第26話 国王との会食
「すげぇご馳走だな」
国王の招待を受け、俺とルルナちゃんは城の食卓に座っていた。同席者は国王の他に偉そうな奴が何人かいる。ま、興味ないけどな。一応恥ずかしくないよう俺とルルナちゃんはちゃんと正装だぞ。
俺のアイテムボックスの中身が復活していたおかげで良いスーツとドレスがあったからな。それを着用している。
俺は紺のスーツで髪をオールバックにまとめていた。そしてルルナちゃんも俺の持っていたドレスが何故かサイズピッタリ。水色のドレスで装飾品も全て
そして正装をしている俺達の目の前には美味そうな料理が並んでいた。広がる焼き立ての肉の香草の香りが俺の鼻腔をくすぐる。そして見た目の色彩も色鮮やかで目を楽しませていた。
食べなくてもわかる。これは絶対に美味いだろう、そんな期待をさせてくれる料理ばかりだった。
「ジェノスよ、君は退屈な式典など興味ないだろうからな。形式は全て無視してこの場で叙爵を行う。が、先ずは食事を楽しんでくれたまえ。マナーは気にしなくてかまわん」
「それは助かる。食事のマナーとか全然知らんからな。じゃあ遠慮なくいただこう」
俺は軽く手を合わせるとフォークを掴んで肉にぶっ刺す。そしてナイフで素早く切るとパクリと口に運んだ。
「う、うまぁっ!」
ふおおおお、これが王家の料理か。一般のちょっと高めのレストランじゃ太刀打ちできんなこれは。
たった一嚙みで肉汁が溢れ、香草の爽やかさと濃厚な旨味が見事に調和している。さらにソースも肉の味と絡まって複雑ながらも一つにまとまる絶妙なバランスだ。うーん、こればっかりは俺のチート能力でも再現不可能だろう。
ルルナちゃんも一口食べただけで目を見開き、そして
「はっはっはっ、気に入ってもらえたようだな。さ、遠慮せず食べてくれ。話はお腹を満たしてからだ」
「感謝するぜ国王様。こんな美味い飯は初めてだ」
「当然だ。王家が口にするのだぞ? 1日の食費で平民の給金一ヶ月分など軽く吹っとぶわい」
これが王家の権力というやつか。恐らく金があれば食えるもんでもない。王家という地位と権力と財力がなきゃ無理なんだろうな。
俺は夢中で目の前の食事にかぶりつく。もう美味すぎて声がでねーわ。普通のやつなら一生かかっても巡り会えない料理なんだろうなきっと。
「ふー、食った食った。さすがに腹いっぱいだわ。ご馳走様でした」
「私もです。とても美味しかったです。国王陛下、このような素敵な機会を与えてくださり深謝いたします」
俺とルルナちゃんは満足して国王に頭を下げる。俺だって感謝したら頭を下げるんだぜ?
どうだ、偉いだろ。
「うむ、腹を満たせたなら私の用事を澄ませてしまおう。本来叙爵となると式典や謁見のときに行うのだがな。堅苦しいのは苦手だろうと思ってこの場を借りて叙爵を行おう。この短剣を受け取ってくれ。それが叙爵の証となる。おい」
国王が配下に命じ、木の箱を俺の近くまで持ってきた。そして蓋を開けると宝飾のされた短剣が姿を見せる。
「ジェノス様、お受け取り下さい」
「おう」
俺は短剣を掴むとしげしげと眺める。
「その短剣に刻まれた紋様は王家を表している。そして我が国では宝石の種類で爵位を表していてな。子爵はアクアマリンだ」
なるほど、短剣の柄に水色の宝石が埋まっているな。これがそうか。
「これで大手を振ってルルナちゃんを身請けできるわけだな」
「それだけのために爵位を求めたのか?」
「そうだ。法律は守らんとめんどくさいことになるからな」
ムカツクからと全員殺すわけにもいかんからな。ある程度の筋を通さんと相手をゴミ呼ばわりできねぇし。
「賢い選択だ。それでジェノスよ。お前には外部国防顧問の肩書きが与えられることになる。この国を守るために力を貸してもらうぞ」
「いいぞ。そのぐらいのことは求められると思ってたからな」
ルルナちゃんとの暮らしを守るためだしな。そのくらいはしてやるよ。
「それはありがたい。実は隣国のクレレンマーとは近々戦争になると思われるのだ。クレレンマーとは元々領土問題があってな、緊張が高まっているんだ。現在は協定でお互い平等に分け合って治めていたわけだが、何故か商売の神の使徒が口を出してきてな。土地を寄越せ、使用料も払え。慰謝料として他の領土を割譲しろと要求して来たのだよ」
商売の神の使徒かよ。まさかここで出てくるとは思わなかったぞ。イヴェルが言ってたのはこのことだったのか。
しかし要求が無茶苦茶だな。交渉下手くそかよ。
「なんで使徒が政治に口を出すんだ?」
「一応貴族だからな。しかも最近大臣に就任したらしくてな、最近の会談で他にも色々要求されたぞ」
「マジかよ。どんな要求だ?」
「毎年収穫した小麦を半分タダで寄越せだの税金の8割を献上しろだの到底呑めない要求しかなかったぞ。断ったらめちゃくちゃ逆ギレされてな。交渉も何もあったもんじゃなかったわ」
なんだその斜め上の要求は。どう考えても戦争仕掛けたいようにしか見えん。
「頭おかしいだろそれは。どう考えても喧嘩売ってるとしか思えんぞ」
「うむ。来週もう一度会談が行われるわけだが、間違いなく決裂するだろう。できればその会談に護衛として来て欲しいがかまわんか?」
「おう、いいぞ。任せろ」
なんならその場で使徒を始末しても良さそうだな。相手をキレさせて向こうから手出しさせればいけるかもしれん。
女らしいがババァなら殺せるぞ?
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