第3話 冒険者登録でイキれ!

 いやー、なんとか森を抜けたら街道を見つけられたわ。とにかく街道に沿って行けば街に着くだろ。問題は金が全くないってとこかな。魔物は結構狩ったから買い取ってもらいたい。冒険者ギルドみたいな組織があるといいんだけどな。


 いやー、しかしこの身体は凄い。結構走りっぱなしなのに全く疲れてないぞ。魔物の動きも余裕で目で追えたし相当なハイスペックだぜ。


 そしてさらに走り続けること30分。ようやく街の外壁のようなものが見えてきたわ。俺はペースを上げ、街へと近づいていく。街の入口は門になっており、門番がチェックしているようだ。見ると硬貨を払っているやつもいる。ということは入るのに金がいるのか?


 うーん、身分証も金もないんだがどうやって入ったものか。などと思案しているとすぐに俺の順番が来た。番兵は早速俺に身分証の提示を求める。


「身分証を提示してもらおう」

「持ってません」

「なら通行税として銀貨一枚だな」

「お金持ってません」


 持ってないもんはしょうがねぇだろ。俺は堂々と持ってないと答える。しっかり腕を組んで偉そうにするのがコツだ。


「身分証も金もないか。ならこの街に来た目的を言え」

「冒険者になるために来た。この街に冒険者ギルドはあるか?」


 もしなかったら冒険者ギルドという言葉自体が通じない可能性まであるな。そうなったらそうなったか。


「冒険者志望か。見たところ武器も防具もつけてないな。まぁ、いい。なら仮通行書を発行してやるから手続きをする。こっちに来い」

「わかった」


 俺は番兵の指示に従い門のすぐ側の詰め所へ案内された。その一室はテーブルと椅子しかない殺風景な部屋だった。番兵の案内に従い椅子に座るとその向かいに番兵が座る。


「じゃあ先ずは名前からだ」

「ジェノスだ」

「どこから来た」

「ずっと向こうの森の方からだ」


 俺は来た方向を指差す。だいたいだが方角はあってるだろ。


「ディルハイムの森の方か。あんなとこにも集落があるのか?」

「ないぞ。だが森の方から来た。結構奥の方だったな」

「あの森の奥は魔境なんだが……。まぁいい、とにかく仮通行証は発行してやるが、3日以内に冒険者登録をしろ。登録したらここに仮通行証を返却に来てもらうからな。4日経って持ってこなかったら捕まえて罰金銀貨10枚だからな?」


 持ってこなかったら罰金か。結構ザルな気もするが。こんなの偽名使われたら終わりだと思うんだがな。


「わかった。登録したらすぐ持ってこよう」

「よし、なら後はここに拇印をおしてもらおう。これで手続きは完了だ」


 番兵は調書を俺に向けると拇印を求めた。朱肉もちゃんとあるらしい。俺は朱肉に指を付け、拇印を押す。これで手続きは完了だな。


「はい、お疲れ。これが仮通行証だ。失くすなよ?」

「わかった。色々すまんな」


 番兵の発行した通行証はB6くらいの小さな紙切れだった。とりあえずズボンのポケットでいいか。ポケットのあるズボンで良かったわ。


「ところで冒険者ギルドはどこにあるんだ?」

「ここを出て真っ直ぐ街の真ん中へ向かえ。赤い屋根の大きな建物がそうだ。隣が解体場になっているからすぐにわかるだろ」

「わかった。助かる」


 俺は番兵に礼を言うと詰め所を出る。そして冒険者ギルドへ向かった。結構近かったようで、詰め所を出るとすぐに赤い屋根の建物が目に入る。これなら迷わず行けそうだな。





 建物の中に入ると結構食事をしている連中がいた。一瞬定食屋なのかと思ったがよく見ると奥では冒険者らしき連中が掲示板を眺めている。カウンターも二種類あり左側は受け付け窓口、右側は飲食関連のカウンターになっているようだ。


