幕間 キチママの転生者
「あら、あなたいいネックレスしてるじゃない。きっと私に似合うわね。だから私がもらってあげるわ」
ジョアンナが城の中を歩いていると、この国の第二王女とすれ違う。そのときジョアンナは彼女の身につけていたネックレスに目をつけた。そして第二王女に寄越せと右手を差し出し指をピクピク動かす。
このジョアンナこそ商売の神アルキンドの使徒であり、この国の外務大臣でもある。使徒だけに見た目は若く歳の頃なら二十代前半程だ。そしてそれなりの美女でもあった。
「お断りしますジョアンナ様。それに私は王女ですよ? それは不敬ではなくて?」
第二王女は眉を釣り上げジョアンナを睨む。
「なによケチね。沢山持っているんだから一つくらいいいじゃないの。この私がもらってあげると言ってるよのよ差し出すのが普通でしょ」
「ジョアンナ様、他の者からも苦情が出ているんです。あれをクレクレこれをクレクレとしつこいし、断ると逆ギレして強奪する。やっていることは強盗でしてよ?」
第二王女は不快さを露わにする。そしてジョアンナを指差し指摘した。するとジョアンナは鼻で笑い、
「うるっさいわね。強奪じゃないわ。もらってあげたのよ。いいからそのネックレス寄越しなさいよ」
と聞く耳を全くもっていなかった。
「嫌です。なんなんですかそのもらってあげるって。誰も頼んでません」
「いいから寄越しなさいよ。あなたのネックレス、この私がもらってあげる!」
ジョアンナが顔を歪ませビシィッ、と第二王女を指差す。そしてジョアンナがスキル『もらってあげる』を発動させた。
「うおおおおおっ! クレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレ寄越せーーーーっ!」
ジョアンナは両手の平を上に向け、奇声を発しながら無数の突きを繰り出す。その突き一発一発が第二王女の身体に刺さるがなぜか第二王女は無傷だ。
しかし。
「ああっ、私のネックレスが!」
いつの間にかジョアンナの手には第二王女のネックレスが握られていた。
「ふふっ、もらってあげたわ! 私のクレクレ百烈拳は相手の物の所有権を奪うのよ。一度私が目をつけたらたとえ隠し持っていようとも無駄と知りなさい」
「か、返して下さい!」
「嫌よ。これはもう私のもの。面倒だしこのネックレスの所有者だった記憶ももらってあげるわ! クレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレクレ寄越せーーー!」
再びクレクレ百烈拳を放つ。そして放ち終わる頃には第二王女からネックレスを所有していた記憶が綺麗さっぱり消えていた。
「あら、私何をしていたのかしら?」
「私に挨拶をしていただけよ」
ジョアンナはなにごともなかったかのようにそれだけ話すとさっさと第二王女の元を去っていった。
「ふふん、この私のスキル、もらってあげるは無敵よ。相手の経験値もスキルも美貌さえも奪えるんだからね。今度の会談で領土や利権を奪いたいけど、もらうのが私個人のモノにならないものはクレクレ百烈拳が使えないから不便よね」
ジョアンナは自らのスキルを自賛するが欠点もあった。このスキルはかなり凶悪な力があり、大臣の座も国王にクレクレ百烈拳を使って得たものだ。
「そうよ、奪った領土を私が治める領地にしちゃえば私のモノよね。それならクレクレ百烈拳が使えるじゃない。早速国王に要求しにいかないと」
そしてジョアンナは自らのを欲望を満たすために今日も奔走するのであった。
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