第11話 エルフ相手にイキれ!

 俺は早速王都シコリーブを目指し旅に出た。道のりについてはドルーズに聞いたので大丈夫だろう。地図とか売っていたら良かったんだがな。


 そして俺はシコリーブに行くためにゼンシーネの森を歩いていた。そういやこの辺りにはエルフとやらが住んでいるらしい。普通に道を行けば滅多に会うことはないらしいけどな。


「む? 兎か」


 俺は偶然一匹の兎を見つける。額に宝石のようなモノがあり、紅い輝きを放っていた。なんか高く売れそうだな。捕まえてみるか。


 俺は早速その兎を捕まえるべく一気にダッシュ。距離を詰める。しかし兎も俺に気づいたのか身体を翻して逃げた。そのスピードがめっちゃ速いでやんの。だが追いつけないほどじゃない。


 ていうか俺が簡単に追いつけないとかどんな速度だ?

 俺熊より速いんだけど。


「マジックミサイル!」


 俺は兎の逃げ道を塞ぐようにマジックミサイルを放つ。Uの字の形に着弾させ兎の足を止めることに成功した。

 今だ!


貫通光線ペネトレーションビーム!」


 俺は指先から細い魔力光線を放つ。こいつには凶悪なまでの貫通力があり、街の外壁くらい余裕で貫通する。かなりの高位魔法で消費ポイント8000で習得した魔法なのだ。


 その光線は俺の指先から放たれ、兎の首を貫通、即死させる。


「よし、お宝ゲットだぜ! 早速鑑定しないとな」


 エスケープラビット

 額の宝石は兎紅玉と呼ばれ高値で取引されている。その肉も上質で簡単に狩れないことで希少価値も高い。


「なるほど、なかなかのお宝じゃあないか。収納しておこう」


 俺はエスケープラビットの死体を収納する。そして周りを見ると完全に道から外れていたようだ。追いかけ回したから来た道わかんねーや。


「うーん、もしかして迷ったか? 太陽の位置があそこだから方向はあっちか」


 俺は太陽の位置を頼りに方角を予想し歩き始める。間違えてないといいんですけどねー。まぁなんとかなるか。


 俺はとりあえず一直線に歩いた。するといきなり俺の見切りスキルが発動。飛んできた矢を察知し、素手で掴み取る。おいおい、狙いは首をかよ。下手したら死んでるじゃねーかあぶねーな。これはもう殺意ありってことだな。


「誰だ、出てきやがれ!」


 俺は矢の飛んできた方向に向かって叫んだ。すると数人の男達が姿を現す。背中に矢筒を背負い、手には弓。そして細長い耳に端正な顔立ち。もしかしてこいつらエルフってやつか?


「人間、この地に何用だ」

「何用だ、じゃねーよ。今完全に俺を殺しに来てただろ。つまり俺に殺し合いを挑んだということだよな?」


 なんだこいつら。俺の生命はついさっきまさに風前の灯だったんだぞ。詫びも無しとかありえねーだろ。


「殺し合い? やはり人間は野蛮だな。ここは我らの領域。立ち去れば生命だけは勘弁してやろう」

「いきなり殺しに来た奴に野蛮とか言われる筋合いはねぇな。で、立ち去らなければどうするんだ?」


 めっちゃ上から目線だな。いいぜ、そのケンカ買ってやんよ。


「死にたくなければ去れと言っている。警告はした。さっさと去れ」

「断る。俺も警告するぞ。何かを仕掛けたらそれは俺に対するエルフどもの宣戦布告だ。徹底的に反撃するし賠償も要求する。だから邪魔をするな」


 殺す気満々じゃねーか。先に即死レベルの先制攻撃しておいて警告も何もねーだろ。バカなのかこいつは。だったら俺も警告だけはしたからな?


