あつい缶ココア

沼津平成

episode1.尾崎豊と独創

 ふいに背中の後ろにまわした開いた手があたたかくなった。

「……って、何すんだよ」

 月のでていない練馬の夜。藤並陽保ふじなみはるやすは、芳賀雅哉はがまさやといた。

「俺の分も買ってるから、待っとけ」

 ピッ、と音がした。ついで、雅哉の小銭を入れるチャリンという音。

「ほら、ココア」

「コーヒーじゃないんだ」

「尾崎豊じゃあるまいし」

「だよねぇ……」

 乾いた笑いが苦い。

 しばらく歩いていると大通りに出た。それが合図になったように、いびきが聞こえてきた。

「路上生活者のひとりだろう。気にすんな」

 雅哉が陽保の背中をさすった。少し眠気を誘う。

「今日は、昼からいるもんな」

「そうだな——」

 あはは、と二人は笑いながら歩き続けた。昼に、何が起きたのか。


     


 沼津には、克也かつやという少年がいる。彼は家の屋根から屋根へ猫のように飛んだ。それがまるでアクションゲームのようで、


......……... …… ….....


というふうである。


 

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