第12話 絡んできた奴にイキれ!

 まいったな。まさか邪神イヴェルの使徒がそんなに評判の悪いモノだったとは知らなかったぞ。まぁ邪神だしな。


 しかしこいつらエルフをどうすべきだろうか。何人か殺っちゃったけど多分生き返らせることは可能なんだよな。せっかくだしリザレクションの実験をしてみるのもいいかもしれない。


 俺はぶっ殺したエルフに近づき魔法を発動させた。


「リザレクション!」


 すると眉間や身体に空いた穴が塞がり始め、死んだはずのエルフが咳き込み始める。凄いなこのリザレクション。本当に復活するのか。さすがに死んでから時間が経ったら駄目だろうが、完全に死んでたのが復活するとか凄すぎだな。


 よし、他の奴らも生き返らせてやるとするか。当然恩に着せてやるけどな。俺は他のぶっ殺したエルフにもリザレクションをかけ、生き返らせていく。その全てのエルフ達は息を吹き返し、ゆっくりと身体を起こし始めた。


「そ、そうだ私は……」

「こ、これは……!」


 生き返ったエルフ達はまだ頭がハッキリしないのか頭を押さえている。それを見て生き残ったエルフは嬉しそうに身体を震わせ涙を流した。


「お前ら聞け。お前等は俺をぶっ殺すつもりで仕掛けたから俺は一度お前らを殺してやった。だが俺は優しいからな。特別に非礼を許し生き返らせてやった。そのことは理解できるな?」

「た、確かに我々は一度殺された……。だがそれは貴様が忠告を無視したからだろう」


 ん?

 まだ自分の立場わかってないのか。まだわからせる必要あるみたいだな。そう思っていたら生き残っていたエルフがまたも土下座し俺に赦しを請う。


「よせ! この方は邪神イヴェルの使徒様だ。使徒様、大変申し訳ございませんでした。ですからどうか同胞の皆殺しだけはお許し下さい!」

「じゃ、邪神イヴェルの使徒だと! どどどど、どうか実験動物にするのだけはお許し下さい!」


 俺が邪神イヴェルの使徒だと知って他のエルフ達も一斉に土下座をした。だから俺の先代達はいったい何やらかしたんだよまったくもう。エルフの奴らめっちゃビビってるじゃねーか。


「そんなことしねーよ! あーもうめんどくせぇ。なら王都までの道を教えろ。それで勘弁してやる」


 俺は一刻も早くペドラの野郎をぶっ殺してルルナちゃん達ロリペド族を救いたいんだよ。こいつらから賠償してもらおうとも思ったが、後世にエルフ達をぶっ殺して脅し、金品を巻き上げたなんていう伝承ができても嫌だしな。


「あ、ありがとうございます! ですが何も無しというわけにはいきません。そうだ、この私の持つエルフの秘薬を差し上げましょう」


 エルフの一人が懐から紅い液体の入った小瓶を取り出し俺に差し出す。一応鑑定してみるか。


 エルフの秘薬

 呪いを除くあらゆるバッドステータスを治癒し、HPとMPを50%回復させる。


 おお、本物か。ありがたく頂戴することにしよう。


「おお、悪いな。遠慮なくいただこう」

「ははっ。それで王都まで行きたいのでございましたよね。それでしたら向こうを真っ直ぐ行けば林道に出ます。そこを左に曲がり、道なりに進んでいただければ案内板が出ております」


 俺はエルフの秘薬を受け取ると、エルフの指差した方向を見る。俺の進もうとした方向は少しずれていたようだ。これは助かったかもしれんな。


「んじゃな。それと、これからは問答無用で即死するような警告の仕方はするんじゃねぇぞ。今度俺にやったら容赦しないからな?」

「そ、それはもう! 肝に銘じておきます」


 ま、今回は忠告だけで勘弁してやる。それよりルルナちゃん達ロリペド族の解放が先だからな。俺はこれを成し遂げ、ルルナちゃんを嫁にする。彼女の身も心も俺のものだ!


 俺は聞いた通りの道を行く。すると林道に出たので左に進んだ。そして森林を出た先には看板が立てられていた。


 →王都シコリーブ

 ←ルベン村


 俺は案内に従い右に進む。道なりに行けば着くはずだ。舗装はされていないが一応道にはなっているから迷うこともないだろう。


 俺はひたすら走るとものの15分程で王都の外壁が見えてきた。魔物のいるこの世界じゃ街に外壁があるのは普通のことらしい。そして王都シコリーブの外壁はそれはもう見事なものだった。


 外壁の上には紋章の刻まれた旗が風になびいている。恐らく国旗とか国の紋章が描かれていることだろう。そして外壁の上を巡回する兵士の姿も確認。まぁそんなのはどこも一緒だがな。


 そして俺は王都の門にたどり着く。人の出入りが盛んなのか街に入るための審査で行列ができていた。俺はその最後尾に並び順番を待つ。


 そして順番が来るとギルド証を見せ、無事王都の中に入ることができた。さて、教会の場所を探さんとな。冒険者ギルドで聞けば一発だろう。


 冒険者ギルドは赤い屋根という特徴があり、これは全国共通らしい。そして大抵街の入り口の近くにあるそうだ。そして隣には必ず解体場が併設されているのも大事な特徴だろう。おかげで探すのは随分楽だったわ。


 俺は冒険者ギルドに入る。中はどこも同じなのか受け付け窓口と食堂のカウンターが設置されていた。そして夕方近くにはなっていたせいか既に飲んでいる冒険者もいるようだ。


 まぁ、こんな時間だし教会は明日にするとして、今日の宿を探さんとな。


 俺が受け付けに向かうと誰かが俺の進む先に脚を投げ出して来た。どうやら喧嘩を売っているらしい。よし、買ってやることにするか。


「うわっ!」


 俺はわざとその脚に引っかかり転んで見せた。こうすればカモに視えるはず。


「おいてめぇ、よくもこの俺の脚を蹴りやがったな? 治療費として金貨10枚もらおうか」


 男はゆっくりと立ち上がると俺を見下ろし、薄気味悪く笑う。ふむ、ハゲ頭で力自慢のパワーファイターってとこか。


「折れたのか?」

「ああ、折れたな。これは教会で直してもらわんといかんなぁ。治療費と慰謝料を寄越せ」


 男はニヤニヤと骨折したと主張しているがそんなわけねーだろ。脚骨折したばかりでそんな真っ直ぐ立てるかよ。


「ほほう、どれどれ。俺が診てやるよ」


 ゴキィッ!


「ギャアアアッ!!」


 俺は触診のフリをしてその脚を握り潰してやった。あーこれ完全に逝ったな。おめでとう、治療費を請求する権利が得られたね。


「いやー、すまんすまん。これは完全に折れてるわ。ほら、こっちの脚も重症みたいだぞ」


 ゴキィッ!


 俺はもう片方の太腿を掴み、握りつぶしてあげた。


「ギャアアアッ、い、いでぇぇよお!」


 男は涙目で痛みを訴えながら尻もちをつく。さー次はどこを骨折しているか確認しないとな。


「あちゃー、こりゃ重症だ。もしかしたら全身の骨が折れてるかもしれんな。よし、俺が両腕の骨も診てやろう。遠慮はいらんぞ?」

「ひ、ひいいいいっっ!!」


 俺がニターッと笑みを浮かべにじり寄ると、男は青ざめた顔で悲鳴をあげる。ちゃーんと治療費払ってやるからな♪

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