瞬間恋愛

日菜森

第1話「恋愛というより友情」

憧れの人ってどんな人だった?


私は、純粋で、可愛い笑顔で笑って、みんなの視線を引き寄せるような存在に憧れていた。


高校3年の夏に、応援団をする彼に恋をしてしまったのは、普段より彼が特別に見えたからだ。


普段は爽やかに笑う彼の情熱的な一面に心を揺さぶられ、惹かれたのだ。


昔の恋を思い出すと、むず痒く

どうしようも無い気持ちになる。


昔に戻れたとしても、出来ることはきっとたいして変わらない。


甘酸っぱい高校生活を卒業して、

その後短い学生生活を終えるともう社会人だ。


恋に苦手意識を持っていても、恋に焦がれることをやめられない私はマッチングアプリに頼りきりの恋愛をしている。


話してみて、気が合えば電話をして、タイミングが合えば食事に行った。


これが普通の恋愛なのか、普通の恋愛とは何なのか?よく分からないながらに出会いと別れを繰り返している。


社会人一年目で、知らぬ土地に転勤した私は、はじめての一人暮らし。


親も親しみなれた友達も遠い場所、すぐに会えない寂しさは恋愛に救いを求める十分なきっかけになった。


誰か一緒にいてくれる人が欲しいと思っていた。

皆、どんな恋愛をしてるんだろう。


私は、何人と会っても、恋愛と呼べる恋愛はしてないのかもしれないけど、いい出会いだったなと思う相手はいた。



その人は、社会人で歳は1つ上だった。

初めてのデートは仕事終わりに落ち合って、ご飯を食べに行くというものだった。


どこがいいか聞かれたので、私がいつも行く居酒屋に連れて行くことにした。


味の好みが似ているようで、お酒を飲みながらとても楽しい時間を過ごした。


テーブルに向かい合うより、カウンターで隣に並ぶ方が喋りやすいのは私だけだろうか。

まじまじと見ないですむし、居酒屋でも声を張らなくて良いのがポイントだ。


それからというもの、良く仕事終わりに会っては飲み交わす仲になった。

彼はクラフトビールが好きなようで、良く美味しいお酒をプレゼントしてくれた。

私もそれに合わせて会う前におつまみを買うようになった。そのあと一緒に味わうのが恒例だった。何本か苦手な味だったのはここだけの話。


お互いどう思ってるのか話し合った時は、

気は合うけどドキドキはしないよね。という話で落ち着いた。


付き合えたらいいなと思い、手を繋いでみたりもしたが、お互い笑いが止まらなくなって繋ぐのをやめた。

2人で色んなところに行ったが、

結局付き合わないでお互い別の人を探そうということであの人とは会わなくなった。

私には男性の友達という存在がいたことがないのだが、あぁいう存在の相手をそう呼ぶんだろうなと会わなくなってから思った。


いい人だったなと思いつつ、擬似彼氏のような彼と別れを告げ、恋愛なるものを探すためにまたアプリを開いた。

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