第13話 光の未来

夜が明け、東京の空には曙光が広がり始めていた。国会議事堂の前には、戦いを終えた「光の剣」のメンバーたちが立ち尽くしていた。玲奈が命を懸けて守ろうとした真実は、ついに暴かれ、影の存在は消え去ったかに見えた。しかし、彼らの表情には喜びよりも、むしろ深い疲労と虚無感が漂っていた。


久保田達也は、仲間たちの視線を背中に感じながら、一人静かに国会議事堂の階段を登っていった。彼の足音が、静寂に包まれた空間に響き渡る。その音が、これまでの激闘の余韻を思い起こさせた。


久保田の心には、玲奈の顔が浮かんでいた。彼女の犠牲がなければ、この結果は得られなかっただろう。彼女の勇気と決意が、別班の闇を暴く鍵となり、その結果として国家の未来が再び光を取り戻したのだ。しかし、その光がどれほどの犠牲の上に成り立っているのかを考えると、久保田の胸は締め付けられるような痛みに襲われた。


「玲奈……」


久保田は小さく呟き、手の中に握りしめていた玲奈の遺影を見つめた。彼女の微笑みは今も彼の心を支え、進むべき道を示してくれている。だが、その微笑みがもう二度と彼に向けられることはないのだという事実が、彼の心に重くのしかかっていた。


その時、久保田の後ろから静かな足音が聞こえた。振り返ると、そこには「光の剣」のメンバーである佐藤美月が立っていた。彼女は同じく玲奈を深く信頼し、共に戦った仲間だった。その瞳には、同じような悲しみと決意が込められていた。


「久保田さん……これから、どうするつもりですか?」


美月の問いかけに、久保田は一瞬だけ考え込んだ。彼がこれから果たすべき使命はまだ残されていた。影が消え去ったとはいえ、国家の再建には多くの課題が山積していた。玲奈が求めた「正義」を本当に実現するためには、さらに多くの障壁を乗り越えなければならないだろう。


「玲奈が残した光を守るために、俺たちはこれからも戦い続ける。それが、俺たちの使命だ。」


久保田の声には、これまで以上の強い決意が込められていた。彼はこれからも、玲奈の意志を継いで戦い続ける覚悟を決めていた。美月もまた、その言葉に力強く頷いた。


「私たちも、共に戦います。玲奈さんが信じた未来を守るために。」


美月のその言葉に、久保田は微笑んだ。彼らは決して一人ではない。仲間たちと共に、国家を正しい道へ導くための戦いが、今再び始まろうとしていた。


久保田と美月は、国会議事堂の階段を共に降りながら、これからの戦いについて話し合った。彼らの目指すべき未来はまだ遠く、その道のりは決して平坦なものではないだろう。だが、彼らには玲奈が残してくれた希望の光があった。その光を胸に抱きながら、彼らは再び立ち上がる決意を固めていた。


その日、久保田たちは「光の剣」の新たな拠点を設立するための準備を開始した。彼らの目標は、政府内部の腐敗を一掃し、真の正義を実現することにあった。玲奈が命を賭けて守ろうとした正義と平和を、この国に再びもたらすために、彼らは全力を尽くす覚悟だった。


久保田は新たな拠点の設立に向けて動き出したが、その裏では、かつての別班の残党が再び力を集めようとしているとの報告が入っていた。影は一度消えたかに見えたが、その根はまだ完全には断ち切れていなかったのだ。


「まだ終わっていない……」


久保田はそう呟き、再び拳を握り締めた。彼らが真に光を取り戻すためには、影を完全に払拭する必要があった。これからも、彼らの戦いは続く。玲奈の犠牲を無駄にしないためにも、彼らは全ての影を消し去る決意を固めた。


その夜、久保田は一人で国会議事堂を見上げた。闇に包まれたその建物の上に、再び朝陽が差し込む日は来るのだろうか。彼はそう考えながら、玲奈の遺影を静かに胸に抱いた。


「光の未来は、俺たちが守る。」


久保田のその誓いは、彼の心の中で深く刻まれた。彼らの戦いはまだ終わらない。新たな希望と共に、彼らは次なる戦いに挑む準備を整えたのだった。

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