第30話 敵の将軍相手にイキれ!

「す、凄いですね……。もう着いちゃいましたよ」


 眼下のクレレンマーの城を眺めながらキールが呟く。黒龍に乗ってから実に10分足らず。うーん、こいつは凄いな。


「よし、降りるとするか。黒龍がいればいい威嚇になる。どっか適当に着地して待っててくれ」

「わかった。妾が休めそうな場所に降りて待っていよう」


 黒龍はゆっくりと降下を始める。街は大騒ぎでたくさんの騎士がわらわらと出てきたな。ブレスでも吐かせて殺すのも楽しそうだ。


 黒龍は広い中庭に着地する。するとその周りを騎士どもが取り囲んだ。そしてその中から貫禄のある騎士が前に出る。


「我が国に如何ような御用でございましょうか黒龍様。民達も怯えています。どうかこの場は引いていただけないでしょうか」

「断る。妾は我が主の頼みでここにやって来た。貴様の頼みを聞く義理はない」

「我が主……?」


 騎士がやたら丁寧に黒龍に話しかける。黒龍はそれをあっさり断った。こいつ俺らがいるの見えてないのかよ。


「おい、俺様が乗ってるのが見えてないのかよ。てめーんとこの国王連れてきてやったぞ」


 俺は縛り上げた国王を抱えて黒龍から飛び降りる。国王は情けない声をあげていたが知るかボケ。


「へ、陛下! 貴様、陛下にこんな真似をしてただて済むと思っているのか?」

「知るかボケ。こちとら宣戦布告に来てるんだから関係ねーわ。俺の名はジェノス。シェルカラングの外部国防顧問という立場にいる。クレレンマーの要求はあまりにふざけていたからな。断固拒否するものとし、シェルカラングはクレレンマーに宣戦布告をする」

「ぐえっ!」


 俺はそこの騎士に向かって宣戦布告を行うと、国王を下に落としてその頭を踏んづける。もちろんグリグリは忘れない。


「なんだと!? それよりも陛下から汚い足をどけろ。それにジョアンナ様はどうしたというのだ?」

「いいもんくれてやるよ。ほれ」


 騎士が喚くので俺はアイテムボックスからジョアンナの生首を取り出し放り投げる。もちろん国王は踏んづけたままだ。


「じょ、ジョアンナ様ァっ!」


 騎士がジョアンナの生首を見て絶叫する。顔真っ青だな。


「気に入ってくれたか? せっかくだしもう一つプレゼントだ!」


 俺は国王を踏みつける足に力を込めた。


 ゴキャッ!


 俺はゴキブリを潰すように国王の頭を踏み潰してやった。即死だな。奴らショックで目を見開いて固まってやがる。


「き、貴様ぁっ!」


 真っ先に動いたのは騎士だ。剣を抜き俺に斬りかかる。よし、タップリと惨めな思いをさせてやるからな?


「死ねい!」


 騎士は迷わず俺に向かって剣を振り下ろした。俺はそれを余裕で左手でキャッチする。


「チンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケチンケェッ! ちょいとでもこの俺に敵うと思っていたのかぁっ? あまりに雑魚過ぎて話にならんわ!」


 俺は気持ちよくイキり散らかすと右の拳で剣を叩き折る。パキィと涼やかな音を立てて風流よな。


「お、おのれぃ!」


 騎士は歯を噛み締めて俺を睨むとバックステップで距離を取る。この程度なら全然脅威を感じないな。さーて、反撃と洒落込みますか。


「今からお前の首を跳ねる。しっかりと避けろよ?」


 俺はアイテムボックスから殺人ソードを取り出し、その騎士に切っ先を向けて宣言した。


「なんだと!?」

「いくぞ」


 驚いてる場合じゃねーぞタコ。俺は瞬時に間合いを詰め一閃。騎士は全く反応することなくその首を跳ばされた。生首は軽く宙に飛ぶとコロンと後ろに転がっていく。


「ひ、ひぃぃぃっっ! しょ、将軍がぁっ!?」


 後ろで待機していた騎士どもが驚きの声をあげる。こいつ将軍だったのか。中枢の一人を始末できたわけだ。


「よし、黒龍。せっかくだしお前の全力のブレスであの城ぶっ壊してくれよ」


 もうめんどくさいし黒龍のブレスで破壊してしまおう。宣戦布告はしたわけだし問題ないよな?


「心得た。では後ろに下がるがいい」

「おう」


 黒龍がニマリと笑って快諾する。俺はすかさずジャンプして黒龍の背に飛び乗った。


「や、やめてくれぇぇぇっ!」

「ゆくぞ!」


 騎士共が悲鳴をあげる。素晴らしき絶望のBGMってやつだな。そして黒龍が思いっきり息を吸い込んだ。


 そして放たれる暗黒吹息ダークブレス。以前見せた腐敗の吹息ロトンブレスと違いまるで極太のレーザーのように口から吐き出される。そして城を貫通すると黒龍が首を振り破壊の範囲を広げた。


 派手な音を立て城が崩れ落ちる。残った部分も余波でボロボロだ。倒壊は時間の問題だろう。


「うっひょー、これは凄いな。俺でも喰らえばただじゃ済まんかもしれん」

「す、凄いです……! これが黒龍様はの御力なのですね、僕は感動しました!」


 キールは目を鈍く輝かせている。口元はかなり緩んでおり、圧倒的な暴力に心躍らせているようだ。こいつ、実はかなり残虐な性格なのかもしれん。


「フハハハ、そうかそうか。妾の凄さを理解したかジェノスよ。さて、目の前の羽虫どもはあらかた消滅したな。次はどうするのだ?」


 俺が褒めたので気を良くしたらしい。黒龍は愉快そうに笑うと次の指示を求めた。


「ふむ、そうだな。宣戦布告もしたし帰るか。後は軍に占領させればいい。手柄は残しておいてやらんとな」

「ええ、でもクレレンマーは辺境伯の治めるところの軍隊はかなり精強です。あそこさえ何とかできれば勝利は間違いないでしょう」


 なるほど辺境伯か。確かに国境付近で敵国に近いなら軍備には力入れてるはずだよな。でも全部俺がやると他の貴族から苦情が来るだろ。


「ほほう、なら尚更残しておいてやらんとな。なに、兵器に差があればなんとかなるさ」


 戦争の道具としてちょうどいいのがあるからな。そいつをくれてやれば勝てるだろ。


「わかりました、では帰りましょう」

「おう。よし黒龍、悪いがシコリーブまで乗せてってくれ」

「いいだろう。キールよ、道案内を頼もうか」

「はい、お任せ下さい」


 そして黒龍が羽ばたく。空から見た王都は城が半壊している。さらに黒龍のブレスで街にも結構な被害が出ていた。こりゃ復興に時間がかかるな。



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