 色々文字が書かれているが勿論日本語じゃあない。しかしなぜか普通に読めるようだ。とりあえず俺は受け付けに並ぶことにした。俺の前は一人だけだから順番はすぐだ。


「すまん、冒険者登録したいんだが」

「リンドンの冒険者ギルドへようこそ。登録ですね、読み書きはできますか?」

「ああ、大丈夫だと思う」


 やはり冒険者ギルドの受け付けといえば美女だよな。野朗の受け付けなんかじゃテンション上がらん。


「ではこの用紙に記入をお願いします」


 俺は用紙を受け取ると各項目を埋めていく。習ってもいないのにこの世界の文字がわかってしまうのは凄いな。まさにチートだ。


 埋めていく項目は名前と出身、得意なことか。得意なことは戦闘でいいな。実際ベヒーモスとか余裕だったし。


「書いたぞ」

「はい。では少々お待ち下さい」


 受け付け嬢は用紙を受け取ると、引き出しから白いカードを取り出す。そしてその真っ白なカードを俺に向けた。


「では登録しますのでこのギルド証に指を当ててください」

「こうか?」


 とりあえずど真ん中でいいか。その真っ白なカードに指を当てる。すると受け付け嬢は何かの魔法の詠唱を始めた。


「エントリー」


 エントリー?

 登録は魔法で行うのか。受け付け嬢のその一言で真っ白なカードに俺の名前が刻まれていく。他にも第10位冒険者という文字が読み取れるな。


「はい、これで登録は終わりました。次に冒険者ランクの説明をします。ジェノスさんは第10位冒険者ですので討伐依頼を受けることはできません。受けられるのは雑用と採取です。第9位に上がるためには規定回数の雑用や採取を受ける必要があります」

「面倒だな。一気に上げる方法はないのか?」


 雑用とかくそつまらん。金を稼ぐなら手っ取り早いのがいいんだが。


「戦闘試験に合格すれば第8位に上がることは可能です。実力次第では第6位まで上がることもできますよ。そういう方はだいたい何らかの実績を持っていたりしますが」


 戦闘試験があるのか。楽勝だろ。ならそれを受けて第6位で我慢してやるか。


「じゃあ第6位まで上げてくれ」

「戦闘試験は有料です。銀貨1枚になりますが」

「金ねぇな。そうだ、狩った魔物の買い取りはランク関係なくしてくれるのか?」


 買い取りしてくれるなら別にランクにこだわる必要ないよな。


「ええまぁ。ですが見たところ武器もないようですし、先ずは雑用からしていくことをお勧めします」


 ん?

 ああ、そういや素手だし簡素な布の服しか着てないもんな。薄ら汚れているから少々みっともないか。とても強そうには見えんかもしれんな。


「おい、にぃちゃん」

「なんか用か?」


 こっちは取込み中なんだが。これはもしかしてあれか?

 新人冒険者に現実教えてやんよとか言って絡んでくるあて馬というやつか。


「いきなり第6位にしろとか言って困らせんてんじゃねーよ。大人しく雑用でもしてろクソガキが。こういうのは着実に段階を踏まないと死ぬぞ」


 本当に絡んでくるか。だが鑑定するまでもなく雑魚だろ。それにしてもデカいし迫力あるな。前世の俺だったらチビってたかもしれん。


「うっせーよ。少なくともてめーよりは強いぞ」

「ほう? 言うじゃねーか。そんなに言うなら特別に戦闘試験を無料で受けさせてやる。テメーの実力見せてみな」


 こいつ教官かなんかか?

 口ぶりからするとこいつを相手に実力を見せればいいのか。


「なんだ、親切なおっさんだったか。それは助かる。手加減してやるから安心してくれ」

「ほほう、そんなに言うなら手加減はいらねぇようだな……」


 俺が親切で手加減をしてやる、と言ってるのにおっさんは青筋立ててむっちゃ怒ってやがる。煽り耐性のないやつだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る