザインは北欧神話に出てくるような戦乙女をイメージしてある。何故か羽根も生えてて空も飛べるぞ。羽根は制御用で実際には魔法で飛ぶらしいが。
鉄巨人は系列のアイテム名なんだが、材質は全然鉄じゃないんだよな。材質でランクや性能が決まるんだが、もちろんこれは最上位のものだ。
「金色に光っているが、あれは本当に鉄なのか?」
「いいえ。そういえば材質はどうなってたかな?」
カタログスペックではオリハルコン製なのだが、果たしてこの世界にオリハルコンが存在するんかね?
ちょっと鑑定してみよう。
オルターナ 系列 鉄巨人
材質 オリハルコン レア度
HP 200000/200000 MP20000/20000
ATK 10000 DEF8000 MG5000 SPD1800 DEX3500
破槍撃10 雷鳴槍10 極光砲10 雷球10
自然治癒5 自然魔力回復5
うん、カタログスペックまんまだ。こいつ一体で一つの国滅ぼせるんじゃなかろうか?
約束だともう二体渡すことになってるからそっちは少しランク下げるか。
「えーっと、オリハルコンですね。これの動かし方なんですが、意識を憑依させて使うんですよ。陛下、動かしてみますか?」
「オリハルコンは伝説の金属だぞ! なんでそんなもん持っとるんだ。初めて見たわ。で、余でも動かせると?」
オリハルコンと聞いて国王はむっちゃ驚いていた。ま、無理もないか。オリハルコンのインゴットもあるぞ。
で、やぅぱり動かしたいよな。巨大ロボットは男のロマンだ。
「ええ。この制御球を持ってこの鉄巨人に意識を憑依させるんです。どうぞ」
俺は制御球を国王に渡す。制御球は赤色のソフトボールくらいの大きさだ。
「うむ。なるほど、これを持ってあの鉄巨人に意識を向ければよいのだな?」
「その通りです。この鉄巨人の名前はオルターナなので名前を呼べば憑依できるはずです」
国王は制御球を受け取るとしげしげと眺めほくそ笑む。俺は使い方を説明するが、これはゲーム内での説明の流用だ。実際にこれで動いてくれりゃいいんだけどな。
「うむ、では動かしてみるか。オルターナ!」
国王がオルターナの名を呼ぶとカクンと意識を失ったかのように俯く。周りは大慌てだ。
「へ、陛下!? ジェノス、貴様騙したのか!」
「落ち着け。憑依したから眠っているだけだ。呼吸はしてるだろ」
国王はすやすやと寝息を立てている。意識を失うと人体に不都合だから寝る仕様なんだろうな。周りも国王が寝ているだけと気づいたのか落ち着きを取り戻す。
「うむ、これは凄いぞぉっ!」
と突然甲高い女性の声が響き渡る。発生源はオルターナだ。しっかり起動しており身体をほぐすように体操を始める。どうやら成功したらしい。
「ジェノス、これは凄いぞ。思ったとおりに動くではないか。早速この手に持った槍の破壊力を見てみたいものだ」
国王が上機嫌に話す。声が女性で話し方が国王だから違和感ぱねぇな。
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