episode2.これからの計画

「さて……」

 夜の大通りを、二人は歩いていた。

「十七のしゃがれたブルースを聞きながら~♪」

 そのあまりのうまさに、「……お前はいつまでたってもこだわるよなぁ」芳賀は思わず笑ってしまう。もう高校生なのだが、冷たい夜の風に吹かれていると、バイクを盗む気持ちも、缶コーヒーのあったかさもわかるのだ、と。この「十七歳の地図」に関しては、ブルースを、ほぼブースと発音しているのがパンチがきいていいらしい。

 なんか高速道路の曲がるところを赤いポルシェで曲がるのがいいらしい。それも、かなりの熟練者でないとできないような左に何回転もするやつ。


「それって、埼玉のやつか?」芳賀がいった。

「え? 埼玉っていってもいっぱいあるじゃん」

「そうだな――大宮のあたり。新倉から夏の朝で四十分くらいかかるところ」

「あー、あっこね」陽保も昔通ったことがある。あれはジェットコースターの一番高いところ並みに怖かった。一歩間違えれば即転落である。

「死ぬかと思ったなぁ」

 陽保はしみじみと思いだしたのだった。


      *


 計画を作らないとな、といったのは陽保だった。

「たしかになぁ」芳賀も同意する。

「じゃあ、さ」陽保がいった。「ヒャッキンでペンとノート、買ってこよっか?」

「いらねえよ、そんな規則じみたもん」ふいに口調が熱くなった。

 議論の末、カレンダーの裏側を、と決まった。けれど陽保はこっそり、罫線入りのノートも買った。

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あつい缶ココア 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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