第10話 奴隷紋消去
「で、話ってなんだ?」
俺は銀の猫亭に赴くと早速ドルーズに話を持ちかけることにした。そして通されたのが事務所というわけだ。
もっとも、事務所というよりは取調べ室の方が合ってるな。なにせ机と椅子くらいしかないんだからな。
「ルルナちゃんを俺のモノにしたい。そのためにはあんたの協力が必要だ」
「まだ諦めてなかったのか? いいか、ロリペド族ってのはな」
ドルーズはやれやれとため息をつく。だが俺はドルーズの話を制する。
「知っている。25年だったか。特殊な奴隷紋で生き方を強制されているそうじゃないか」
「知ってるなら話は早い。やめておけ」
予想通りの反応だな。だがこれを聞いても同じ答えでいられるかな?
「彼女の奴隷紋を消せてもか?」
「……できるのか?」
ドルーズは信じられない、といった顔をしている。ま、それもそうか。だが俺には創造技巧というスキルがある。これがあれば作れるはずだ。
「恐らくな。その奴隷紋を解析すれば消せると思う。なんならすぐに実行してもいいが、問題はその後だ」
「確かにな。そのことを使徒様に知られちゃ拙いもんな」
「ああ。だから彼女は逃げたことにしてもらいたい。もちろん金は払う。客と駆け落ちとか珍しくないだろ?」
貴族になるなんてまどろっこしいことをせず駆け落ちすればいいのさ。実に簡単だろ?
「まぁな。無いとは言わん。要は奴隷紋を消したことさえ知られなければ問題にすらならんてことか」
「そういうことだ」
「だが無理だな。ロリペド族を逃がしたとあっちゃ使徒様に目をつけられかねんのさ。契約でロリペド族の残した遺産の半分は使徒様のものになるからな」
ロリペド族は性的嗜好を満たすためじゃなく大事な金蔓ってことか。マジでクソだな。
「利権か。もしかして身請けしても」
「ああ。半分は使徒様のもんだ。まぁ誰が買ったかについては外国の貴族をでっち上げる裏の方法もあるがな。金さえ払えば使徒様もうるさくは言わんさ」
「そんな抜け道があるのかよ」
そんなことができるのか。だったらそれでいいじゃねぇか。
「ああ。ただし、この国を出ていってもらうことになるがな。万一露見したら困るんだよ。だからできれば貴族になって身請けしてもらいたい」
「なるほど。じゃあこうしよう。彼女の奴隷紋を消した後は俺が当分の間彼女を買い占めるんだ。その間に俺は貴族になってやる」
金さえ出せばいいなら難しくない。俺の懐には既に金貨10万枚以上もあるからな。これだけあれば足りるだろ。
「そこまでするのか。いいだろう、ただしルルナの奴隷紋を消すことができたらだ。今からルルナを呼んでくる。待っていてくれ」
ドルーズは立ち上がるとルルナちゃんを呼びに行ってくれた。そして程なくしてルルナちゃんが姿を見せる。
「本当なんですか……? 本当に私の奴隷紋を失くせるんですか?」
彼女はとても不安そうに聞いてきた。まぁ信じられないよな。
「やってみせるさ。とにかく一度奴隷紋をしっかり見せてくれ」
「わかりました」
ルルナちゃんは俺に背を向ける。俺は彼女の衣装をたくし上げ、奴隷紋を露わにした。そして鑑定する。
強制と短命の呪い。
対象の魔力を流用し様々な命令を強制させ、自壊装置を組み込ませた呪い。解除にはリムーブカースより上の解放魔法エマンシペーションが必要。
「なるほど、
「おいおい、その魔法はかなり上位の神聖魔法だぞ」
「そうなのか。創造技巧……」
俺の呟きにドルーズが口を挟む。そんな上位の魔法なのか。ドルーズが魔法についてどの程度の知識があるのか知らんが使い手は少ないってことか。
俺は創造技巧で
俺は選択を決定して
「いくぞ、
俺が魔法を使うと彼女の背中の紋様が背中から浮き出て来る。そしてパリン、と小気味良い音を立てて粉砕した。
「よし、成功だ。ルルナちゃん。もう君を苦しめていた奴隷紋はなくなった。もう一度言わせてくれ。俺は君が好きだ。貴族になって迎えに来るのを待っててくれないか?」
俺は背後から彼女を抱きしめる。そしてもう一度告白をやり直した。彼女は震えている。嗚咽さえ零し、その美しい瞳に涙を蓄えていた。
「ジェノスさん、ありがとうございます。私は幸せ者です。私なんかで良ければ喜んで捧げます。お願いします私を買ってください」
そして絞り出すように俺の気持ちに応えてくれた。
嬉しい。
俺の気持ちは報われた。後は結果を出すだけだな。
「すげぇなにいちゃん。お前いったい何者なんだ?」
「俺はジェノスだ。そして邪神イヴェルの使徒でもある。このことは内密にしてくれよ?」
本当なら秘密にすべきなんだろうが気を良くした俺はつい話してしまった。結論を言うと全く問題なかったが。
「邪神イヴェルの使徒様だと……? もしかしてペドラ様を殺すおつもりで?」
「そうだが良く知ってるな。俺達神の使徒は殺し合うことが義務付けられてる」
「知ってる何も、ペドラ様が仰ってたんですよ。もし神の使徒を名乗る者が現れたら教えなさいと。そいつとは殺し合わなければならないとも」
「有名な話なのか。もしかして奴を殺しても罪に問われない?」
もしそうなら気兼ねなくぶっ殺すんだがな。ロリペド族の仇討ちにもなるし。
「その通りです。それは神々が決めた神聖な試練だそうで、使徒を名乗る者同士であれば神の名の下に決闘が行われることになるのです。そしてお互いに大切な何かをかける必要があります」
「そいつはいいな。だったら堂々とペドラと決闘を申し込み、ルルナちゃんを俺のモノにしてやる」
なんだ、話は簡単じゃないか。だったら堂々とぶっ殺すのみだな。
「あの、それでしたらロリペド族の解放をお願いします。私だけじゃなく、他の同胞も救ってください」
「いいとも。さて、俺は何を賭ければいいかな。大量の金貨でもいいのか?」
ルルナちゃんの訴えを俺は快く引き受けた。俺も同じ気持ちだぜ。奴はロリの風上にも置けんゲス野郎だ。俺?
ルルナちゃんは合法ロリだからいいに決まってんだろ。
「ペドラ様が受ければ大丈夫かと」
「なら決まりだ。ペドラはどこにいる」
「王都の教会に行けば大丈夫です」
ぶっ殺すのが最大の目的だ。お金好きみたいだし拒否はしないだろう。俺は彼女の独占指名一ヶ月分、金貨1000枚を支払う。そしてとりあえず今日は彼女とたっぷり愛し合うことにした。
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