第14話 新たなる夜明け

別班の闇を暴き、玲奈が命を懸けて守ろうとした正義が光を取り戻したかに見えた。久保田達也と「光の剣」は、国家再建への第一歩を踏み出し、政府内部の腐敗を一掃し、正義を取り戻すために新たな戦いを開始した。しかし、彼らが直面する現実は、予想以上に困難で過酷なものであった。


東京の夜は、かつてないほどの静寂に包まれていた。久保田は新たな拠点である「光の剣」の本部に立ち、仲間たちと共に次なる行動を計画していた。彼らの目の前には、政府機関から提供された膨大な量の資料が広がっており、それらには政府内部に根深く残る腐敗と影の存在が浮き彫りにされていた。


「政府内部にはまだ、別班の残党が潜んでいる可能性が高い。」


久保田は資料に目を通しながら、そう呟いた。玲奈が暴露した情報は、確かに国家の闇を暴いたが、それはまだ氷山の一角に過ぎなかった。別班の存在が明らかになった今、その残党たちは新たな指導者の下で再び結束し、反撃の機会を伺っていたのだ。


「彼らが再び動き出す前に、我々が先手を打つ必要がある。」


佐藤美月が静かに口を開いた。その瞳には強い決意が宿っていた。玲奈が命を賭けて守ろうとした未来を、彼女もまた守り抜く覚悟をしていた。


「しかし、彼らが何を企んでいるのかを掴むのは容易ではない。」


久保田は深いため息をつきながら、資料を閉じた。別班の残党たちは、政府内部の腐敗した官僚や政財界の一部と手を組み、再び国家を操る計画を進めている可能性が高かった。彼らの動きはかつてないほど慎重であり、影から影へと姿を消しながら、その勢力を拡大していた。


その時、久保田の携帯が鳴った。画面には見慣れない番号が表示されていたが、彼はすぐに通話ボタンを押した。電話の向こうから聞こえてきた声は、驚くべきものであった。


「久保田達也さん、あなたに話がある。国家の未来に関わる重要な話だ。」


その声は、政府の高官である藤田誠一郎だった。彼はかつて別班と密接に関わっていたが、今は政府内部で強い影響力を持つ人物だった。久保田は一瞬戸惑ったが、すぐに冷静さを取り戻した。


「どういうことですか?」


久保田の問いに、藤田は冷静に答えた。


「別班の残党が再び動き出している。彼らの新たな計画は、国家の根幹を揺るがすものだ。私には彼らの一部始終を暴露する準備がある。だが、私は一人では何もできない。あなたの協力が必要だ。」


その言葉に、久保田は思わず息を呑んだ。藤田はかつて別班の一員として暗躍していたが、その後別班を離れ、政府内部で独自の地位を築いていた。彼が本気で別班の残党と戦おうとしているのか、それとも何か別の目的があるのか——久保田にはすぐに判断がつかなかった。


「どうして私に協力を求めるんですか? あなたはかつて別班にいたはずだ。」


久保田は疑念を隠さずに問いただした。藤田は一瞬だけ沈黙し、やがて静かに答えた。


「私は過去に間違った道を歩んでいた。しかし、今の私は違う。玲奈さんが命を賭けて守ろうとしたものを、私も守りたいと思っている。それが彼女への唯一の償いだ。」


その言葉に、久保田は玲奈の姿を思い浮かべた。彼女が命を賭して戦った正義と、そのために払った犠牲——それを藤田が理解しているのであれば、彼を信じる価値があるかもしれない。だが、彼が本当に信頼できる人物かどうかは、慎重に見極める必要があった。


「分かりました。お話を伺いましょう。」


久保田はその場で即答した。藤田が示す情報が真実であるならば、それは別班の残党を壊滅させるための決定的な手がかりとなるかもしれない。


その夜、久保田と美月は藤田の指定した場所へ向かった。都心の高層ビルにある秘密の会議室で、彼らは藤田と対面した。彼は冷静な表情を崩さず、久保田たちを迎え入れた。


「藤田さん、私たちにどんな情報があるのですか?」


久保田は直球で問いかけた。藤田は一瞬だけ彼の目を見つめた後、テーブルの上に一枚の書類を置いた。


「これは、別班の残党が進めている新たな計画の概要です。彼らは国内外の複数の勢力と手を組み、再び国家を影で操ろうとしています。彼らの最終目標は、この国の政治と経済を完全に掌握することです。」


久保田はその書類を手に取り、慎重に目を通した。そこには、別班の残党たちが接触している各国の情報機関や、国内の政治家、財界人との密接な関係が記されていた。彼らの計画は、玲奈が暴露した「影のプロジェクト」を遥かに超える規模で進行していた。


「この情報が事実なら、私たちはこれまで以上の危機に直面している。」


美月が冷静に分析し、藤田に問いかけた。


「どうしてこれを私たちに提供するのですか? あなた自身がその計画に関与していないと証明できるのですか?」


藤田はその問いに対して、深く息をつき、静かに答えた。


「私はかつて、別班の中で影の一員として生きていた。しかし、玲奈さんの行動を目の当たりにして、私は自分が何をしてきたのかを見直すきっかけを得た。彼女が命を賭して守ろうとした未来を、私も守りたい。これが、私にできる唯一の償いだ。」


その言葉に、久保田は心の中で葛藤した。藤田の言葉が本当であれば、彼は強力な味方となり得る。しかし、彼が再び裏切る可能性も捨てきれない。だが、今は彼を信じるしかなかった。別班の残党を完全に壊滅させるためには、彼の情報が必要だったのだ。


「分かりました、藤田さん。あなたを信じます。我々と共に、別班の残党を壊滅させましょう。」


久保田の言葉に、藤田は静かに頷いた。その瞳には、過去を償おうとする決意が宿っていた。


「光の未来は、私たちが守る。」


久保田のその言葉が、会議室に響いた。彼らは新たなる戦いに向けて、再び立ち上がることを決意した。影との戦いはまだ終わっていない。彼らは玲奈が命を懸けて残した光を守るため、再び戦いに身を投じるのだった。

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