第5話 武器を買うぞ!
「すまんがこれを頼む」
おれは早速証書をギルドの受け付け嬢に渡した。勿論先程の受け付け嬢とは違う受け付け嬢だ。あっちの方が空いていたがわざわざこっちに並んでやった。
「はい、お預かりします。えーっと、金貨1000枚先払い!? いったい何を狩って来たんですか……」
受け付け嬢は証書を確認するとブルブルと震えていた。どうやら動揺しているようだな。
「ベヒーモスとか色々な。まだ在庫はあるから残りはまた今度な」
「べ、ベヒーモスですか……。ジェノス様は何者なんですか?」
「俺は俺だ。何者もない」
一応邪神イヴェルの使徒だがそれは言わない方がいいだろう。使徒同士で殺し合いをするなら自分が使徒であることをアピールするのは悪手だ。先手を取られるデメリットが大きすぎるからな。
「そ、そうですか……。とにかく金貨1000枚ですね。少しお待ち下さい」
「すまんが金貨以外の貨幣を金貨1枚分ずつ入れてくれ」
こうすれば貨幣価値の割合がわかる。数字でも書いてあればいいが、この世界の数字ってどんなんだ?
「わかりました。すぐにご用意します」
受け付け嬢は奥の扉を開け中へ入っていった。カウンター内にそこまでの大金は置いてないのだろう。
しばらくして受け付け嬢が戻って来た。トレーに上には大量の金貨とその他貨幣が乗っている。結構重たいらしく、置くときも手が震えていた。
「お待たせしました。金貨1000枚になります」
「おう、すまんな。んじゃ収納」
俺は数えもせずお金をアイテムボックスに収納する。そしてアイテムボックスを開くと金貨996枚と銀貨100枚、白金貨2枚、銅貨1000枚が追加されていた。うーん、俺以外には見えないらしいが、こうして一覧が出るのって不思議な感覚だな。
それにしても白金貨って金貨より安いんだな。確かに実際の市場価値だとプラチナより金の方が高い。だが希少価値や加工のしづらさはプラチナの方が上なんだよな。融点確か1500度越えてなかったかあれ。
俺は好奇心から白金貨を1枚取り出して鑑定してみた。
白金貨
金40% 銀50% 錫10%
うん、プラチナじゃなかった。なんか納得したわ。どうやら真ん中が金でその周りが銀と錫の合金てとこか?
これ白金貨って言わないと思うんだがどうでもいいか。
「どうかなさいました?」
「あ、いや白金貨ってどんなんかなーとちょっと気になってな。プラチナかと思ったら違うのか」
「プラチナ……ですか。それは星金貨のことですね。なんでも星金貨を作るにはかなり高位の魔法を幾つも使わないと作れなかったそうで、現在の魔道具では作れないそうです。ですので量産が効かないため数も少なく希少価値が高いんですよ。星金貨1枚で金貨100枚分の価値とされています」
なるほど、一応作れるのか。それにしても金の100倍の価値ねぇ。あまり流通してなさそうだな。
「そうか、勉強になった。色々すまんかったな、んじゃ」
「はい、それではまたお越し下さい」
俺は手を振り、颯爽とギルドを出た。受け付け嬢との話しを聞いていたのか、周りの視線が凄かったな。こういうときって誰かが絡んで来るもんだが、平和だったようだ。それはそれでつまらんな。
俺はとりあえず番兵のいた詰め所に立ち寄り仮通行証を返却しに行った。その後の目的地は宿屋と武器屋だな。ギルドでお勧めを聞いておけば良かったぜ。
ま、とりあえず武器屋だな。俺に合う装備があればいいんだが。とりあえず良さそうなのを買って神器創造で魔法を付与したいが、肝心の魔法が二つしかないんだよな。この世界の魔法ってどうやって覚えるんだ?
俺はとりあえずギルド近くの剣と盾の絵が書かれた看板のお店に入った。
「らっしゃい」
俺を出迎えたのはいかにも武器屋を営んでるって顔のハゲに髭面のおっさんだった。もちろんカウンターの奥で腕を組み白い歯を剥き出しにしているぞ。
店内を見渡すと武器は全てカウンターの奥にあるようだ。防犯対策だな。
「すまんが剣と防具が欲しい。なんか見繕ってくれ」
「剣か。冒険者ならギルド証を見せてくれるか?」
「いいぞ。今日登録したばっかりだからまだランクは低いがな」
ギルド証の提示を求められ、俺は素直に見せた。するとおっさんは驚きつつもいい笑顔をする。
「確かに登録日は今日だな。それで第6位とはやるじゃねーか。ちょっとこの剣で素振りをしてみてくれるか?」
おっさんはそう言って俺に一振りの剣を渡す。結構重量があるな。ま、俺なら余裕だが。
「いいぞ。じゃあ軽くやってやるよ」
俺はそう言って上段に構え、剣を振り下ろす。空気の裂く音がした。
「これは凄いな。ちょっと見えなかったぞ」
「そうか? まぁそれなりに自信はあるがな」
俺はフッ、と鼻で笑ってみせた。
「予算はどれくらいだ?」
「金貨100枚でどうだ?」
オレに見合う剣となるとこのくらいはするだろう。貨幣価値未だによくわからんけどな!
「おいおい、そんな高価な武器は置いてないぞ。一晩高いのでも金貨50枚の魔法剣だな。ミスリル製の一級品だがお前さんなら使いこなせるだろう。今持ってきてやる」
おっさんはそう言って奥に行くと、一振りの剣を持ってきた。鞘からして装飾がされててカッコいいな。
「これだ。この街最高の鍛冶師ウッテン=ヤンヨーの作品でな。これよりいい武器となるとそいつにオーダーメイドするしかないな」
俺は剣を受け取ると抜いてその刃を確認した。正直見てもわからん。だが俺には鑑定がある。
ミスリルソード
種別 魔法剣 剣ランク ベリーレア
付与魔法 アンチラスト
アンチラストがかかっており欠けにくく頑強。ミスリル素材のため魔力を通して使うこともできる。
なるほど、剣ランクの段階はわからんが良い剣なのは間違いないだろう。しかしミスリルって魔力を通せるのか。なら魔法剣以外に予備があってもいいのかもしれんな。
「よし、これを貰おう。それと予備としてミスリルの剣はまだあるか?」
「あるぞ。もう一つウッテン=ヤンヨーの打った剣がある。それを金貨10枚で譲ろう」
「凄い落差だな」
「魔法剣じゃないからな。魔法の付与っていうのはかなり特殊な高等技術なんだよ」
「そうなのか。とにかくそれも見せてくれるか?」
「おう、待っててくれ。すぐに持って来る」
おっさんはまたも奥へ行き、一振りのの剣を持ってきた。そっちは1ランク下がったレアだったが予備なら別にいいだろう。俺はそれも購入した。防具は軽めの革鎧な。こっちは銀貨10枚だ。
俺はいい買い物ができたとホクホク顔で店を出たのだった。
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