第2話「ただの思い出作り」

大学生のN君は可愛い人だった。

そしてチャラかった。


いつも通りご飯に行って、ここは働いている私が出さねばとお会計しようとすると


「今俺が出さないと次会ってくれない気がする」


と困ったような顔で言われ、

心がキューっと締め付けられる様だった。


その後バーで朝まで飲んで、

帰りに次遊ぶ日を決めて帰った。


明るい彼は夜中に入れる足湯に連れて行ってくれたり、私が仕事終わりにご飯を作ってくれた。会う前はドキドキとワクワクでいっぱいに、一緒にいると明るい気持ちになれた。


夜中に海で子供みたいに走り回った事も草の上で寝転がった事も最高に楽しい時間だった。

 


一回だけ彼と泊まった事があったけど、

長時間ゲームで戦いあった後

キスだけして、

その後は疲れ切って寝てしまった。


彼は他にも女の子がいるようで、

よく携帯でメッセージを返していた。


友達?と聞いても

そんな感じとしか教えてくれなかった。


彼は出会ってすぐに就職で県外に行くことが決まっていた。


楽しい時間だけを共有して、

別れの時なんて考えたくもなかった。


ある夜

行きつけのバーからの帰りで

私はぽろっと口にしてしまったのだ


私たち付き合ってみる?


彼が県外に行ってしまってからでは遅いと考えてしまった。


意外にも彼は悩んでくれて、

結局付き合おうという事になってしまった。


それで舞い上がってしまった自分もいたのだが、

すぐに県外に行くのに付き合うのは難しいのではないかという話になり、納得してしまった私はそのまま彼と別れることになった。


胸が苦しいくらいには辛かったけど、

泣きじゃくるようなことはなかった。


私は彼に期待してなかったんだなと思い

すぐに別れを受け入れることができた。


彼といた時間はとても楽しい時間だったから、

その楽しくて大切な思い出のまましまっておくことにした。


彼からすると私との出来事は、すぐに忘れてしまうような思い出だと思う。

住んでいた所から離れてしまうことが寂しくて、思い出作りをしようとしていたに違いない。

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