 俺はシラネ、とばかりに平然と前へ歩き始めた。するとエルフ達は一斉に矢を引き絞る。そしてその矢は全て俺の急所めがけて放たれた。


 しかし俺はそれらを全て剣で振り払い叩き落とす。宣戦布告は受け取った。ここからは殺し合いだよな?


貫通光線ペネトレーションビーム


 普通なら一度に一発が普通の魔法だが創造技巧により俺は多重発動というスキルを作っている。これは一度の発動で同じ魔法をいくつも発動させるというとんでもスキルだ。


 そのため光線の数は実に30本。エルフの数は6人いたが、1人を除いて全員の心臓や眉間、あるいは首を貫く。当然即死だ。残る1人も太腿や肩を貫かれ膝を付く。わざと1人残したんだよ。


「き、貴様ぁっ! よ、よくも同胞を」


 その生き残り派俺を散々挑発してくれた奴だ。そいつは俺を憎悪の目で睨む。


「俺言ったよな? 何か仕掛けたら俺に対する宣戦布告と受け取ると。そしてお前らの矢は全て俺を殺すつもりで射ったもののはずだ。お前らが俺を殺すのは良くて、俺がお前らを殺すのはなんで駄目なんだよ。言ってみろよこのゴミ」


 自分さえ良ければいいのはお互い様じゃねぇか。単にてめぇらがクソザコ過ぎただけだろ。


「き、貴様程の実力があれば手加減はできたはずだ! 殺す必要などなかっただろう!」

「最初に俺の首を狙ったの誰だよ。てめぇだろうが。お前は俺が避けると確信して矢を射ったのか? 違うよな、殺すつもりだったんだよな?」

「くっ……!」


 ほれ何にも言えねぇだろ。所詮は上から目線の勝手な理屈なんだよ。


「さて、お前には代償を支払ってもらおうか。先ずはお前の里に案内しろ」

「な、何をする気だ!」

「てめぇのしたことをその里の長に話して相応の賠償を要求する。応じないならてめぇの首をもらう」


 いわゆる戦争賠償というやつだな。俺には当然もらう権利があるはずだ。


「ふ、ふざけるな! そんなことに応じるわけがないだろ。殺せ。だから里には手を出すな」


 おー、殺せと来たか。なかなか根性座ってるじゃねぇか。エルフ野郎は汗をかきながら気丈にも俺を睨みつける。本当に殺されるのが怖くないのか。


「嫌だね。お前を殺しても銅貨1枚にもなりゃしないだろ。それじゃ俺の腹の虫がおさまらないんだよ」

「散々殺しておいて言うことか!」

「殺されたのは自業自得だろ。案内しないってんなら自力で探して女エルフは奴隷に、男は皆殺しにする。これは俺とエルフの戦争だからな。負けたら賠償するのがルールなんだぜ?」


 まぁ、勝手に戦争にしたのは俺だが。しかし我ながらなかなかの鬼畜発言だ。本当にやったら色々問題があるかもしれんな。脅しになればいいが。


「貴様は悪魔か!」

「邪神イヴェルの使徒だが何か問題でも?」

「じゃ、邪神イヴェル様の使徒だと!? お、俺が悪かった! 俺にできることなら何でもする。だから同胞だけは見逃してくれ、いや下さい!」


 俺が邪神イヴェルの使徒だと明かすと急にエルフは怯え始め、土下座をする。もしかして邪神イヴェルって相当評判悪いのか?


「急に態度が変わったな。邪神イヴェルってそんなに評判悪いのか?」

「何を仰る。邪神イヴェルの使徒様といえば代々悪逆非道、傍若無人でその比類なき力で数々の民族種族を迫害し奴隷にしてきた方ばかり! もはや邪神イヴェルの使徒といえば恐怖の対象でありその脅威度は魔王に匹敵すると言われていることをご存知ないのですか?」


 エルフが怯えた様子でイヴェルの使徒について説明する。


 どうやら俺の先代達はクズしかいないようだった。

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