第10話 リゾート4日目 修正版

※この小説は「フロリダへ行こう」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。


トラベル小説


 今日は日曜日、と言っても、ここはいつも日曜日みたいなものだ。またもや早朝ドライヴにでかける。今日は方向を変えて東の海を見にいくことにした。ここもまっすぐの道で面白さはない。海が見えるところまで行くと、波が大きい。サーファーが喜ぶような波だ。海を見るのはそこそこにして、帰路についた。すると、後ろにパトカーが張り付いている。制限速度は守っている。何か怪しい素振りを見せただろうか、頭の中でいろいろ考えてみる。すると上のパトライトが点灯し、サイレンが鳴り始めた。(つかまるのか?)と思ったら、サーッと追い抜いていった。別の事件が発生したのだろう。そう思った途端、力が抜けた。外国でパトカーには会いたくない。

 朝食の7時半に遅れた。部屋に入ると3人はプンプンである。祐実が

「パパ、ダメでちゅ」

 と言う。祐実に怒られるのが一番つらい。

「ごめん、ごめん」

 とひたすら謝る。妻からは

「明日の早朝ドライヴはなしね」

 とクギをさされた。


 朝食は、パエリアとグラタンだった。朝から豪勢な料理でびっくりした。日曜なので、遅い朝食をとる人が多いからかもしれない。

 9時にキッズクラブに行くと、いつもの半数しかいなかった。そこでプール遊びで私も呼ばれ、いっしょにゲームをすることになった。ウォーターバレーボールである。取って投げてもいいというルールなので、両手でキャッチして相手コートに投げつけることも可能だ。ネットにぶつかったり、コートからオーバーすると相手チームの得点になる。試合は白熱して、15対13で圭祐チームが勝った。祐実と私のチームは負けてしまった。圭祐は鼻高々だ。その後は、ダイビングの練習となった。だいぶサマになってきている。


 昼食をとって、またもや軽い昼寝をする。だが、私は朝のパトカー騒ぎとプールではしゃいだので、昼寝だけではすまず、子どもたちを部屋で見送った。しかし、30分もしないうちに妻が駆け込んできた。

「パパ、来てみて、圭祐が空中ブランコやるって!」

「空中ブランコ! トランポリンじゃなかったのか?」

「祐実はトランポリンだけど、スペシャルで空中ブランコがあるの。それに圭祐がチャレンジするって言うのよ」

「それは見にいかないと・・」

 と、そそくさとホテルの裏にあるトランポリン広場に向かった。

 すると、圭祐が10mほどの高さのポールの上にいる。スタッフが脇に立ち、空中ブランコをセッティングしている。まずは座るタイプのものだ。体の周りには、安全のためのベルトが巻かれて、命綱が結ばれている。万が一のために地上スタッフがそれを握っている。

 いよいよスタート。妻は手を合わせて祈っている。何度かぶらぶらして、元のポジションにもどる。圭祐は親指をたててOKサインをだしている。今度はぶら下がりのタイプだ。しっかり握って飛び出す。3回ほど行ったりきたりをして、スタッフがロープを引っ張り、中央で停める。そしてスタッフが

「 Take off ! 」(手を離せ!)

 と叫んでいる。でも、圭祐は手を離さない。そこで、私が

「スタッフを信じて、手を離せ!」

 と、怒鳴ると圭祐は意を決したのか、手を離した。そこで下にいるスタッフがグッと力を入れて命綱をささえ、圭祐はゆっくりと安全ネットに降りてきた。3mほどの高さから降りてきたのだ。ネットから降りてきた圭祐は満足した顔だった。

「ぼく、勇気をだしたよ」

「そうね、えらいね」

 と、妻は涙ぐんで抱きついていた。私が

「どうして、空中ブランコをする気になったんだ?」

 と聞くと

「シルク・ドゥ・ソレイユのステージを見て、ぼくもやってみたかったんだ。初めはこわかったけれど、やってみたら気持ちよかったよ。手を離す時もシルク・ドゥ・ソレイユの団員の気分だった」

「そうか、あのショーが圭祐を変えたのか」

 と私の圭祐の味方は大きく変わった。その後は、トランポリン遊びだった。それはそれで楽しそうだった。でも、空中ブランコ体験なんて、アメリカならではだ。日本では考えられない。

 夕食は、日曜だけに豪勢だった。日本料理はお刺身オンパレード。K国料理は宮廷料理が並び、C国料理は角煮料理。それだけでお腹いっぱいになったが、ヨーロッパのムール貝のグラタンもおいしかった。ガーリック味の残り汁にパンをつけると絶品だった。フロリダでヨーロッパの味が食べられるとは思っていなかった。

 夜はいつものように、プールサイドでカクテルタイム。その後、部屋にもどったが、圭祐はママといっしょに寝たいと言い出し、祐実といっしょのベッドに入ってしまった。昼間はお兄ちゃんらしさ全開だったが、夜は子どもにかえってしまっていた。無理もない。まだ就学前の幼稚園児なのだ。

 寝る段になって、子ども二人にベッドを取られた妻は私のベッドに入ってきた。何年ぶりかのベッドインである。でも、

「子づくりはなしよ。どうせ、また海外勤務になるんでしょ。海外で子どもを育てるのは大変なのよ」

「じゃあ、キスだけ・・」

 と言うと

「いいわよ」

 と返事がきて、目を閉じてくれた。それであいさつ程度のチューをして、妻はその後、私の左腕を枕にして寝てしまった。妻の体温を感じながら寝るのは久しぶりだった。うれしいような寂しいような複雑な気持ちになった。

 これにてリゾート4日目終了。

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